- 21世紀の歴史――未来の人類から見た世界/ジャック・アタリ
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3--神・近親姦の忌避・定住化-(ノマド)と(定住民)の衝突
三万年前、一部の人類はいかなる不足もな-'また先祖と再会できる理想郷を突如として夢見始めカニバニスムた。
まずは崇高で生命力あふれる存在である一神教というアイデアが生まれた。
食人習慣は'宗教的いけにえの儀式にその座を譲り始めた。
神に歩み寄るために神に捧げる人間を食べるのである。
所有権についても明確化され'言語も多様化し、分業体制も複雑化した。
掘っ立て小屋を建てる者'衣服を違う者、石器を作る者、その他の道具や武器を作る者、狩猟する者、語る者、介護する者、祈祷する者といっおきてた具合である。
男性が女性を支配Lへ母親や姉妹は'兄弟や親類の責任下に置かれた。
桂ができたことで暴力に歯止めがかかった。
グループのメンバーたちは互いに援助し'子どもたちを一緒に育て、食事を共にした。
しかし'彼らは狩猟や木の実の収穫を1緒に行なった-'崇拝対象として捧げられた獲物や収穫物を一緒に平らげた-することはしなくなった。
特に'グループ内で性的関係をもつことはななった。
つまり'近親姦が禁じられたことで'女性はグループ内に留まることができるようになったのである。
ここで未来への教訓。
神聖なるものはタブーを正当化する。
平均寿命は三〇歳を超えた。
そこで人類は'知恵を次世代に伝承するための時間を得た。
人類の知識の伝承という欲求によりへ他の動物との差別化が図られることになった。
火、風、大地、雨などの自然界の現象にしたがってへ人類は少しずつ神というアイデアを、い-つかのカテゴリーに分類するようになった。
こうして原始的一神教から多神教が宗教の形式となった。
また、神聖さが政治の基礎となった。
こうして儀式による秩序が始まった。
人類は'洗練された墓のなかに捧げ物や死者へのいけにえを入れて埋葬することで'死者をあの世に導-ことができると考えた。
つまり'これはへいずれ自分たちも神々のなかに加わることになるが、その神々に生きている者たちを保護してもらおうとするためであった。
どのグループや部族においても'祭司であ-祈棒師でもあるリーダーは'神聖の度合いに応じて各人に割り当てられた地位によって暴力行為が許容された。
各リーダーは'禁忌行為、行事日程、狩猟、軍事を仕切った。
祈祷師は'いけにえのスケープゴートを指名しヘスケープゴートもあの世との仲介役として立ち振る舞った。
歌や笛がこうした仲介者に向けて奏でられた。
迷宮とは'スケープゴートたちがあの世へ旅立っていったことの最初の隠職である。
◆迷宮(ラビリンス)世界最古の迷宮であるウレタ島のウノツソス宮殿を指すがーこの遺跡は宮殿ではなく墓所であったとする説がある。
人類が加工した物は'生き物と同様のものと認識された。
つま-、奴隷・人質・女性を交換するように'加工したモノを等価のモノと交換し始めた。
これが物々交換の始ま-である。
物々交換はあたかも長年にわたって人類に存在してきたかのように始まった。
地球上の大部分でモノの交換は'人質の交換のように行なわれるようにな-'これを管理できない場合へ暴力が生じた。
物々交換は'しばしばへ参加者に沈黙を課すことで儀式化された。
ここで未来への教訓を二つ。
言葉は強烈な武器となる可能性がある。
市場がバランスを失うと危険が生じる。
二万年前、最後まで生き残ったもっとも進化した類人猿は'当時、特に気候的に過ごしやすかった中東に居を構えた。
彼らはそこで自生していた大量の保存可能な食糧(麻、小麦、大麦、エンドウ豆、レンズ豆)や捕獲可能な野生動物(犬、羊、豚、午、馬)を発見した。
そこでいくつかのグループは'石でできた家を建てへ比較的長い期間にわたって定住することになったq石の建造物には神聖さが宿っていた。
こうして神は土地の神となった。
一万四〇〇〇年前へメソポタミアの人々は相変わらずノマドであったが'井戸を掘-'野生動物の群れを家畜化するまでにはいたらなかったが'動物たちを支配した。
彼らは自分たちの子孫を大切にするようにな-'神の表われである自然を少しずつ管理するようになった。
1万年前'人類よ-もすぼや-動-獲物を捕獲するためにへ二つの革命的な道具が発明された。
すなわち、動力伝達装置であるテコと原動力となる弓の登場である。
こうしてはじめて自らの力を増幅させることが可能となった。
この時代、メソポタミアでは人類は行動と結果をさらにはっきりと区別するようになった。
つまり'彼らは港概の方法を学びへ捕獲した野生動物を繁殖させ、穀物の種の再利用し、貯蔵庫にあまった食糧を備蓄するようになった。
決まった場所で長期にわたって生活することになり'人類がもう少し長生きするようになると'知識を伝承するための時間もまたほんの少し増えた。
祈祷師の役割は複雑となり、今後は大地と農業が'祈祷師の最大の関心事となった。
旅の神様(ノマドの神様)は格下げとなった。
こうしてホモ・サピエンス・サピエンスは'誕生して1五万年が経過したところで定住生活を確立したのである。
神聖さは大地を所有することに急転した。
つまり、神々は天と同様に大地を支配することになった。
一〇
〇〇年後の今から九〇〇〇年前、メソポタミア人は動物の交配を--返すことによってへ自分たちにとって都合のよい家畜を作-出そうと考えた。
また、彼らは羊飼いにもなった。
同時期に中国では'雑穀、豚、犬、ニワトリを基盤とした別の農業経済が発展していた。
定住化は狩猟人の思いつきである。
つま-'農業はノマドの発明であ-'羊飼いは農民の慣行となった。
メソポタミアやアジア地域において人類が定住化し始めたことで'世界的にこの動きに拍車がかかった。
中央アジアでは'馬、トナカイ、ラクダを扱う部族(現在では'モンゴル人、インド・ヨーロッパ語族人、トルコ人と呼ぶ)が現われた。
彼らは'輸送手段や戦いに革命をもたらせることになる車輪を発明し'メソポタミア、インド、中国といった広大な平原の征服に乗-出した。
こうした動きに対し'史上初のバリケードを築いた村が誕生した。
また、家や城壁も石で作られた。
首領は軍隊を結成するためにはじめて税金を徴収した。
侵略するノマドの攻撃から定住化の生活を保護する役割の必要性が国家の誕生につながった。
こうして'(定住民)は自らの製品を商業化し、また自衛するために放浪する必要がな-なり、また前線でノマドと衝突することがなくなった。
各地の走住民155は同時期に銅を発見し'これを使って矢を作-'次にこれに錫を混ぜて青銅を作った。
ここで未来への教訓。
人類は'ノマドと定住民との衝突によってへ権力と自由を手に入れてきた。
五〇〇〇年前中国では一人の指導者の下で'さらに広い地域が統治されることになった。
こうした地域では、まもな-土器や舵などが作られ、文字が形を成し始めたo
中国北部のヤンシャオ(仰部)文化では'雑穀に基づいた農業が発達した。
また中国南部では'江蘇省や漸江省といった沿岸部で太平洋諸島から伝わった稲作が始まった。
文字の発達によ-'知識の蓄積と伝承がさらに容易になった。
こうして有史以前の無の状態からへはじめて人々の軌跡や王子の名前などが記録されるようになった。
また、簿記や等価のモノを指し示す資料も作られた。
こうして初の帝国がまもなく誕生する。