Hidden Enemy42 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
作者様・出版社様には一切関係はございません。
また文章の無断転載等はご遠慮下さい。

自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)

※これからハッピーエンドに向けて”久遠とティナが心の闇、傷を乗り越えていく”というのがテーマになります。

中には”リックの死”に対して重たくて辛い部分も出て来ます。
最愛の恋人を突然失ってしまったティナの悲痛な想いも、客観的に優しい目で見守っていて頂ければ…と思います。




「……ねぇ…久遠……。」

ティナは…とても緊張した小さな声で…彼の名前を呼んだ。

…自分の…声と…手が震える――…。

落ち着いて…私……! 今…ちゃんと…久遠に自分の気持ちを伝えないと――…!

「…………………………。久遠………。今まで…貴方は…本当に…どれだけ辛い思いをして…いえ……私が……させてしまった部分もあるのよね――…。」

リック……。下手な言葉でも…私の想いがちゃんと久遠に届くように…貴方も祈っていて――…?

「………。本当に…ごめんなさい……私…謝っても……許されないくらいに…酷い言葉を…貴方に……。」

「事故だったのに……っ その後もリックを失った…悲しみのあまり…現実を受け入れる事が…どうしても出来なかった…っ。」

…ティナの瞳から…涙が溢れ出し……頬を伝っては…また新たな涙が瞳に溢れていく――…。

「…10年くらい…ずっと…ずっと…謝罪の言葉を…っ色々と……考えていたけれど…やっぱり……改めて実際会うと…うまく言葉には出来な…い………。」

「………あの時…“久遠“という…存在が……消えてしまう…くらいに…っわたし…は…っ…貴方を…追い…詰めて…っしまっ……」



“リックの代わりにアンタが死になさいよ…!人殺し…!”



私が言ってしまった言葉は…久遠の心を殺してしまったようなものだった――…。

「…ごめっ…」

「………ごめん…なさっ……っ」

…本当に…今まで…ごめんなさい…久遠――…!

ティナは…不器用で拙い言葉ながらも…心の底から必死に久遠に謝った――…。





* * *





…まさか…こんな日が…来るとは思ってもみなかった…。ティナの…ティナの方から俺に謝ってくるなんて――…。

「………………………。いや…ティナが…謝る必要は…全く無いんだよ……俺が…俺が悪かったんだ――…!」

「…俺が…リックの忠告を無視せずに…あの時…ちゃんと聞いて…いれば…リックは死なずに…済んだんだ…」

…ティナ……。

君から“最愛の人”を奪ってしまった…罪深い俺……。

…更に生まれる前のリッキーからも“父親”を奪ってしまった――…。

「…ごめん…ティナ……。俺の方こそ…謝って許される事では無いけれど――…。」

久遠の瞳から…エメラルド色の涙が零れ落ちる…。

「俺の方こそ…ずっと…君には……心から…心の底から…謝りたい…と……そう…思って
………」

その言葉を聞いたティナは…久遠の頬に伝う涙をそっと拭い…優しく彼を抱き締めた――…。

そして…久遠の耳元で静かに囁いた…。



――ありがとう…久遠…許してくれて―――…。



「………………………。それは…俺の方が言うべき…言葉だよ…ティナ――…。」



そう言いながら久遠は優しく…そっとティナを抱き締め返し…また…キョーコも泣きながら2人の様子を温かく見守っていた…。



13年――…。

13年という長い年月を経て…漸く…深くすれ違ってしまっていた2人が…和解した瞬間だった――…。




“ふぅ~!お前ら…やっと仲直り出来たのかよ………。今回はすっごく時間掛かったじゃねーか…全く…。心配ばっかりかけやがって…!”

“………………………。これでもう…大丈夫だな…? 久遠…ティナ――…。”



頭のどこかで…リックがそう言ってくれているような気がした――…。










その後…暫くして2人とも気持ちが落ち着いた頃…太陽はゆっくりと西の空へと姿を消していこうとしていた。

「あのね…リッキーが小学生になった頃に…当時の事故をもう一度振り返って…色々と考えてみたの――…。」

* *

流れ出す血――…。

止まらない…血――…。

結局…出血多量で…救急車が到着した時には既に手遅れだったリック…。

もし…あの時に…私が落ち着いてちゃんと止血をしていたら…?

もしかして…今とは…違う未来があったかもしれない…?

可能性は…低いかもしれないけれど…リックはまだ死なずに…病院まで持ったかもしれない――…。

そして…病院まで持ちさえすれば…更に緊急的な延命措置が…出来たのかもしれない――…。

久遠の事を”人殺し”って言うのなら…止血をしようともせずに…ただひたすら嘆き悲しんでいた…私も…同じじゃないの――…?


