これらはプレンダがエレーナと同じ答えを言えるかどうかを見る〝テスト″の質問だ。


プレンダ-教えても医者たちが噸笑するにちがいないからよ。

ノストラダムスのやり方は昔ながらの方法に反していると言って.もし彼らが偏見にとらわれずに新しいことを試す人たちならば、ぜひ教えてくれと言うでしょうけど、医者たちはひどく清疑心が強くてね。

ノストラダムスが悪魔と結託していると言うのよ。でも、内心では誰もが教会の介入と政情不安定とときおり流行する疫病との因果関係に'疑いをもっているのよ。


わたし-残念ね。彼から教わることは山ほどあったのに。


ブレンダーええ'そのとおりだわ。根本的にこの時代には彼の才能が無駄になっていたのよ。彼としては自分の生きている時代に対処するために最善を尽くしたのだけれど。

今わたしが見ているこの道具も彼の持ち物のようだわ。

'ではないわね。

1種の…鏡のような'曇りガラスのような'その中間みたいなもの。

素材が何なのかは全然わからないけど。


 わたしはあっと叫びそうになった。

これはエレーナが言っていた鏡と同じものだろうか?

ノストラダムスが未来像を見るときに使っていたというあの鏡と?


ブレンダーこれは古代の鏡で、ノストラダムスはそれを心で操る術を知っているの。

昔話に出てくる〝魔法の鏡〟 はこれじゃないかしら。

この鏡は文明が起こる以前の大昔に作られたものなのよ。


 どの文明のことだろう? アトランティス文明だろうか?


わたし-彼はそれをどうやって手に入れたの?


プレンダ-さあ'わからないわ。こういう過去の遺物はヨーロッパじゅうに散逸しても 大切に秘蔵されているから。


ノストラダムスが鏡を手に取ったわ。

この鏡をなかだちにして彼と接触すればいいのよo

 さっきまで凝視していた炎を助けにして'これから鏡に注意を集中するのは明らかだわ。

鏡に注意を集中すると、曇りが晴れるの。

ノストラダムスはこの曇りの晴れた部分に'話しかけようとしている相手が見えたり'別の次元に入る道が見えたりするわけなの。

あなたがたの 『鏡の国のアリス』 というお話のなかで女の子が鏡を通り抜けていくのと'ちょっと似ているわね。

ノストラダムスの場合は、この鏡を心理的に通り抜けて彼の目に見える道を進んでいく。

-だから'こうするの。彼が注意を集中して鏡の曇りが晴れたらわたしが姿を現わし'彼に話しかけてあなたへ通じる道を歩いていくように誘う。


わたし-特別の会合地点と彼が言うのはこのことかもしれないわね。


プレンダ-おそらくね。きっとこの鏡が通り道なのよ。


わたし-前回'彼とその弟子はその会合地点でわたしと会ったのよ。

その弟子抜きでそれができれば好都合だあ。


プレンダ-ええ。直按話しに行けるわね。ここでちょっと彼が適当な集中状態に達するまで待たせてね。

(長い間)初めてのせいか'焦点を定めるのがむずかしいわ。


わたし-一度成功すればあとはもっと簡単になるでしょう。ノストラダムスが了解すれば'新しい接触ができるのだもの。


プレンダ・・・そうしたら'きっと彼は喜ぶわ。すご-大事なことだから。

どうしても連絡をしなければー・--彼の思考をキャッチしはじめたようよ。

これで対話がしやすくなるかもしれない。

彼が何よりも心配しているのは、警告にもかかわらず、人類が結局誤った選択をして彼の予言どおりの道を歩んでしまうことだわ.

人類がいくつかの考えを変え、最悪の事態が回避できるように、なんとかして時間の余裕のあるうちに人々に知らせようとしているの。


わたし-彼には理解できなかったと思われることを彼はたくさん予見していた0それをわたしに伝えようとしたけど、四行詩が謎解きだから簡単にはいかないの。


プレンダ-絶対に難解である必要があったのよ。

絶対に - おっと! ちょうどいいようだわ。接触してみるわよ。

わたしを見ている!


「ミシェル・ド・ノートルダム。わたしはあなたと接触するために送られた者です。時の向こう側であなたと接触した者への伝達者の役を頼まれたのです0

()

ええ わたしが特別の会合地点で会ってくださいと伝言するように依頼されたのです。

あなたの四行詩を正しく平易な言葉に翻訳して'人類すべてが間に合ううちに警告を受けるためです。

()

では、きっそく取りかかるか、あるいは今後対話がうまく運ぶように回線を設定しておくか、どちらでも結構です。すぐに特別の会合地点に行かれますか、ミシェル・ド・ノートルダム?

()

 わかりました。

わたしたちは向こうでお待ちしています」

 わたしは興奮でじっとしていられないくらいだったo

 ほんとうにこんなことが可能なのだろうか?

 だがどう見てもノストラダムスと接触を果たしたことに間違いなさそうだった。

わたし-彼は'あなたの言うことを理解した?

プレンダ-ええ。この対話は心のなかでおこなわ

'話し言葉というよりもむしろ概念による対話のようだわ。

だから何語で考えてもかまわないわけ。

行き来するのは基本的概念であって、その基本的概念が'何語であれ相手の頭が考えるときに使う言語にまた翻訳される'という具合なのよ。


わたし-あなたが話したことを、彼は覚えていたかしら?

プレンダ-ええ、大丈夫。表情は変わらないままだったけど、目がきらきらと輝いてちゃんと思い出していたわ。

自分は接触を待っていた'いつ、どのようにして接触してくるのか気がかりだったと言っていたから。

過去記事一覧