金属膜による水素分離技術、パラジウム削減・代替水素分離膜 | Ghost Riponの屋形(やかた)

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パラジウム削減・代替水素分離膜
2008.05 産総研TODAY
https://www.aist.go.jp/Portals/0/resource_images/aist_j/aistinfo/aist_today/vol08_05/vol08_05_p14_p15.pdf

白金族金属が抱える課題
 白金、パラジウムに代表される白金族金属は環境・エネルギー分野で欠かせない金属です。自動車排ガス処理触媒には世界生産量の半分近くが使われています。近年、クリーンなエネルギー媒体として水素に期待が集まっていますが、その製造・利用にも白金族は不可欠です。現在、水素の多くは天然ガスなどから化学反応によって製造されていますが、その触媒に白金族金属が使われます。水素と酸素から効率よく発電する燃料電池には触媒として白金が使われます。このように、水素社会実現には大量の白金族金属が必要になると考えられます。
 一方、白金族金属の鉱脈は品位が低く、純金属1 gの生産に1 tもの岩石を採掘する必要があります。そのため、採掘に伴って自然環境を破壊し、ほぼ同量の岩石類を廃棄することによっても環境を破壊しています。しかも、その岩石を取り扱うために莫大なエネルギーを消費しています。環境・エネルギー分野で必要となる白金族金属の生産で、逆に環境・エネルギー問題を引き起こしているとは大変皮肉なことです。

パラジウムで高純度水素を作る
 パラジウムからなる金属膜は混合ガスから水素のみを選り分ける「ふるい」として使用することができます。その分離メカニズムを図1に示します。水素分子は膜の表面で2つの原子に解離し、膜中に溶解し、金属原子の隙間を縫って拡散し、膜の反対側で再結合することで透過します。水素以外の分子は解離、溶解、拡散が困難なことから透過することはできません。半導体、LEDの製造には超高純度の水素が必要ですが、そこではパラジウム膜で99.9999999 %の水素を作り出して利用しています。
 蒸留のような気液の変化を伴わないこの分離プロセスはエネルギー効率が良く、燃料電池用の水素製造でも期待されています。金属膜で得た高純度水素を供給することで、燃料電池触媒の白金量を減らすことができます。水素製造に必要な白金族金属触媒の一部も不要になります。
 しかし、パラジウムもまた白金族金属です。産総研では水素分離膜に用いるパラジウムの削減・代替に関わるさまざまな研究を進めています。ここではその一部を紹介します。

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パラジウム削減・代替技術
① 薄膜化によるパラジウム削減
 パラジウム使用量削減の最も基本的な方法は膜を薄くすることです。膜厚が市販膜の10分の1の5 μmになれば、面積あたりの水素透過速度は10倍になります。従って、同量の水素透過に必要な面積は10 分の1 に、結果として、必要なパラジウム量は100 分の1 と大幅に削減することができます。
 薄い膜の強度を補うには多孔質支持体などの支えが必要です。ところが、多孔質支持体表面の凹凸が原因で、その上に無欠陥で薄いパラジウム膜を作るのは困難でした。産総研では多孔質支持体上に薄い高分子層を一旦形成し、その上にパラジウムをメッキしてから高分子層を除去することで、無欠陥のパラジウム薄膜を作ることに成功しました(図2)。高分子層のあった部分が空間として残り、パラジウムが支持体に強く拘束されないことなどから、長期安定性に優れていることも明らかになりました。現在、更なる均一薄膜化(1 ~5 μm)やPd60Cu40に代表されるPd 合金系への展開、さらに、モジュール化など実用化に向けて取り組んでいます。

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② パラジウムに代わるバナジウムの薄膜化
 水素透過能が高く、パラジウムに比べて資源が豊富な金属としてバナジウムが知られています。これまで圧延で作製されたバナジウム膜が研究されてきましたが、合金化、熱処理、表面研磨など多くのプロセスが必要でした。産総研では気相成長法を用いることで多孔質金属支持体上にバナジウム薄膜を単純なプロセスで形成することに成功しました(図3)。塩素を含まない原料を用いるため、金属支持体への影響も少なく、環境にも優しいプロセスです。この上にパラジウムを薄く被覆することで水素透過能を発揮します。今後、一層の薄膜化、合金化による性能の改善、生産性の向上を目指して開発を進めていきます。

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③ 非パラジウム系アモルファス合金膜
 図1のように金属膜は水素透過の際に水素を溶解しますが、その水素により一般に金属が脆くなること(水素脆化)が知られています。その結果、崩壊し分離能を失ってしまうことが非パラジウム系膜素材の開発で最大の課題でした。そこで、高い靱性で知られるアモルファス合金に着目して材料探索を行いました。その結果、ジルコニウムとニッケルからなるアモルファス合金が水素分離膜として使えることを見出しました。また、非パラジウム系金属膜は通常パラジウム被覆が必要ですが、この膜はパラジウムがなくとも水素を透過させることが分かり、パラジウム完全代替の候補として期待されています。しかも、アモルファス合金は単ロール液体急冷法を用いて大面積の膜を生産することが可能です(図4)。企業との共同研究などを通じて、性能向上、大面積化、耐久性の向上などに取り組んでいます。
 資源・環境・エネルギー問題の同時解決に貢献することを目指して、産総研はこれらからも水素分離膜の研究開発を進めていきます。

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環境化学技術研究部門
原 重樹


参考文献
・M. Mukaida, et al., Preparation of Vanadium Thin Films by Chemical Vapor Deposition , TMS2007 Ann. Meet. Proc., 169.
・須田洋幸、高純度水素の長期安定供給を可能にするパラジウム系薄膜の新規調製法、水素利用技術集成 Vol.3、NTS (2007) p. 268
・レアメタル-技術開発で供給不安に備える- 、独立行政法人産業技術総合研究所レアメタルタスクフォース編 工業調査会、p. 183 (2007)


靱性=粘り強さ。

水素分離膜
①パラジウムの薄膜化→パラジウム削減
②バナジウムの薄膜化+パラジウムめっき→パラジウム削減
③ジルコニウムとニッケルのアモルファス合金膜→パラジウム代替
③が本命っぽい。
白金族代替えに、ニッケルが毎度登場しているのは気のせいだろうか。
ランデル・ミルズのブラックライトプロセスもニッケルを使ってます。

原理は、薄い金属膜を、酸素などと水素の分離フィルターに使用すると。
パラジウムは白金族で高価だが、ジルコニウムとニッケルなら安く済む。
ジルコニウムは、チタンの仲間らしい。
③では、多孔質(スポンジ構造のイメージ)のステンレス板に、ジルコニウムorジルコニウムとニッケルを、溶かしてくっつけていると。(ジルコニウムの単独溶着の場合、ステンレスに含まれるニッケルと反応するのか?ちょっと不明)
アルゴンガス=不活性ガスで溶融金属を吹いているのは、酸化防止と予想。
ジルコニウムが酸化すると、ジルコニアになるらしい。
模造ダイヤ↓(笑)




ブランウンガスから低エネルギーで、水素だけを取り出せると燃料電池にも使えそうだと思ったり。
2008年時点で、海水淡水化装置=逆浸透膜のような技術は、すでに存在するようです。
メモ。

アモルファス↓



アモルファス
https://ja.wikipedia.org/wiki/アモルファス
結晶は、明礬や水晶のようにそれぞれ固有の結晶形態を持っており、morphous である。しかし、急冷や不純物が混じった状態で出来た固体は、時間的空間的に規則的な原子配列が取れず非晶質となり、不定形である。



エコ&エネルギーのまとめ
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ブラウン・ガス(水で走る自動車)関連リンク集
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