理系女子の難関大受験記&親父のつぶやき

理系女子の難関大受験記&親父のつぶやき

子ども2人の受験監督を務めた50代親父が綴る受験日記です。
これから受験する方の参考になればとリアルな体験を余すところなく語ります。
今は、趣味の話や日常のつぶやきのほうが多いかも。
アメンバーの無言申請は承認しません。

(つづきです)

 

沈黙を破ったT君。

 

「やはり、納得できない。K先生の好意を踏みにじるような真似はやめて、問題を返し、実力で試験を受けるべきだ」

真っ直ぐな正論に、最前列グループはバツが悪そうに黙り込みました。
しかし、どうやって返すのか? 正直に話せば彼らの人生は終わる。

クラス全員が昨日黙認した以上、そこには連帯責任のような重苦しい空気が流れていました。


その時、H君が割り込んできました。

「俺に任せてくれないか。K先生とは仲が良いし、丸く収めてくる」。
誰もが尻込みする火中の栗を拾う役を、H君が引き受けてくれたのです。

そしてT君もまた、共に責任を背負うべく、盗んだ問題用紙を持って2人で職員室のK先生のもとへ向かいました。

二人は先生を呼び出し、真っ直ぐな目でこう言ったそうです。
 

「先生、昨日、廊下に試験問題が1枚落ちていました。これがその問題用紙です。拾った生徒がこれを他の人にも見せてしまったんです。だから、問題を作り直してほしい」

K先生は、呆然と問題用紙を見つめながら「そんなはずはない」と反論しました。

自分がそんな大事な問題用紙を落とすわけがない、と。
しかし二人は「実際、拾った者がいて、みんなが見てしまったんです」と、同じ言葉を繰り返しました。

 

絶対にそんなことはあり得ない、先生も引き下がりません。

数分間の押し問答のあと。

すべてを察したK先生は、静かにこう言ったそうです。
「……君たちがそう言うなら信じよう。問題は作り直す」

若気の至りが招いた、危うい事件。
あの時、勇気を持って声を上げたT君と火中の栗を拾いに行ったH君。

そして、すべてを理解した上で、生徒の未来を守るために「騙されたフリ」をしてくれたK先生。

冬の冷たい空気の中、墓前で思い出したのは、そんな青臭くも、人間の温かさに触れた大切な記憶でした。