「依存症は病気」といわれます。この考え方について説明していきたいと思います。


DSM-5という、世界基準の精神疾患診断統計マニュアルに依存症は含まれています。


そもそも依存症には、色々な原因の考え方があります。

 

①Moral Theory(モラル説)-依存症は弱さやモラルの逸脱によるものという考え方。

 

②Disease Model(病気モデル)-病気であるという考え方。AAの12ステップはこの考え方を採用。

 

③Psychological and Behavioral Theory(心理的、行動学的モデル)-トラウマなどの経験、環境に起因するという考え方。

 

④Epigenetics (エピジェネティクス)-遺伝子の働き方に起因するという考え方。

 

⑤Global Economics and System Structure Model-社会的構図や経済の影響によるという考え方。

 

⑥Neurobiology Model(神経生物学)-脳内のドーパミンシステムの機能発達の問題という考え方。

 


この中で、現在、世界的に精神医療で広く採用されているのは⑥のNeurobiologyモデルです。


脳の機能発達不全という考え方をとっているので、医者は、その機能不全から来る「薬物の抑えられない渇望」や「離脱症状」にフォーカスして治療をしていきます。

 

一方で、Alcohol Anonymous (AA)に代表される自助会では、②のDisease modelを採用しています。病気である事、自分ではコントロールができない事、病気の前では無力である事を認識し、そこからスタートし回復しようとする考え方です。


その一方このDiseaseモデルに反対する意見としては、病気だとする事で本人にどうすることもできない無力感を促し治療する気力を奪ってしまういう意見があります。


又、司法の場では、依存症の人が犯罪に関わり被害者がいたり社会的損害をもたらしている場合、依存症を病気と位置付けて減刑することについて議論があり、Disease modelは採用されにくいと言えます。


ですが上に挙げたAAでは、病気モデルを採用することにより、歴史的に世界的に、多くの依存症の回復に貢献しているという実績があります。


そして、認知行動療法は、⑤脳機能発達のモデルを前提に作られ、この方法は世界的に依存症治療に最も成果をあげている治療法の一つです。


このように、どのモデルを採用するかはそれぞれの場所の目的や役割によって違うといえるでしょう。