第十二章 激動の国際情勢


 大都市でエイズが広がる


 四行詩には期日を特定するのは困難ではあるが、近いうちに、というかあまり遠くない将来発生する出来事に関わっていると思われるものもある。
この章ではそういったものを取り上げた。


 海運の都市における大いなる疫病は、 

無実の罪で捕らわれ'有罪を宣告 された正義の男の血によって
死が復讐されるまで止まないだろう。
 大いなる淑女は虚偽を憤慨するO
            (第二巻五十三番)


ノストラダムス-この詩は二つの出来事を述べている。
1
つはロンドソにまたしても
大疫病(ペスト)が流行することだが、それはあなたがたから見ればすでに遠い過去のことだから'今は触れないでおこう。
もうlつの出来事もやはり深刻な疫病に関することだ。
わたしが
「海運の都市」といぅ表現を使うときには、ロンドンを意味する場合もあるし、ニューヨークを意味する場合もある。
この二都市はとにか-あなたの時代にはどちらも世界的大都市であり、しかも港をもった都市だからだ。
用心の必要があるのは'この不幸のときとその前には多くの伝染病や疫病、とりわけあなたがたが
〟エイズ″と名づけた疫病が広まることだ。
エイズはこの二都市から世界じゅうの国々へ野火のように広がり、相当数の人々の命が奪われるだろう。


わたし-(疫病は)無実の罪で捕らわれ'有罪を宣告された正義の男の血によって死が復讐されるまで止まないだろう」という部分をはっきり知りたいのですが?


ノストラダムス-そこを説明したとしても実際には意味を成さない。だが、いずれ時がくれは明瞭になるだろう。


わたし-何か治療法のようなことに関係はあるのでしょうか?


ノストラダムス∵・この病気には当分のあいだ治療法はないだろう。
死がひたすらに大手を振って通り過ぎるだけだ。


わたし-これまでは、1664年から六五年にかけてのロンドンの大疫病のことだとばかり思われていたのですよ。


 ソ連の崩壊は宿命的だった 

 夜、火事が二軒の家を捕らえ
 なかにいる数人は窒息するか火傷を負うだろう。
 これはたしかに二つの川の近くで起きる、
 太陽と射手座と山羊座がすべて減少するときに。
             (第二巻三十五番)


ノストラダムス-この詩では最終行に日付が入っている。
「火事が二軒の家を捕らえ」とは、二大国間の対話が決裂することを示しているが'とくにこの場合はアメリカとロシアのあいだについて述べたものだ。
つまり両国の国会の建物であるホワイト・ハウスとクレムリンにおいて、誤解が原因となって険悪な感情が高まることだろう。
「なかにいる数人は窒息するか火傷を負うだろう」とは'どちらの国会にも事態を均衡ある状態に保って充分に論議を尽くそうという冷静な人々がいることを意味している。
だがある者は発言しても誰からも耳を傾けてもらえない立場におかれてしまい'いわば窒息する。
また、ある者はとにかく事態の悪化を防ごうとして発言してしまう結果'出世街道からはずされる。
いわば火傷を負うわけだ。


わたし-「これはたしかに二つの川の近くで起きる」というのは?


ノストラダムス-ポトマック川と、もう一つはロシアにあって歴史上ポトマック川と同様の象徴性をもつ川だ。

わたし-「太陽と射手座と山羊座がすべて減少する」 は?


ノストラダムス-これは、これら三つの十二宮の力がそれぞれのハウスにないときに当たるためそれらの影響力は人間界の出来事には及ばない。という意味だ。

十二宮の星座の影響力はそれぞれ'他の星座との関係によって大小さまざまに変化する。
この四行詩の場合、これら三つの星座の影響力は他の星座と比較すると小さい。
だから三つの星座がこの状況に与える影響力は減少するのだ。

 世界全般のホロスコープを描いている場を想像し、そのホロスコープのなかでこの三つの星座の影響力が衰退期にあるときを想像してみなさい。
そうすればこの出来事のおよその発生時期の見当がつけられるだろう0
とくに関連する二カ国のホロスコープを措いてみるのだ。


わたし-ロシアとアメリカですね? 世界全体のは無理でしたが、占星術師のジョソがその二カ国のホロスコープを描きましたO


ノストラダムス-彼に、現行の政治機構が開始した日付を用いて、その両国を比較するホロスコープを措くようにと伝えてほしい。

アメリカは一七七六年七月二日、ロシアのほうは今世紀の初めごろだ0
これはおもしろい仕事だからへ楽しんでやってみてほしい。
 ノストラダムスの指示にしたがって、ジョンはアメリカとロシアのホロスコープを比較分析したo 以下は彼が発見を記したものである。

 もっとも広く用いられているアメリカのホロスコープは上昇する双子座と'水瓶座のなかにある月と、蟹座のなかにある太陽である。
上昇する双子座は、われわれアメリカ人が珍しいことへ気まぐれ、知識、対話を楽しむ人々であることを示している。
双子座のなかの火星は、われわれが多くの事柄に関して二重性をもっていることを世界に対して攻撃的手段で示せることを意味している。


