朝10時から朝5時という阿呆みたいな労働時間のバイトに就いてた頃、事務所の女の子が「これ視たいから流してよ」と赤いジャケのVHSを手渡してきたが、それが椎名林檎のPV集であった。
で、視た。
仕事をしながら、なんとなく画面を眺めていたが、ビデオが終わると速攻テープを巻き戻し、何度も繰り返し視た。
私がだ。
そのテープを持ってきた女の子は「そんなに好きなら、暫く貸してあげる」と言い残し、帰って行ったが、私はその後もリピートし続け、視た。
なにがそんなに良かったのかと問われれば、椎名林檎の顔だったと思う。
そのビデオに収録されていた、ここキスも本能も歌舞伎町の女王も幸福論のPVも同じ人間の顔とは思えなかった、つう表現は多少大袈裟だとしても、色んな顔をしていたから惹かれた。
曲も確かに良かったが、曲よりも彼女の顔に釘付けだった。
特に好きだったのは、ここキス(ここでキスして)の顔だった。
出だしでシャウトするように歌ってはいるのだが、目だけは虚ろで何考えてんだかわからん。
しかしながら、一生懸命歌っているのは理解できるから、わけわからんがとにかくよかった・・・。
胸元のロープに気づいた。
裸にすれば、亀甲縛りでもしてるんか、彼女だったらファッションではなく、全身亀甲縛りであっても不思議ではないと感じた。
そんな顔をしていた。
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