「実力が全てのスポーツ界で『祈り』なんて」とバカにするなかれ。
2012年の王座奪回の陰にフィールドへ立たない裏方の祈りがあった。
2012年10月20日、東京ドームに取材道具を置き忘れていた記者は朝の球場へ足を運んだ。そう、中日とのクライマックスシリーズ(CS)でいきなり3連敗を喫し、絶体絶命のピンチに追い込まれた翌日だ。
第4戦の試合開始まで10時間近くあるから、何気なく覗いたフィールドは当然まだ薄暗い。ところが2つの人影があった。いずれも球団スタッフだった。
2人は1塁ベースに歩み寄り、パッと塩をまき、ザッザッと音を立ててベース周辺の土に混ぜている。次は2塁ベースに向かってパッ、ザッザッ…。
そうか、あれはチームの逆襲を祈る清めの塩だ。
2人は3塁ベース、ホームベース、マウンドで同じ作業を繰り返し、最後に深々と一礼してベンチの奥へ消えていった。静寂に包まれたフィールドが記者の目にどこか神々しく映った。
ここから巨人が3連勝でCS突破を果たし、日本一まで駆け上がったのは、我々も知っての通り。
例の2人はあの『お清め』を大っぴらに明かすこともなく「本当にすごいヤツらですよ」と選手の活躍を褒めたたえるだけだった。
祈りが通じたか否か—。
その答えに大した意味はない。
重要なのは、どこからともなく選手がスタッフの行動を耳に入れ、チームの一体感が高まったこと。主将の阿部は勝ち進むたびに、裏方への感謝を口にした。
あれから月日は流れ、2019年。
今も昔も変わらないファンにとって最大の『仕事』は何なのか?
それは、日本一奪回への祈りを欠かさず、声を枯らして応援し続けることだ。
チームへ注ぐ愛情は間違いなく選手に伝わる。そして、秋にみんなで一緒に喜びを分かち合おう。
Show The Spirit
~和と動~
GIANTS PRIDE 2019
今日は絶対勝つ!!
木村拓也に勝利を届ける!!