同じ四分円に属する蟹座のなかにある金星は'われわれが母性、子供、神秘的魅力'郷愁をいとおしむことを意味すると同時に'世界全体に対していつく慈しみと保護の気持ちをもっていることもあらわしている。
木星、太陽、水星の三者は'金銭と価値を象徴する第二ハウスに属するかに座のなかに位置する。
 われわれの重点は物質的な富と所有物の蓄積に置かれている。
木星がこのハウスにあれば、われわれは物質的な富の蓄積がきわめてしやすくなる
われわれの理知である水星は、結果としての物質的報酬があるかぎり、科学的進歩に向かっていく
第三ハウスに属する獅子座のなかに北交点(ノース・ノード)があるため、われわれははかの諸国の事情に巻き込まれるよりもむしろ自分の問題に集中すべきである
こうしてわれわれは失墜(ヴェトナム戦争)を招いたのであり結果的に大失敗に終わった。
 海王星と土星は第五ハウスに位置する。
乙女座にある海王星は、われわれが医療'食品保存、電子工業において成しとげたとてつもない進歩を指している。
天秤座にある土星は、他の諸国とくらべてひじょうに寛容なアメリカの裁判機構に影響している。
第九ハウスの山羊座にある冥王星'他の国々とかかわり合いにならないようにとわれわれに警告している。
アメリカの破滅につながるおそれがあるからだ。
第十ハウスの水瓶座にある月は、われわれが気まぐれから知名人を大衆化する傾向に影響を与えている。
アメリカ人は安易に流されやすい国民であり、われわれのマスメディアがその事実をくいものにしている。
第十二ハウスの双子座にある天王星は、われわれの隠れた才能'世界に改革をもたらしてきた新発明を作り出す才能である。
ロシアのホロスコープと比較すると'われわれはもっと適応性があり'イデオロギーにおいてもそれほど固執的ではない。


 ソヴィエト連邦(一九一七年十一月七日) のホロスコープには、上昇する獅子座に加えて、さそり座にある太陽と獅子座にある月があるが、すべてそれぞれ独自の道に進むように決定されたきわめて固定した星座である。
獅子座のなかにある上昇する土星は、ソヴィエト国家の誕生が困難かつ緊張に満ちていることを示している。
この場合の土星は、のちには緊張を和らげる成熟が続-ものの、門出は多難であることを示しているのだ。
第二ハウスに位置する乙女座のなかの火星'そして獅子座のなかにある月は、権力者が国家の財布の紐をしっかり握るだろうことをあらわしている。
おそらくこの場合'最新の新機軸と歩調を合わせていく火星があるので、お金は入るそばから消費される
第四ハウスのさそり座に太陽と水星があるが、これはこの最大の国土をもつ国家のツソドラの下に隠されてきた豊富な富を指している。
大量の富はこの国の未来の希望になるかもしれない。
第五ハウスに金星と北交点があるのは、国民の気晴らしになる楽しみがひど-真面目で保守的であることを示している。
この国が期待を寄せているのは国民の創造性と豊富な資源だ。


 天王星が第七ハウスの水瓶座にあると、これは異常な事態、ときには他国との敵対関係を予告するものとなるO木星が双子座にあり'第十一ハウスの蟹座に冥王星があるのは'他の友好諸国との関係が〟裏切り″ へと逆転する可能性を予告している。
友好国が次々とソ連の手を離れ、ソ連が孤立してしまうことを暗示しているのだ。
結果的にソ連が解体してしまう意味も含んでいる。
第十二ハウスの獅子座に海王星があるのは、指導者たちがけっして国民の宗教的な性格を否定しないことを示している。
海王星が支配的位置にきていることから、非能率に加えて神秘主義と精神主義があることがわかる。


 この世界の両大国のホロスコープを比較してみると、肯定的面も否定的面もある。
しかし協力と理解を深めていぐならば、ともによりよい明日を築けるのではないだろうか。


 核戦争に備えた地下都市

 中空の山々の道のなかに' 
 新しい都市に近い世界の庭がある。
 それは捕らわれ'タンクのなかに飛び込むだろらノ0
 硫黄の毒をもつ水を飲まされて。

            (第五巻四十九番)


ノストラダムス-「世界の庭」は新世界を意味しているO ここでは大量の食糧が生育し、余剰もかなり多いので全世界の食塩をまかなえるからだ。
アメリカのロッキー山脈のなかに'政府のプロジェクトの一環として町が建設されている'あるいはこれから建設される。
ここは'住人に必要なサービスはすべて備わった完全な都市だ。
この都市は'山中に穿たれた広大な秘密記録類の保管のための地下室群に隣接している。炉が見える。炉を冷却すかために送りこまれる水が完全に浄化されていない。
何か間違いが生じも
冷却水中の元素が原子炉の放射性元素と反応して、事故が発生するのだ。
四行詩のなかの毒に関する部分は'従来の毒というより、むしろ
放射性の毒を意味している。


わたし-これは原子炉ですか?


