2回目の手術後は、植皮した皮がはがれないように、しっかりと固定する。

ずれてしまったらだめなので、入院中は手術した足を地面につけないように過ごす。

トイレなど移動したいときは、歩行器か車いすで行く。

寝ているとき以外は、常に片足は上げた状態だ。

おしりも植皮のために切ったので、痛くないか心配だったが、全然痛くないと言っていた。

良かった。

 

手術後、主治医が交代したわけだが、ここでちょっとしたトラブルに会う。

母は、自分が切ると言わなければ今頃大変なことになっていたこと、

手術前に診察した女医は「わたしが患者さんなら切りません」と言ったことが、

やはり腑に落ちない様子だった。

 

当然だ。手術後、予期していないことになり、

良性だと診断しておいて、手術中に急に悪性だと言われたら、誰でもショックだし怒り心頭である。

 

そして手術後の、病理検査の結果を聞きに行ったときに、主治医とのバトルがあったのだ。

我々家族としては、主治医が交代したといえども、前に担当していた女医に対する不信感・怒りは日に日に増すばかりだった。

この日も心の中には、

「もっと早く切っていれば!こんなことにならなかった!」

「ちゃんと診察しろ!手術前の最後の診断で足を診なかっただろ!」

「なぜダーモスコピーをしなかったんだ?!」

「チクショウめ!」という思いはあった。

 

そんな中、主治医が手術で切り取った腫瘍の病理検査結果を話す。

「1カ所、こぼれ落ちていました。」

 

こぼれ落ちる?

 

つまり、がんは上皮内にとどまらずに、浸潤していると言うことだ。

上皮内であれば、がんであっても、ほぼ100%完治することができる。

だが、浸潤しているとなると話は別だ。

こぼれ落ちたがんがリンパ節や血管などから、他の臓器などに転移したり、再発の心配が出てくる。

がんは、ほとんど浸潤してから見つかるのだが、

母の場合は、上皮内でとどまっていてくれているのではという期待があった。

メラノーマは、とても悪性度が高いがんだ。とにかく早く切らなければいけない。

 

「1カ所、こぼれ落ちていました。」

 

この言葉を聞いた瞬間、母の中で我慢してきたことが吹き出した!

「先生は、『おそらく上皮内でとどまっているから100%ととは言えないけれど、99%治る』と言ったじゃないですか!」

医者「僕は、そんなこと言ってません!」

母と父「言いましたよ」

医者「僕は言ってません!そんなことを言うなら、僕は診ません!」

 

は?

である。

武田鉄矢の台詞をパロディにしたのかい?

目がしばしばする。

 

僕は診ません?

は?

である。

 
医者が患者の気持ちに寄り添わないシーンは、自分の乳がん治療でも多々体験してきが、
自分のことならば、自分で選んだ医者だから仕方がないとあきらめもついたが、
母のこととなると別だ。
どん底に落とされた気分だ。
 
しかし、ひっどい台詞だ!
医者としてというよりは、人として許せない。
 
患者が一番、しんどくて辛い思いをしているときに、「僕は診ません!」だと?
一番言ってはいけない台詞なのでは?
患者には生活があり家族があり過去と未来があり、命や人生に対して様々な覚悟や希望をもちながら精一杯生きている。
それを、患者が診断結果を聞いてショックを受けて少し取り乱したぐらいで、医者がキレるとは・・・。
 
良性だと診断しておきながら急にメラノーマだったと言われたら、患者はどんな思いをするのかわかってない。
悲しくて悔しい・・・・。