●香高堂文化記＝片倉小十郎とニ列目の人生

７５歳、西郷輝彦が前立腺がんで死去した。西郷輝彦と言えば、歌手と言うより俳優として評価していた。１９８７年の大河ドラマ「独眼竜政宗」で、渡辺謙の伊達政宗を支え続ける守役＜片倉景綱小十郎＞を演じていたのが西郷輝彦だった。大将のように人を引っ張る人もいれば、参謀のように裏側でじっと物事全体の動きを見つめる人がいる。また、豊かな才能を持ちながら貧しさなどの故に表世界へと出そびれた人たちもいる。

集英社文庫よりドイツ文学者、エッセイストの池内紀の「ニ列目の人生」と言う本が出ている。世間に妥協するのをよしとせず意固地になったり、時流に逆らったり、わざと無視したり、世にときめくより自分の世界を大切にした人々の話だ。歴史に埋もれた、忘れ去られた隠れた異才たちを掘り起こした１５人を蘇らせている。例えば、貧窮の中で優れた研究を続けた植物学者＜大上宇市＞、湯布院の亀の井別荘を作った＜中谷巳次郎＞、近代感覚を尺八演奏に持ち込んだ＜福田蘭童＞などの他、もう一人の棟方志功、宮沢賢治、小泉八雲も紹介されている。

ところで、片倉小十郎景綱は宮城県南部の白石城主であったが、片倉家の菩提寺として創建されたのが、臨済宗妙心寺派の＜傑山寺＞。初代景綱の墓は一本杉を墓標にしたと伝えられている。いつも頃からか、この傑山寺のお嬢さんの麻生菜穂美と知り合った。お嬢さんと言っても今や還暦を迎えたようだが、スーパーウーマンだ。長野五輪に関わり、英語やフランス語が堪能で、若柳流師匠でシャンソンまで歌う。

年数回５０～６０人の文化人が集う麻生会を主宰し、私は用務員になっている。だが２年前から＜件の禍＞で会合が開けなくなっている。元会社の同窓会などでなく、電通JAL仲間でつくる＜のーちぇの会＞や＜田縁の会＞＜ギリ―クラブ＞など多くの会合で友人を得てきた。感謝の気持ちを伝えたいが、海外生活もあり年賀状も出さず、不義理ばかりである。

片倉小十郎景綱とニ列目の人生