ノストラダムス-何という名前かわたしにはわからない。凝集した鉱石と、それを取り巻く機械類が青い光に照らされて'巨大な水槽のなかに沈んでいる。


わたし-すると'この原子炉がそのがらんどうに穿たれた山の内部に'というかその都市の内部にあるのですか?


ノストラダムス-原子炉は穿たれた山の内部にあるが、都市がすぐそばに隣接しているためも住人には危険となりうる。
そんな場所に都市があるのは、原子炉の技術者などが住むからだ。


わたし-では、この都市が「ニュー・シティー」なのですね。
これまでの解釈では、「ニュー・シティー」はニューヨークで'「穿たれた山」はその高いビルだと考えられていたのです。

ノストラダムス-〝ニュー〟がつくといっても、あなたの時代にはニューヨークはかなり古い都市だと思うがね。
ニューヨークについての予見は何度かある。
この都市はいつか大惨事に見舞われるが'この詩はそれとは無関係だ0
 わたしはこれまでこんな種類の都市は聞いたことがなかったがtもしこれがたしかに政府の秘密プロジェクトであるならばそれも当然だろう。
その後、彼の言っているのはコロラド州のuッキー山脈にあるNORAD(北米大陸防空総司令部) の施設ではないかとの推測も出ている。

 だがわたしは、核攻撃の際に政府の要人たちをか-まうための秘密都市が存在するという記述を発見した。
ウィリアム・パウソドストーン著『大いなる秘密』 によれば'
この秘密都市の所在地はワシソトンの西方約七十キロにある穿たれたウェザー山の内部で、事務所ビル'食堂'病院を備えた本物の地底都市だという。


独自の上水道'食糧倉庫'発電所など、必要なものは完備しているのだ。
現在は政府の職員ならびに維持管理要員が数百人配備されている。
そこには泉から水を引いている地底人工湖まであるという。
 これらすべての記述はノスーラダムスの説明とあまりに似通っていて'とうてい偶然の一致とは思えない。
彼が幻視したのは、この都市だったのだろうか?
 事実プレソダはロッキー山脈のことをロにしているが'そこにはわれわれのあずかり知らない政府の秘密都市がもっと存在しているかもしれない。


 フランスが彼らになした善と同量の損害を、
 青の指導者が白の指導者に与えるだろう。
 捕らわれた兵士の数を王がたずねるとき、
 枝から垂れた大きなアソテナからの死。
               (第二巻二番)


ノストラダムス-これは大激変の時代に起きる出来事について述べた詩だ。
事故が、大きな悲劇が起きるだろう。
それは最初は模擬戦争として'〝想定上の〟事故として始まった。
問題の模擬戦争の場合のチームは'軍隊の作戦計画の方法どおり'白の指導者の率いる自チームと、青の指導者の率いる育チームだ。
その他の敵味方も色であらわしているので'包括的な状況を見ることができる。


この事件にはイギリスが関わっており'それぞれの指導者はコソピューターでこの模擬戦争を進めている。
ところが、コソピューターのある回路が故障したため'コンピューター自体がこれを想定ではなく現実の状況であるとの判断を下してしまう。
そこでコソピューターは
防御装置と関連する兵器を作動させ'関連する地域に本物の爆弾を投下しても悲劇的な国際武力紛争を引き起こすのだ。
そのためヨーロッパは、現状と原因を究明しようとしながらも、混沌の真っ只中へ投げ込まれてしまう。


わたし-ヨーロッパの軍隊のほかにアメリカの軍隊も巻き込まれるのでしょうか?


ノストラダムス-いや'基本的にヨーロッパ諸国の軍隊だ。
アメリカ軍が関与するとすればヨーロッパに駐留中の軍隊であり'それ以外のアメリカ軍はそのときは投入されないだろう。
なぜなら、事態の展開がひど-無意味で奇怪であるため、武器を持って脱走した狂人か、あるいはひじょうに稀れな事故のいずれかにちがいないと判明するからだo そして事態が沈静化したのち、1種の平和維持軍が招致されて市民秩序の回復を援助するの


わたし-「枝から垂れた大きなアンテナからの死」がわかりません。


ノストラダムス-これには多様な意味がある。
まず'
開発中の新種の致命的な電波兵器を指す。
ある周波数と強度をもつ電波が神経末端に激しい痛みを起こし、脳の一部を破壊する兵器である。


同時に'コンピューターからラジオによって放送される指令のことも意味している。


「枝」とはコンピューター内で故障を起こす部分のことで、本来あるべき方向とは異なる方向へと分岐してしまうのだ。
この事件に関与する二大国はイギリスとプランスだ。
イギリスは何ら明白な理由なしにフランスに対して攻撃的になり'フランスはこれによって経済的'政治的のみならず物理的に大きな被害をこうむってしまう0
 フランスとイギリスは'原田が究明されるまで'きわめて緊張した関係を続けるだろう。