ずいぶん前のはなしだけど、
ある日テレビをつけたら
このお方が通販番組? に
出ておられた。
ほっしゃん。
美味しそうに、
ふつうにうどんを食べていた。
日本語がおかしいのではない。
ふつうにうどん。
これが問題なのだ。
ほっしゃん。が、ふつうにうどんを食べる姿を初めて見た。
鼻から出てるのしか見たことがないから、なんとなく寂しかった

仕方ない。
お仕事である。
いつもこの番組では、
商品の良さをほっしゃん。らしく笑いと優しさで紹介する。
だけど、この日は寂しかったのと同時にやんわりとしたショックをおぼえたのだった。
大きなお世話だけども、
ふつうに食べるんだ。
ほっしゃん。の場合は、
普段鼻から出すところを
美味しくいただいたという、
本来のかたちで紹介しただけ。
しかし、この時、
またあの事を思い出した。
幼稚園の頃、
給食でソフトめんが出た日のこと。
けしごむがいた、ゆり組の中で1番優秀だったOくんの鼻からほっしゃん。を抜く勢いでうどんが出たあの瞬間を。
なんで優秀な園児なのかというと、
当時は卒園真近にやっと習うようなひらがなを、彼は早いうちからすらすらと書き、本も朗読できた。
工作だってお手のもの。
ハサミづかいも鮮やかだった。
そして完成までが速い。
おまけに絵も上手く、海や山などの自然はもちろん、動物だってクレヨンで見事に描いたのだった。
サスペンダーに白いハイソックス。
白いシャツに蝶ネクタイこそつけていなかったが、靴もマンガが描いてあるようなのではなく、おりこうそうな華麗なる一族っぽいものを履いていたのだった。
そんな彼は、食事の仕方も綺麗で
ご飯粒ひとつ残らないよう、
先割れスプーンで皆のお手本のように食べていた。
そんな彼が、ある日
けしごむの目の前で鼻から白い神様の糸のようなものを出していた。
笑ったのか、むせたのか?
それが思い出せない。
そんな状況にもかかわらず
動かず静かにただ居るOくんを、
誰もフォローができずにいる中で
ただひとり、フリルをあしらったハンカチを差し出した女の子がいたのだった。
フリルは周りに付いていて、
ハンカチそのものには赤いてんとう虫の模様が入っていた。
てんとう虫というのが昭和っぽい。
園児服のポケットに入るくらいなので、今見たら小ちゃなハンカチだったに違いない。
それでも、そばにいたけしごむには、まるで少女マンガに出てくるようなきらびやかな布がひらりふわりと舞ったように見えたのだった。
人前でこんな状況になったことがないOくんは、静かに目を閉じ長いまつげを瞬くしかなく、そのハンカチを受け取ったか否かまでは憶えていない。
だけど、幼稚園児でハンカチを差し出せるとは、なんて育ちが良い乙女なのだろう。彼女こそ華麗なる一族である。
この状況をさすがにゲラゲラ笑えず、
気まずい給食で終わった。
それから小学校に入学して、
今度はけしごむが男子の悪ふざけに耐えられず、鼻からコーヒー牛乳を出した時は1週間か、いやもっといじられた。
この扱いの違いに、彼とは育ちが違うのだと涙をのんだのだった。
今でも、袋に入ったうどんと牛乳ビンを見るとそれを思い出す。
【本日の消しゴム】
カレーうどんなら、そんなに勢いよく出なかっただろうに。
あの日はつるっつるなおつゆだった。
汚い話でごめん。