お約束   赤い文字で書かれた部分はまったくのフィクションです。
       
登場する人物はすべて実在します(^)v
 
 
車は京葉道路を抜け千葉に入ったが、車中のmasa、スナフキン、媛子の3人は会話も弾まず静かなままだった。
スナフキンは腕組みしたまま目を閉じている。
「こんなはずじゃなかったのに」
窓から見える田園地帯を眺めながら媛子はため息をついた。
masaさんと会ったら、あれこれおしゃべりするのを楽しみにしていた。
「くるりさんがね、機会があれば3人で会いたいです」と言ってたんですよ。
くるりさんとは、masaさんの友達だったが、媛子のブログにも訪問してくれるようになって仲良しになった九州の女性だ。
「昨日ね、上野で3人の女性と老舗洋食屋さんで食事したんですよ。女子校仲間といって……」
「ほんとはmasaさんとも会わせたかったんですけど、彼女たちは主婦だから平日じゃないとダメだし、masaさんは土曜日しか空いてないそうだから、今回はあきらめたんです。次回はぜひ^^」
あれこれあれこれ。
媛子はそっとミラーに映るmasaさんを見た。目の色も表情もサングラスで隠れていて声をかけるのさえはばかられる。ただ、左の頬に残る真理の手の跡が赤味を増して痛々しい。
 
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一時間前、スナフキンと媛子が宿泊した五番街の施設までmasaさんが迎えに来てくれた時……(前々記事参照(笑))
「真理」
かすれ声で呼びながら近づいたmasaに平手が飛び、そのまま真理は家へ駆け込み鍵をかけてしまったのだった。
 
そのまま立ち尽くすmasaさんを眺めながら、あまりの出来事に、スナフキンも媛子も凍りついてしまった。
 
どれくらい時間がたっただろう。masaはゆっくり胸ポケットからサングラスを取出してかけ、二人の方を振り向いて言った。
「さあ、行きましょうか」
「しかし……」
「いえ、予定は予定です。愛媛からはるばる出てこられたのですから計画通りご案内します」
「真理と話してみます。私」
「いや、それはやめてください。
私が悪い。当然の報いなのです。
お荷物はそれだけですか?大きいのはトランクに積みましょう」
 
頬を引きつらせながらも紳士であろうとするmasaだった。
 
寡黙に運転しながらも、ぽつりぽつり話してくれたところによると、
真理とは五番街で遠い昔に暮し、悲しい思いをさせてしまった。
近々、探偵をやってる友人のジョニーに調査を依頼しようと思っていました。
『五番街で真理を捜して噂を聞いて欲しい。
もしもお嫁に行って、今がとても幸せなら真理の家には寄らずに欲しい』と。
けれども
……まさかこんな再会をするなんて
 
『あ』
媛子は思い出した。そういえばmasaさん、そんなことアップしてたことあった。「ジョニーへの伝言」というタイトルで。昔捨てた女性のことが忘れられない。けれども自分にはその女性の前に姿を現す資格などない。とかいう記事だった。
ブログは匿名性が高いからみんな本音を出し易い。媛子もスナフキンのことなんかバンバン暴露してガス抜きしている。
masaさんなんかも、バッハの崇高な記事を連続してアップするかと思えば、下ネタがずらり続き、きっとあれはストレス発散^^
あの時は男性でも一人の女性を想い続けることあるんだと、
「その人とまたうまくいくといですね。考えすぎないでもう一度アタックしてみては。応援のぽち♪」なんて無責任なコメントしたのだった。
「まさかね」まさか旧友の真理のことだったなんて。
 
五番街を出発して一時間後、車は千葉の奥地に踏み入った。閑散とした民家に竹藪、まばらな林に囲まれ、大きな館が忽然と姿を現した。
「さあ、あれがそうです。スナフキンさん」
媛子の夫、スナフキンが焦がれる麗人の館である。
 
 
 
 
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                                         つづく