新型インフルエンザH5N1 (岩波科学ライブラリー 139)/岡田 晴恵
¥1,260
Amazon.co.jp


H5N1型鳥インフルエンザウイルスの宿主域拡大



従来の強毒型鳥インフルエンザウイルスは、ニワト-やシチメンチョウなどの家禽に対しては激烈な病原性を示すが、カモ、アヒルやガンなどの水禽類や野鳥にはほとんどが不顕性感染であった。


その理由については解明されていない。


また、鳥以外の晴乳動物やヒトに対しても感染することはまれである。


ヒトの感染例では結膜炎や通常のインフルエンザ様症状にとどまっており、重症化、死亡例はほとんど報告されていない。


二〇〇四年にオランダにおいて、H7N7型高病原性鳥インフルエンザが流行した例が見られる程度である。


この際には、一名の獣医師が肺炎で死亡し、その家族にも感染がおこっている。


これに対して、二〇〇三年後半以来、東南アジアからシベリア、中東、ヨーロッパ、アフリカ北部まで広い範囲で大流行している強毒型のH5N1型鳥インフルエンザウイルスは'ニワト-などの家禽のみならず、多-の水禽類や野鳥に対しても致死的な全身感染をもたらしている。


カモなどの渡り鳥では必ずしもすべてが発症するわけではないので、不顕性感染した野鳥がウイルスを遠-に運んで流行をひろげることが危倶されている。

さらに、トラ、ネコ、ネズ-、イヌ、ウサギ、ジャコウネコ、テンなど'多くの噛乳動物にも、ニワ--と同様の致死的な全身感染をおこすことが明らかにされている。


二〇〇四年には、バンコクのトラ動物園で飼育されていた約三〇〇頭のトラの何頭かに、H5N1型鳥インフルエンザウイルスに感染したニワトリを餌として与えた。

すると、それを食べたトラが発症(経口感染)し、全身感染で八〇頭が死んだ。


この際、トラからトラへの感染伝播も確認されている。


実験的には、家ネコも感受性が高-、致死的全身感染をおこす。


H5N1型鳥インフルエンザウイルスはブタにも感染するが'ほかの動物で見られるような重症の全身感染症状は出ないようである。


しかし'中国のある地域では、約三割のブタが感染したとの情報もある。


ブタにおいて、ヒ-のインフルエンザウイルスと垂感染することによって,新型インフルエンザウイルスが誕生する可能性もあるので'由々しき事態である。


新型インフルエンザとは?