薬物を使用しても依存症にならず、治療も受けずにやめられる人がいるのは何故か、という質問をいただきました。
コメント欄と重複する部分がありますが、以下が私なりの回答です。
薬物をやめられるかどうか、それは薬物で得られるドーパミンを、他のことで得ることができると言う事が一つです。
趣味や好きなことなんでもいいのですが、やはり中核になるのは人との繋がりだと言われています。人と繋がっていること、大切な人との時間、家族との日常生活など、人生を営む上で人にはサポートネットワークがあり、その繋がりの中でで幸せホルモンを分泌しています。
そこに薬物が取って代わってしまうと、日常生活から得られる自然に脳内から分泌される絶対量が減ることがわかっています。なので、ますます薬物に頼るということになってしまう。
ですのでその手前で、薬物よりも他の事でドーパミンを出すことを選べるかどうか、だと思います。
なので、治療なしで薬物をやめれる人というのは、そのサポートネットワークを元から自分の人生に持っていることが多いのではないかと思います。
そういうサポートネットワークが、依存性になったり治療する段階より前にあって、なおかつそれが機能しており、活用できる環境があり、本人にそれを選ぶ意思があり、また選べる環境にある、という人は、治療につながる前に回復するのではと思います。
つまりそれは、依存性になった場合でも、そういうサポートネットワークを作っていく事が、いかに大事になってくるかという事にもつなります。
偏見やスティグマなしで人と繋がったり、生きがいを見つけて、その関わりで今まで薬物から得ていた幸せを感じるようになり、薬物をやめられたという人は多くいます。
依存症の治療でピアサポートや自助会を重視するのはそのためです。
自助会の代表的なものにAlcohol Anonymous (AA)があります。
AAについては80年の歴史があり、現在約180カ国で行われていますが、その臨床的エビデンスについては、長年議論されてきました。
しかし2019年の Cochrane Library の研究で、AAはその他のエビデンスベースの治療法(CBTなど)と同等の効果があると報告されています。
そして、依存性を始めとする精神疾患の代表的な治療の一つ、CBT(認知行動療法)もグループで行われる事が多いですので、そこでも人とつながる事ができます。
ドーパミンを薬物で得ていた脳内の回路を変えるには、六ヶ月かかると言われています。
変えられるのです。
ただ、期間が長い。だから途中で挫けてしまう。
それを防ぐために、人と繋がること、仲間を作ることは、スリップの抑止力になり、その原動力にもなります。