* *


「…そう考えて…私と同じ…悲しい思いをする人が…この先1人でも減ればいいな…って思って今は…“救急救命士”をしているの――…。」

「そう!!!母さんは凄いんだよ…!母さんのお蔭で…今まで沢山の人の命が救われて来たんだ!!」

リッキーがユリアと手を繋いで…隣の部屋からリビングの方へと戻って来た。

「…あ…ごめん母さん…大切なお話中に……。でもさ…ちょっと喉渇いちゃって」

「あ…もう…こんな時間か――…。」



久遠は腕時計で時間を確認すると…リックのお墓でティナと再会した時の2時13分頃から…3時間ほど経過し

リックの形見である腕時計の針は…確実に未来へと時間を刻み続けていた――…。










そして子供達がジュースを飲み終えた頃…ティナはユリアの髪に赤いハート型の可愛い髪飾りが付いているのに気が付いた。

「………………………。リッキー……その飾り付きのゴムって…もしかして――…!」


* *

“よし!!ティナ! …じゃあ…今から買い物に出掛けよう…!!赤ちゃんグッズ揃えに行こう!”

“え…?えぇーー?!午後からの授業は…?”

“パス!パス!…今日は俺達にとって運命的な特別の日だから…”



“…あ……!ティナ…見て!この髪飾りなんかとても可愛いなぁ…!”

“………………………。ねぇ リック…男の子だったら…どうするの…?”

“うーん…大丈夫…!何だか…女の子のような気がするんだ――…。”


* *



「あぁ…これ?…うん…。そうだよ……父さんが…死ぬ前に…お腹にいた俺にって…買ってくれたやつ。」

「みてみてーー!!かわいーでしょ? リッキーにぃにが くれたのーー!!ゆり、これとっても すきーー!」

ユリアは満面の笑みを浮かべながら…リビングにある鏡を見て…可愛い髪飾りを触り出した。

そして…その様子を見た久遠はキョーコと視線を一度合わせた後に…リッキーに声を掛ける。

「リッキー…そんな大切な物を…ユリに…!」

「そうよ…!ちゃんと…大事にしまっておいた方が…!
あれは…リックさんの形見になるんでしょう…?」

リッキーはコクンと頷いた後に…少し複雑そうな表情を浮かべた。

「…それはそうなんだけど…オレ…男だし…//// 何だか…オレが持っているより…ユリアが着けている方が良いような気がして――…。」

「だって…クオンって…父さんの親友だったんでしょ…?」

「………………………。親友の…娘なら…“父さんの娘”でもあるんじゃない…?」


リッキーは自分のポケットから…彼らの“親友の証”であるアイオライトの石を取り出して久遠に見せた。

「…それに…オレの父さん…女の子…欲しがってたみたい…だし…?」

そう言うと…リッキーは少し嫉妬したような表情を見せた後に…照れながら笑った――…。

そんなリッキーの様子を見たティナは…クスクスと笑いながら彼を優しく抱き締めた。

「リッキー、お父さんは…“女の子のような気がする”っていう“勘”が外れただけで…別に女の子を欲しがってた訳じゃなかったのよ…?」

「…ふぅん…?なら…いいけどね…/////」

「でも…その髪飾りは…私もユリアに使って欲しいって思う……。リッキーの言う通り…久遠の娘なら…リックの娘でもあるようなものだと思うから――…。」

ティナはユリアの前に行き屈んで彼女と目線を合わせ、優しく話掛けた。

「ユリア…そのハートの髪飾りは…リッキーのパパが買ってくれたとても大事な宝物なの。…だから…大切に…大切に…使ってくれる…?」

「…うん!!たいせつにするーー!!」

ユリアは屈託のない笑顔でそう返事をしたが、横にいたキョーコは…少し躊躇った。

「…え…でも…ティナさん……リックさんの大切な形見…本当にいいんですか…?」

「うん…。だって…ユリアは…リックの親友の久遠の娘だから特別なの…。それに…リックもその方が喜ぶと思うし――…。」

…ティナの優しい言葉に…久遠は感動をし、心の底から…幸せそうな微笑みを浮かべた――…。



「…ありがとう…ティナ――…。」



良かった…。良かったね…久遠さん――…。

そして…久遠の笑顔を見たキョーコは心の中で…そう思いながら彼に優しく微笑み返した。

実は…キョーコ自身も“久遠を支えないと…”とは思いながらも…ティナに会う事には大きな不安があり、今まで…必死にそれを彼に気付かれないように振舞っていたのだ。

キョーコは…今まで培って来た“演技力”に感謝しながらも…心のつかえが取れた事にとても安心をした――…。







久遠の未来への時計の針は…“役者”として

そして…ティナの時計の針は…“救急救命士”として


これからも未来に向かって時を刻んでゆく――…。

新たに誕生した “命”の存在と共に―――…。





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