2012年9月
オホーツク近代化歴史街区(MOHB※)構想を提案します。
※Modernized Okhotsk Historical Blocks
ふるさと銀河線沿線応援ネットワーク
代表 小川 清人
はじめに:「近代化の歴史」を伝える街区整備を
かつて、ふるさと銀河線が走っていた南仲町、中の島町、常盤町、北光社などの地区は北見の開拓と近代化の歴史を今に伝える歴史的街区です。
坂本竜馬につながる「北光社」、屯田兵の大隊本部が置かれた「とん田公園」、世界一の栄華を今に伝える「北見ハッカ記念館」、日本一の玉ねぎ生産を支える「倉庫群」、そして管内最初の鉄道となった網走線の最後の姿を残す「旧ふるさと銀河線検修庫」。北見の歴史を語るときに、決して外す事のできないこれらの施設やモニュメントは、北見市ばかりでなく、オホーツクの、更には日本の近代化の一実相を物語ってくれます。
ふるさと銀河線の跡地と検修庫の利活用にあたっては、跡地や検修庫そのものをスポットとしてとらえるのではなく、隣接する環境・歴史的施設・モニュメントとともに近代化の歴史を追体験できる街区=「オホーツク近代化歴史街区」として、長期的展望の中で整備することを提案します。
旧検修庫周辺を三つの機能を持った複合的施設に
観光情報交流拠点・鉄道資料博物館・イベント施設
旧検修庫の床面積は約1760㎡、車両置き場だけでも約1300㎡の広さを持ち、倉庫・部品室・作業室・機械室など多くの区画された部屋を持っています。これらの広大な空間と多数の部屋を再区分し、更には検修庫への引き込み線跡地を整備することによって、オホーツク及び北見の観光拠点として複合的に活用することを提案いたします。
①SIT(Special Interest Tourism)に応える観光情報交流拠点として
北海道観光、オホーツク観光の潮流は従来の「一泊二日の団体バスツアー」から個人旅行者中心に大きくシフトしています。
個人旅行者の旅行スタイルはSIT(Special Interest Tourism)といわれ、特定の興味関心に基づき、自ら情報を集め、計画し、手配する旅に変わっています。
オホーツクにはSITのための多くの素材やプログラムがありながら、それらの情報を収集、発信、共有し、オホーツク各地の遺産観光・体験観光・滞在型観光に携わる保存会やNPO、観光ガイド達が協働できるネットワークがありません。
そこで私たちは、旧検修庫内に「オホーツク体験観光情報プラザ」(仮称)を置くことを提案します。オホーツク各地の遺産観光・体験観光・滞在型観光に携わる人々や組織と連携し、各地の情報を収集・発信しあい、旅行者に対しては、関心あるテーマに応じた旅行プランの企画・提案や受け入れ先手配などのサービスを提供する観光情報拠点とします。
②重要な観光資源となるオホーツク鉄道史の総合的資料館・博物館として
昨年、本年と2年続けて「SLオホーツク号」が運行され、そのチケットはわずか15秒で完売する程の人気を博しました。昨年はJR北海道が旧湧網線の跡地及び越川陸橋跡を訪ねるツアーを組み、首都圏・道央圏から多くの参加者を集めました。
滝上では、札幌の旅行社と観光協会が一体となり「濁川森林鉄道跡」を巡る観光プログラムを実現しました。遠軽町では、まちおこしグループが
「武利意 (むりい)森林鉄道廃線跡地を歩く会」を主催し、生田原の「北の王金山跡」へのガイド活動もはじまりました。今秋にはこれらを巡るツアーが計画されています。紋別では、住友鉱山の支援も受けた鴻之舞金山跡・旧鴻之舞地区の整備と公開が進められ、「鴻紋軌道」への関心も高まっています。この他にも置戸森林鉄道、温根湯森林鉄道、札弦森林鉄道など産業遺産と鉄道遺産はオホーツク観光の新たな資源になろうとしています。
私たちは旧検修庫内に「オホーツク鉄道歴史資料・博物館」(仮称)を置くことを提案します。この「資料・博物館」は旧国鉄やふるさと銀河線のメモリアルにとどまりません。かつてオホーツク中を駆け巡った森林鉄道や鉱山鉄道、村営鉄道などの歴史を網羅した施設とします。更には「オホーツク体験観光情報プラザ」と協力し、オホーツク各所に点在する鉄道遺産の現地関係者・ガイドと連携した鉄道観光の情報交流拠点として機能させます。
