『スリランカ 反政府組織と対立激化 日米欧、和平へ対話促す』
【シンガポール=藤本欣也】スリランカ情勢が緊迫化している。最大都市、コロンボなどで繰り返されるテロ攻撃に対し、政府軍は反政府武装組織の実効支配地域を空爆するなど、今月だけで民間人を含め約百二十人が犠牲となっている。内戦再発の危機に際し、二十八日には米国や欧州連合(EU)、日本など関係国が緊急会議を開催、和平協議再開に向けた国際社会の努力が続いている。
ノルウェーの首都オスロで行われた緊急会議には、スリランカを経済支援する米国、EU、日本の代表が参加し、スリランカ政府と、反政府組織の「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」双方に直接対話の早期再開を促した。日本からは明石康・政府代表(スリランカ問題担当)が出席した。
これを受けてスリランカ政府は二十九日、「和平に向けた対話のテーブルにいつでも着く用意がある」と発表。LTTEは「指導部が検討中だ」とのみコメントした。
スリランカ(人口約二千万人)では、北・東部地域の分離独立を掲げる少数派・タミル人のLTTEと、政府を主導する多数派・シンハラ人との紛争が一九八〇年代に激化し内戦に突入。これまでに約六万五千人が死亡したといわれている。
二〇〇二年、双方は停戦合意したが、〇三年、政府軍の撤退時期などをめぐり対立、和平交渉は暗礁に乗り上げたままだ。
今年二月、国際社会の強い後押しで約三年ぶりの直接対話がジュネーブで実現したものの、三月下旬以降、軍艦船や車両を狙った爆弾攻撃が再び激化。
今月二十五日にはコロンボ市内の陸軍施設内で、LTTEのメンバーとみられる妊婦(21)による自爆テロが起き、陸軍司令官が負傷、護衛ら十一人が死亡した。
軍中枢を攻撃された政府は同日夜から二日間、LTTEの実効支配地域を空爆。七千人を超す住民が避難生活を余儀なくされるなど、混乱が広がっている。
(産経新聞) - 4月30日2時25分更新