未来ビジネスを読む (ペーパーバックス)/浜田 和幸
¥1,000
Amazon.co.jp



地震直後に地震予知装置を売り込んだアメリカ


日本で「未来予測」といえば、すぐに思い浮かぶのが、地震earthquakeである。


しかし、この地震の予知predictionほど難しいものはない


2004年10月に起きた新潟中越地震もその例外ではなかった。


地震が起きた後の被害の予測においても、当初の見込みが大きく外れたことは、われわれの記憶に新しい。


地震予知という「未来予測」に関して、まず言えることは、できるだけ早く地震を予知できれば、必要な対策を講じて可能な限り被害(ビジネスなら「経済的損失」)を小さくすることができるということである。


さらに、不謹慎な表現かもしれないが、地震を予知することによって、ビジネスで利益profitを得ることも可能なのである。


あまり知られていないが、あの新潟中越地震に対し、アメリカ政府はすぐに見舞金special donation for the disasterとして5万ドルを出している。


と同時に、地震予知装置や地震調節器の売り込みsales promotionを図っているから驚かされる。


アメリカのNASAが開発した地震調節器は、ロケットの打ち上げ時の衝撃を吸収する技術から生まれた。


それは地震の衝撃を吸収することができ、すでに建っている建物に後から装着できることがセ-ルス・ポイントである。


例えば総理官邸を地震の衝撃から完全に守るためには、地震調節器が150本必要だとされた。


値段は、 1本2万5000ドル。


つまり、ブッシュ大統領GeorgeW.Bushの見舞金5万ドルでは、木造平屋建て1軒程度(1軒なら2-3本必要とされる)しか救えないことになるが、問題はそんなところにあるのではない。


例えば、見舞金と引き換えに、総理官邸用に150本の地震調節器を売ることができたとすればどうであろうか?


アメリカは、わずか5万ドルの見舞金と引き換えに、相当な利益を上げることになるだろう。


アメリカの企業が、世界を相手に自然災害対策ビジネスを展開して実績business resultsを積み上げていることは否定'できないが、日本人の感覚なら、地震が起きた直後に、地震調節器を売り歩く営業マンがいたら、不謹慎としか受け取られない。


しかし、それは日本人の感覚でしかない2004年12月のインドネシア・スマトラ島沖で発生した大地震に際しても、米軍の機関紙『スターズ・アンド・ストライプス』 (12月28日付)では


「インド洋に位置するデイエゴ・ガルシア島にあるわが海軍基地は、地震や津波の影響をまったく受けなかった。

地震対策は万全だ」


と派手な宣伝を展開したほどである。



不思議なことに、世界でも有数の地震国でありながら、日本には地震予知ビジネスというものがほとんど存在しない。


これは、不幸を前提にビジネスをするなどとんでもない、という日本人の倫理観sense ofe血icsがなせる業だが、世界的な視点に立てば、実は不幸な時ほどビジネス・チャンスなのである.


その典型が戦争であり、戦争がビジネスである(There is no business like warbusiness.)ことを否定する者はいないだろう。


後述するが、現在も継続中のイラク戦争thelraqWarもまた、企業にとっては絶好のビジネス・チャンスとなっている。