リベラル・アーツ

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自由七科と哲学

リベラル・アーツ: liberal arts)とは、

本項では上の両者について述べる。

 

目次

1概説
2由来
3内容
3.1三学(トリウィウム)
3.2四科(クワドリウィウム)
4日本におけるリベラル・アーツ
4.1日本におけるリベラル・アーツ教育
4.1.1Late Specialization
4.1.24年間を通じて教養教育のみを行う
4.1.3学際系
4.2歴史
4.3リベラル・アーツを行う大学
4.4その他
5脚注
5.1注釈
5.2出典
6関連項目

概説

リベラル・アーツという表現の原義や定義としては起源は古代ギリシアにまでさかのぼる。

自由民と非自由民(奴隷)に分けられていた古代ギリシアでの「自由民として教養を高める教育」、それを学ぶことで一般よりも高度な教養が身につくものを目的としていたのがリベラル・アーツである。

欧米、とくにアメリカ合衆国では、おもに専門職大学院に進学するための基礎教育としての性格も帯びているともされている。

なお日本語の「藝術」という言葉はもともと、明治時代に啓蒙家の西周によってリベラル・アートの訳語として造語されたものである。

由来

古代ローマにおいて、「技術」(ラテン語: ars)は、「機械的技術」(アルテス・メカニケー、artes mechanicae)と、「自由の諸技術」(アルテス・リベラレス、artes liberales)とに区別されていた。[誰?]

後者を英語に訳したものが「リベラル・アーツ」であるが、その科目や定義の起源は、古代ギリシアにまでさかのぼる。プラトンは、体育ムーシケー文芸詩歌、古代ギリシャにおける音楽)とは別に、哲学的問答を学ぶための準備として、17、18歳までの少年時代に、第1科目として数論(1次元)と計算術の研究である算術、第2科目として平面(2次元)に関する研究である幾何学、第4科目として円運動に関する研究である天文学の4科目を特別に訓練する必要があると説いた[1][注釈 4]。プラトン自身によれば、上記4科目の訓練は、手工業者などのための機械的技術の訓練と区別されるだけでなく、少年に対しても決して強制してはならず、自由な意思に基づくもので、何より自身が理想とする哲人国家論における統治者のための教育としての意味を有しており、「数学的諸学科の自由な学習」という意味合いであった[2]

ところが、古代ギリシア社会においては、自由人とは、同時に「非奴隷」であり、兵役の義務も意味していたことから[注釈 5]、この「数学的諸学科の自由な学習」が「自由の諸技術」としてとらえられるようになり、その後、ローマ時代の末期の5世紀後半から6世紀にかけて、7つの科目からなる「自由七科」(セプテム・アルテス・リベラレス、septem artes liberales)として正式に定義されるに至ったのである。[要出典]

自由七科はさらに、おもに言語にかかわる3科目の「三学」(トリウィウム、trivium)とおもに数学に関わる4科目の「四科」(クワードリウィウム、quadrivium)の2つに分けられる。それぞれの内訳は、三学が文法修辞学弁証法論理学)、四科が算術・幾何・天文・音楽である。

哲学はこの自由七科の上位に位置し、自由七科を統治すると考えられた。哲学はさらに神学の予備学として、論理的思考を教えるものとされる。

この自由七科の編成は、キリスト教の理念に基づき教育内容を整えるため、ギリシア・ローマ以来の諸学が集大成されたものと見ることもできる。

13世紀のヨーロッパで大学が誕生した当時、神学部医学部などの専門職を養成するための学部では、学部に進む前の学問の科目として自由七科は公式に定められた。ヨーロッパ中世の大学では、学生はこれらの科目を哲学部ないし学芸学部で学習した。このため現在でもヨーロッパやその大学体系を引き継いだオーストラリアの大学では、哲学は文学部でなく、独立の学部である哲学部で教えられることがある。

英米の大学ではしばしば、それぞれの学問を象徴として、講堂(オーディトリアム)の高みにぐるりと7つの学科を代表する女神の立像が飾られる。

なお、アメリカのリベラル・アーツ教育についてはリベラル・アーツ・カレッジを参照のこと。

内容

三学(トリウィウム)

四科(クワドリウィウム)

日本におけるリベラル・アーツ

日本におけるリベラル・アーツ教育

日本でのリベラル・アーツ教育における米国との大きな違いは、米国における「リベラル・アーツ・カレッジ」は学部で幅広く基礎分野を学んだのちに大学院に進学することを前提としているのに対し、日本ではリベラル・アーツを修了した学生の大学院進学率が低いという点である。

その他の点においても、日本独自の発展を見せている。

日本におけるリベラル・アーツ教育は、「様々な知に触れることで、汎用的な思考力を養う[3]」を軸に、主に3タイプに分けられる[4]

Late Specialization

大学入学時には細かく専攻を決めず、基礎分野を幅広く学んでいく過程で専攻を決める。米国の「リベラル・アーツ・カレッジ(教養)→大学院(専門)」というプロセスに近い。学生にとっては、「実際に学びながら自分の専攻をじっくりと選ぶことができる」というメリットがある。専攻した分野によっては後述の「学際系」にも該当する。