ここに丹尾氏が持つ国鉄時代の車両を収蔵し、国鉄OBらが「歴史の語り部」として、車内や運転台等を案内します。特に検修庫の特質を活かし、車両下部を下から見る展示車方法は全国的にも注目を集めることになります。更には市内の「三 (み)治 (はる)公園」、「SL広場」にあるSLの運転台も同様に国鉄OBによってガイドします。これによりこれらの施設と車両の魅力は一挙に高まり、多くの鉄道ファンや観光客を全国から呼び込むことが可能となります。
③屋内・屋外およびその両用が可能なイベント広場として
旧検修庫の屋内・屋外およびそれらを両用することで多彩な形式のイベント開催が可能になります。
ここを「オクトーバーフェスト」や「地産地消フェスタ」の会場としたり、さまざまな「収穫祭」、「マルシェ」、「朝市」に連動し、新たな「北見マルシェ」(仮称)を開催するなど「食と観光」をテーマとするイベント会場としてこの広場の個性を発揮させることを提案します。
ハーブプロムナード&ハーブガーデンの整備とハーブレストランの併設
かつて、北見の街なかにははっかの風が吹いていました。もう一度北見の街なかにハーブの風を吹かせるために「ハーブプロムナード&ハーブガーデン」を整備し、さらにはハーブティーハウスやハーブレストラン、ハーブショップを併設するよう提案します。
食材としてのハーブの活用を促し、ハーブを「新しいオホーツクの食文化」として育て上げます。レストランは「このレストランで食事をすること」自体が観光の目的となるだけの「味とグレード」を提供します。
歴史公園としてのとん田公園の再整備
とん田公園はかつて屯田兵の大隊本部が置かれた場所です。野付牛屯田兵の歴史を語るのにこれほど最適な場所はありません。
新図書館建設にともなう旧図書館についても、とん田公園を「歴史公園」として長期的に再整備することを前提にその活用を検討すべきです。
一大グリーンプロムナードの形成 石北大通りから、北光社まで
石北大通りは緑豊かなプロムナードとして大きな魅力を持っています。対面にあるハッカ記念館や検修庫周辺跡地との間には国道39号線がはだかり、連続性・一体性を閉ざしていますが、国道を跨ぐ歩道橋の建設し、更に北光社までの路床を緑と共に整備することで一大グリーンプロムナードが形成されることになります。
北光社地区へのアクセスロード整備と北光社開拓記念館の建設
北見開拓の祖は北光社移民団です。北光社移民団の歴史資料を整備することは、幕末の志士につながる日本近代史と北見史をつなぐものです。
北光社開拓記念碑周辺に資料館・記念館を建設し、併せて旧ふるさと銀河線の路床をそれへのアクセスロードとして整備すべきです。
「点から面へ」、北見観光の転換を担う語り部ガイドとNPOを主体とする施設運営
これからの北見観光は単にモニュメントや施設を作って客を待つ、あるいは複数の観光ポイントを巡るだけの「点の観光」から、旅行のテーマ性や旅行者の興味関心に基づく「面の観光」へと発展させていくことが必要です。この「点から面へ」の転換を担う「要」となるのが、様々な分野での専門的知識や経験を持った「語り部」としての観光ガイドです。
「語り部」としての観光ガイドを確保し、活動していくためにこれらをスタッフとする新たなNPOを立ち上げ、これに「オホーツク体験観光情報交流プラザ」「オホーツク鉄道歴史資料館・博物館」、「イベントホール」、「ハーブレストランやハーブショップ」の運営管理を任せ、収益とすることを提案します。観光協会や香り彩るまちづくり推進機構などの市民団体、鉄道や林野のOBなど様々な専門知識と経験を持った人々の支援協力を受けて、これらの事業を実施します。

長文を最後までお読みくださりましてありがとうございました。
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