2--・次に世界を制するのはどこか? 

台頭する「11カ国」と「二〇カ国」


経済的・政治的勢力をもつ二カ国が台頭している。


これらの国を列挙する。


日本、中国、インド、ロシア、インドネシア、韓国、オーストラリア'カナダ、南アフリカ、ブラジル、メキシコである。


本書では'これらの国々を(i lカ国)と命名し、後ほど触れていく。


二〇年から二五年後には'これらの国々は市場民主主義国となるか
その途上にあるであろう。


さらには'これらの国を追う'力強い経済成長をともなった(二〇カ国)が存在する。


こうした「二〇カ国」のうち、将来的にも社会機構の欠如に苛まれるであろう国々は'アルゼンチン、イラン、ベトナム、マレーシア、フィリピン、ベネズエラ、カザフスタン'トルコ、パキスタン、サウジアラビア、アルジェリア、モロッコ、ナイジェリア、エジプトである。


こうした国々以外にも小国であるが重要な役割を担う国としてアイルランド、ノルウェー、ドバイ(アラブ首長国連邦)、シンガポール、イスラエルが挙げられる。


アジアが台頭してくる。


国際貿易の三分の二は太平洋を介して行なわれ、二〇数年後には'アジア地域での生産は世界の半分以上になる。


コンテナ船用の港上位二〇港のうち22港は'アジア地域に存在する(上海、香港、シンガポール、名古屋、釜山〔韓国〕'高雄〔台湾〕'ダンピア〔オーストラリア〕など)。


釜山と上海には'巨大な港湾・空港設備が完備されたことから'すでに一時間あたり九〇個のコンテナが取り扱われている。


中国中国の人口は二〇二五年に二二億五〇〇〇万人に達し、世界第二位の経済大国になる。


この調子で進むと'中国のGDPは二〇一五年に日本を抜かし'二〇四〇年にアメリカと並ぶ。


世界のGDPに占める中国の割合は、現在の四・五%から二〇一五年には七%、二〇二五年には一五%近くにまで上昇する。


中国人の平均的な生活水準は'二〇7五年には惟界の平均に追いつく。


これはアメリカ人の平均的な生活水準の五分の一にあたる。


二〇二五年に'たとえ中国の年間経済成長率が半分になったとしてもち中国人一人当たりの年間所得は六〇〇〇ドルである。


こうして中国では'数億人が中産階級に'数千万人が資産家の仲間入りを果たす。


また、中国の経常収支バランスは相変わらず大幅に黒字のままであり'中国資本はアメリカの財政赤字を補填し続ける。


中国とアメリカは'お互いに強い敵意を感じながらも、自らの利益を前提とした世界経済の成長維持のために、あたかも同盟国のように振る舞う。


さらに中国は'日本とアメリカを退け、フィリピンやカンボジアといった地域で最大の投資国にのし上がる。


中国の太平洋沿岸部地域は'農村部からの流民にうまく対処できるのであれば'特に世界各地に散った中国人をはじめ、世界中のクリエーター階級を迎え入れるであろう。


中国共産党の都市部の生活を組織する能力は衰過し、中国共産党は各都市部において'選挙で選ばれた人物に権力を委譲することになる。


中国共産党は改革を怠-'次に掲げる山積みとなっている艶題を解決することができない。


すなわち、現在、中国人の九〇%には退職金も健康保険もなく'都市部に住む半分の人々、そして農村部に住む五分の四にあたる人々は医療サービスを受けられない。


また'中国の最大都市上位五〇〇位に入る都市の半分では、飲料水が確保できず'ゴミ処分場が不足している。


よって、中国は都市部のインフラ設備を完備しなければならない。


また、人民元の安定性を強化し、汚職を撲滅して公的な財政部門を持続的に健全化していくことも必要である。


さらに'都市部に流入してくる数億人の人々に職を与え、所得格差を是正しなければならない。


教育システムを改善して多くの管理職を育て上げることも必要であり'旧態依然の公共部門を改革し'個人の所有権並びに知的著有権を保護するための法整備も急務である.


これだけの課題を1党独裁体制でこなすことは事実上不可能である。


二〇二五年には'いずれにせよ中国共産党の七六年間にわたる権力に終止符が打たれるであろう(七〇年以上にわたって権力を握-つづける政権は'世界中どこにも存在しない)。

この国の過去の歴史からもわかるように、この時期に中国は混乱を極める。

新たな民主主義が生まれ、一九二一年の「軍閥」による辛亥革命当時と似たような展開になるのではないだろうか。


中国が国家統一を維持できないというシナリオは排除できない。


この場合へ中国は内乱状態に陥る。


このことについては次の章で触れる。


国家統一の存続を図るためには'中国共産党は台湾やシベリアを侵略するなど'外交で得点を稼ぐことで'国民の不満を紛らそうと試みるであろう。

これについても後ほど触れる)