消費者金融番長ケン -12ページ目

パチスロで小金持ち()

相川七瀬風の彼女は、アイと名乗った。
 私も咄嗟に「ケン」と自分のことを呼んだ。
アイさんと飲みに行きたいナー。誘ってみようか。待てよ、今日は土曜だからこれから出勤かな?
 「あっ、やった連チャンだー」アイさんはオヤジ打ち(適当にパチスロ機のボタンを押す以外と合理的な打ち方)で、2回目のビックボーナスをゲットした。
 アイさんは、興奮して私の右手に握手してきた。
 日本人離れした白さで華奢な腕だ。
「あの、これから飲み行きませんか?」私の中で何かがパーンと弾けた。
 アイの瞳孔が開いた。

パチスロで小金持ち()

その店は等価交換なので3千枚は6万円になります。
店内サービスで配られたヤクルトを飲みながら「あと350枚出してきっかり6万勝ちにして止めよう」そう思っていた時でした。
「あのー。揃えてもらえませんか?」隣の水商売風の女性が顔を近づけて話し掛けて来た。
ちょっと古い例えだが相川七瀬風の美人だ。
「あっ、はい」私は、精一杯の素っ気ない返事で席を立ち、彼女の背後からボタンを押し一発で7(コンドル)を揃えた。
「わーありがとー。」 七瀬(仮称)は必要以上に喜んでくれた。
「25、6才かな?彼女」

パチスロで小金持ち()

土曜の朝9時、しかも渋谷の繁華街に20名程の開店待ちの人々が並んでいる。
結構人気のあるパチンコ店なんだなと思いつつ私も列の最後部に着いた。
開店するやいなや昨日と同じ台を獲得することに成功した。
7千円程使った頃に最初のビックボーナスを引き当てた。
リーチ目がわからなかったが何となく7を揃えてみたら見事的中。
因みにパチスロは機械側で7が揃う状態(「入った」と言う用語を使います)でなければ、どんなに腕の良い人がボタンを押しても7を3つ揃えられません。
夕方5時頃には3千枚ほど勝っていた。

パチスロで小金持ち

背中合わせに60台程のスロットマシーンが並んでいる中で1つだけ空いていた席についた。
もう600回以上当たりがきていないとデジタル表示されてる。機種はクランキーコンドルだ。
2千円注ぎ込んで直ぐにリーチ目が来た。
それから3時間で5万円程の勝ちを得ました。

帰りに焼肉屋に入り特上カルビ等、高い料理をたらふく食べた。
って言っても金額にして1万円位でした。
初めて焼肉屋に一人で行って感じたのは一人だと焼肉はおいしさ半減します。量も食べられん。
翌日、昨日の勝ち分3万7千円を持って朝一出掛けた。

消費者金融で失恋

アコムの借金5万円は、たった今、ATMで完済した。
僅か2回の振込で・・・。
会社員で独身だった私には楽勝だった。

 スッキリした気持ちで新宿某所のビルを出た。
「ケンさーん!」
エエッ・・・つき合い始めた彼女、レイコが小走りでやってきた。
「なにしてんの?こんなとこで」
もちろんそのビルは消費者金融5件のみが入った、目的のハッキリしたビルだ。
「あれ?」
首を傾げたレイコの態度を消し去るための言訳を探した私は
「急に腹痛になってトイレを借りたんだ」
「そうなんだ。」レイコは軽く流した。

「これから飲みに行かない?」
心拍数の下がらない私は、とっさに誘っていた。

 和風居酒屋で楽しい一時を過ごし、会計のレジの前で悲劇は起こった。
 「ごちそうさま」レイコの顔が曇っていた。

 「あの、これ・・・」レイコは一枚の紙を差し出した。

 「ああーっ!」

 アコムの支払明細であった。会計の時、財布をポケットから出したときに落ちたらしい。
 頭が真っ白になった。

 「こういうとこでお金借りるんだ」暗いトーンで私に迫るレイコ。

 「いや、これは、・・・もう払い終わったから・・・」

 「私、嘘つく人とお金にだらしない人、ダメなんだ」
 その言葉を残して、レイコは走り去った。

 なぜだか分からないのだが、私はその時、彼女を追いかけなかった。
 「このぐらいのことで、二人の中は壊れないさ」
 そんな自信は、もろくも壊れ去った。

 その月をもってレイコは会社を退職し、私の前から姿を消した。

 この時、消費者金融のダーティーイメージを実感できていれば、
 今日の借金まみれの明るい私は誕生しなかったのだが・・・

 彼女が退職した夜、送別会を仮病で欠席して、
 渋谷のパチンコ・パチスロ店に寄り道した。

 パチスロは、本当に久しぶりだ。
 まん丸の月に吠えたくなるような夜であった。