久しぶりです。
問題解いたので記録として書き出します



問. 甲は、乙を受取人として約束手形を振り出した。丙は、乙からこの手形を盗取し受取人欄の乙の氏名を抹消した上、これを借入金の返済のために丁に交付した。丁は、受取人欄に自己の氏名を記載して手形を満期に支払いのために呈示した。丁の甲に対する手形金請求は認められるか。





1. 丁に形式的資格が認められるか。
 この点、77条1項7号・69条を根拠に丁の形式的資格を否定する見解に立てば振出人は69条により変造前の原文言に従って責任を負うのみであり振出人との関係では受取人欄に変造前の記載がある。
 たしかに、受取人の記載の抹消も「変造」にあたる。
 しかし、手形法69条は、手形文言が権限の無い者によって変更されても、有効に成立した手形債務の内容に影響を及ぼさない法理を明らかにしたものであって、手形面上原文言の記載が依然残存しているとみなす趣旨ではない。
 したがって、現在の文言を基準に形式的資格を判断すべきである。
 本問でも、請求時に受取人欄に丁と記入されている以上、形式的資格はあると解せられる。
2. そうだとしても甲は丁の実質的無権利を証明して請求を拒めないか。
(1)無権利者丙により乙名義の受取人欄の記載が抹消されている。この抹消は、手形上の権利関係にいかなる影響を与えるか。
 たしかに、受取人欄の記載は手形要件である(75条5号)。
 しかし、手形要件は、権利の成立要件ではあるものの存続要件ではない。よって、いったん有効に成立した手形要件を抹消しても権利自体は消滅しない。
 したがって、甲の手形債務は依然存在している。
(2)もっとも、丙は無権利である。つまり丁は手形上の権利を承継取得することはできない。
 しかし、手形取引の安全の見地から、丁に善意取得(77条1項1号・16条2項)が成立するかが問題である。
  たしかに、受取人欄が抹消されても受取人白地の手形になるわけではない。よって、このような手形の交付は手形法的流通方法とはいえず、善意取得の要件をみたし得ないとも思われる。
 しかし、善意取得は前者の形式的資格を取得した者を保護する制度である。
 とすれば、受取人白地手形のような外観を呈することにより受取人白地手形と同じ形式的資格が与えられると信頼した者の、善意取得を否定する必要はない。
(3)したがって、丙は無権利であることについて丁が善意・無重過失であれば、丁は善意取得する結果、丁は実質的無権利者とはならない。
3.以上より、丙は無権利であることについて善意・無重過失であれば、丁の甲に対する手形金請求は認められる。





                                                                 以上。