東京大学教養学部や国際基督教大学がこの形式を採る。上智大学国際教養学部は2年進学次に3分野(比較文化社会科学国際経営・経済)から専攻を選択する。そのほか、早稲田大学や慶應義塾大学のように「1学科制」を採用している文学部や、2年もしくは3年進学時に専門領域を決める外国語学部などもこれに当てはまる。

4年間を通じて教養教育のみを行う

日本で広く行われているリベラル・アーツ教育。2000年以降に設置された国際教養学部の多くがこの形式である(早稲田大学、国際教養大学、法政大学など)。自然科学や数学といった理系分野の専攻は設置されず、これら分野の講義があったとしても、概論レベル止まりであることが多い。

学生からも「広く浅くは学べたが、あまりに浅すぎた」「教授達が力を出しきれていない」「(経済学など一つの分野において)段階的、体系的に学べるようになっていないので、初級・中級・上級もレベルの差がない」「広く浅すぎて結局何を勉強したのか分からない」「本来、米国で大学院進学を前提に作られているのに、日本では大学院に進学せずに行き止まり。無理がある」など、専門性の弱さを指摘する声もある[5]

学際系

近年の日本で生まれている独自のリベラル・アーツ教育。専門分野を持ちながらも、複数の学問分野を横断した教育が行われる。主に以下の2パターンに大別される。

歴史

大口邦雄は著書『リベラル・アーツとは何か——その歴史的系譜』のなかで、東京大学教養学部と国際基督教大学 (ICU) 教養学部を日本におけるリベラル・アーツ教育機関の代表としてあげている。

前者の東京大学は、第二次世界大戦前の旧制高等学校の伝統を受け継ぐものである。旧制高等学校は戦後になって4年制大学に改組されると、多くの大学において教養部一般教育課程・教養課程)がリベラル・アーツ教育の役目を担ってきた。しかし東京大学においては、教養部ではなく教養学部を独立した学部として設置した点で特徴的である。

後者のICUは米国のリベラル・アーツ・カレッジを範として戦後作られたものであり、小規模ながら人文科学・自然科学・社会科学の3領域を包摂した教育を行う点、そして米国リベラル教育学会の認定を受けるなど世界基準の教育を行う点で、旧来の大学とは一線を画すものとなった。リベラル・アーツ教育と国際性の2つを特徴とするICUの教育システムは、その後多くの大学にも引き継がれるようになる。

また旧制高等学校からの歴史を持つ大学群に関して事例を挙げると、浦和高等学校を継ぐ埼玉大学は当初設置の文理学部を1965年に教養学部へと改組した[9]。このほかの旧制高等学校からの歴史を持つ大学はその教養部を学際系学部に改組してきている。京都大学総合人間学部第三高等学校)、名古屋大学情報文化学部第八高等学校)、広島大学総合科学部広島高等学校)などをはじめ、学際系学部として独立している。また首都大学東京都市教養学部も系譜をたどれば旧制府立高等学校を前身とする。

加えて、師範学校を前身とする国立の教育大学GHQの指示で米国のリベラル・アーツ・カレッジを範として戦後に設立された大学である。これらの大学は、自然科学、社会科学、人文科学および芸術の専攻からなる少人数教育を行なっており、1970年前後に国の方針で教育大学教育学部に改組する以前はリベラル・アーツの訳語である自由学芸から引いた学芸大学学芸学部という名称であった。なお東京学芸大学は教養系を、大阪教育大学は教養学科を設置し、現代的なリベラル・アーツ教育を行なっている。同様に、リベラル・アーツ・カレッジに範をとった津田塾大学は現在も学芸学部という名称を使用している。

21世紀に入ってからは社会科学及び人文科学の専攻やビジネスの専攻に限定した(自然科学を専攻対象としない)国際教養学部等の設置が目立ち、その事例として早稲田大学での学部設置や、公立大学法人の国際教養大学の設立が挙げられる。本来は人文科学・自然科学・社会科学の3領域すべてを包摂するのがリベラル・アーツの基本であるが、日本においては戦前の旧制高等学校の「文科と理科」及び戦後の高等学校の「文系と理系」の分類が先行し、「リベラル・アーツ」を掲げつつもいわゆる文系分野が主たる領域となって3領域すべてをカバーしないなど、取り扱う分野にかたよりがある場合もある。特に自然科学については専攻として設けられていないことが多い。

上記のように、旧来の一般教育・教養課程を改組することでリベラル・アーツ教育(もしくはリベラルアーツと直接の関わりを必ずしも明示しない学際教育)を担う学部・プログラムを設置する大学が少なくない。その豊かな教員構成を活用して、これらから敷衍されうる分野も扱われるようになった。この他、全学での単位互換を行うといった制度への取り組みも挙げられる。

なお一部で「教養学」という言葉を、学問の体系化された分野として用いることがある[1][2][3]が、「教養学」という名称を「学問の一分野」として用いた学術団体は2012年時点で存在していない。例として2011年に設立された学術団体であるJAILA(日本国際教養学会)を挙げると、同会は会則で「学際的立場」を基礎としており、「学際的な学会」として研究活動を「哲学、歴史、社会科学、自然科学、芸術、教育、外国語、環境など」[4]の多方面に広げている点を示しているのみである。

リベラル・アーツを行う大学