汚れちまった悲しみに

「汚れちまった悲しみに・・・」

汚れちまった悲しみに

今日も小雪の降りかかる

汚れちまった悲しみに

今日も風さえ吹きすぎる

 

汚れちまった悲しみに

たとえば狐の皮衣

汚れちまった悲しみは

小雪のかかってちぢこまる

 

汚れちまった悲しみは

なにのぞむなくねがうなく

汚れちまった悲しみは

倦怠のうちに死を夢む

 

汚れちまった悲しみに

いたいたしくも怖気づき

汚れちまった悲しみに

なすところもなく日は暮れる




【中原中也】

[1907-1937]

詩人。17歳頃から詩作を始め、詩人・高橋新吉の作品の影響を受けて一時ダダに傾倒。生前には充分な評価を得ることのないまま結核性脳腫瘍が原因で30歳でこの世を去る。「山羊の歌」、「在りし日の歌」などの詩集がある。



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