まず、主人公の設定がいいですね。窃盗の前科持ちで服役中に奥さんと離婚し、出所してからもまともな仕事にあり付けず、再び犯罪に手を染めてしまう40代無職の男という、非の打ちどころのないダメ人間なのですよ(笑)。アメコミ映画のヒーローとしては極めて異色ですが、逆にそのダメさ加減が”人間らしさ”を強調し、観客からの共感を得ているのかもしれません。
で、主人公以外にも色々楽しいキャラクターが揃ってるんですが、個人的には主人公の友人ルイスを演じたマイケル・ペーニャが最高でした(笑)。この人がとにかくおしゃべりで、「いい話があるんだよ!」と嬉しそうに説明し出すんだけど、話が長くてなかなか本題に辿り着かない(笑)。聞いてた主人公も段々イライラしてきて「いいから早く本題に入れよ!」とキレる。そういうのを何度も繰り返すわけですよ。いや~、面白い(^_^)
それから、話のテンポが早いのも良かったです。なんせ『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の141分に対して、本作はたったの117分!2時間を切るコンパクトな尺数の中に、アクション、親子愛、ヒーローのかっこ良さ等がぎっちり詰め込まれ、スピーディにもほどがある展開になっているのだからたまりません。途中で停滞することなく次から次へとドラマが進むので、最後まで飽きずに楽しめますよ。
ただ、正直「短すぎて物足りない」って意見もあるかなあ。117分ってホントあっという間に観終わっちゃうんですよねえ。それから、「テンポが良すぎてタメが全く無い」という点も問題だったりして…。タメが無いとどうなるか?っていうと、ドラマをじっくり見せることができないのです。
例えば、本作では「スコットとキャシー」あるいは「ハンク博士とホープ」のように、”父親と娘”の関係性が重要なテーマの一つになっているのですが、あまりにも展開が早すぎて「もうちょっとじっくり親娘の愛情を描けばドラマが盛り上がったのに…」と思う場面もありました。
ただ、『アントマン』は基本的にコメディの要素が強いので、ドラマをじっくり描いて話の流れを停滞させるよりも、”勢いとテンポ”の方を優先させたのでしょう。なので、深い人間ドラマを期待する人には向かないかもしれませんが、軽いタッチのアクションコメディが好きな人には最適かと思われます。
あとはやっぱり、”マーベル・ネタ”ですかね~。今回の物語は、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の続きであると同時に、そのまま次回作の『キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー』へ繋がる”前日譚”的な内容になっているのです。
なので主人公が、「そういう仕事ならアベンジャーズに頼んだ方がいいんじゃない?」と言ったら、それに対してハンク・ピム博士が「どうせ奴らはまた空から○○を落とすに決まってる!」と言い返すなど、『エイジ・オブ・ウルトロン』のエピソードを入れてるんですね。
どうやら博士はアベンジャーズを嫌ってるらしく、中でもアイアンマンことトニー・スタークに対しては強い敵対心を抱いている様子(昔、トニーの父親と喧嘩したから)。なので、「アントマンのスーツはアイアンマンのとは違うんだ!」「スタークに技術を知られたくない!」と凄く警戒しています。
あと、「壁に貼り付く男」というワードが出てくるんですけど、これは恐らく『シビル・ウォー』に登場予定のスパイダーマンのことではないかと。他にも『シビル・ウォー』の”重要キャラ”がチラッと出てくるなど、ファンがニヤニヤする仕掛けが盛りだくさん。こういう”マーベル・ネタ”は前の作品を観ていると余計に面白いんですが、観ていなくても十分に面白いので問題無いでしょう。
というわけで、今後は新しくアベンジャーズに加わる予定のアントマン。今回はお試し編(?)として軽くファルコンと戦うシーンがあるぐらいですが、本格的にメンバーに参加したらどのように活躍するのか今から楽しみです。なお、例によってエンドロールの最後に次回作への伏線があるのでお見逃しなく(^.^)