前回の記事には、多くの方(特に地方の方)からコメントやメッセージをいただきました。
私なりの推論として地方においては
①極端な国公立志向
②現役志向
があるのではとしましたが、やはり私と同じように感じている人が多いようで、中には、地方では高校側が現役の国公立大学合格実績にとても拘っており、安全圏の国公立大学への露骨な誘導を行っているケースもあるという情報もいただきました。
首都圏高校と地方高校の進学実績を比較する際、このような背景に加え、首都圏の国公立大学と地方の国公立大学の難易度が大きく違うことも考慮しておく必要があります。
例えば、前回記事で挙げた全国国公立大学現役進学率NO1の松山南高校は愛媛、高知、徳島、香川といった国立大学進学者がかなり多いですが、高知大学理工学部の2021年河合塾合格者平均偏差値は47程度です。東京だと一番低い農工大、電通大でも同偏差値60程度ですし、首都圏まで広げて埼玉大だとしても偏差値56程度で首都圏には成績下位層で合格出来る国公立大学はありません。
実際に地方と東京の同偏差値帯の高校で進学実績を比較してみました。
松山南高校の偏差値はみんこうで66。東京で66だと都立小松川高校、私立都市大等々力高校になりますので、この3校の比較になります。
仮説として
1.概ね同じ偏差値帯の高校で比較すれば、難関大学の合格実績に大きな差はないはず。
2.ただし、志望校の選択には高校により志向が異なる。
3.地方は極端な国公立志向、東京は私立志向。公立は国公立志向、私立高校は私立志向。
この結果、志望校は下記のようになると推定されます。
(トップ層)東京・地方限らず東京一工医を受験する。
(2番手層)地方は地方旧帝、東京は地方旧帝はレアで早慶または首都圏国立を受験する。
(3番手層)地方は旧帝以外の上位国立、東京は早慶上理または首都圏国立を受験する。
(4番手層)地方は地元に近い中堅以下の国公立、東京は中堅以下の地方国公立選択はレアで、MARCH・日東駒専といった私立を受験する。
これらを意識して、進学実績を下記の層に分類・集計してみました。
【現役進学率】
愛媛県立松山南
東京一工----------0.3%
難関10国立--------7.4%
難関10国立+早慶---8.0%(7.4%+0.6%)
上位国立+早慶上理-20.0%(18.8%+1.2%)
東京都立小松川
東京一工----------0.6%
難関10国立--------2.2%
難関10国立+早慶---6.0%(2.2%+3.8%)
上位国立+早慶上理-24.0%(17.4%+6.6%)
私立都市大等々力
東京一工----------1.9%
難関10国立--------2.7%
難関10国立+早慶--10.2% (2.7%+7.5%)
上位国立+早慶上理-26.9%(9.3%+17.6%)
※難関10国立・・・旧帝一工神戸
※上位国立・・・東京周辺の国公立+岡山広島大阪公立(概ね2021年河合塾合格平均偏差値50台後半以上)
とても分かりやすくなったように思います。
・最難関の東京一工でみると僅かながら中高一貫校の都市大等々力が有利。
・東京の高校から地方旧帝レベルの学力があっても地方旧帝選択はレア、早慶選択が主流なので難関10国立でみると地方の松山南が有利。
・旧帝+早慶現役進学でみると差が殆どなくなる。ただし、早慶進学は首都圏ではマジョリティー、地方はマイノリティーとなっている。
・上位国立+早慶上理現役進学でみると首都圏高校のほうが有利となる。地方は上位国立に届かない場合、難関私大ではなく、中堅国公立を受験しているものと思われる。
ほぼ、仮説どおりの結果が得られたように思いましたが、如何でしょうか?
難易度は置いておいて、ステータスや就職まで考えた場合の合格価値という意味では地方高校の国公立進学=東京の高校のMARCH以上進学というような気がしています。
つまりは、学校側、あるいは保護者の進学実績に対する目標はその地域によって異なり、地方でのKPIは国公立大学進学実績、首都圏では国公立+難関私大進学実績になっているのだろうと思います。
小松川や都市大等々力の現役国公立+MARCH以上の難関私大進学率は50%を僅かに上回る程度ですが、仮に同レベルの松山南がこの2校と同じように受験したとしたら同じような率になるはずですので、国公立現役進学率70%よりMARCH以上現役進学率70%のほうが達成難易度は高いようにも思います。
いずれにしても、各地域で志望大学の選び方がかなり違うことを念頭に進学実績を比較する必要があるということかと思います。