高校時代は、何度も映画館に通った。
「ゾンビ」を見るためだけに。
リバイバル上映は大抵3本立てなので、同じ映画を二度見る為には一日がかり。
高3の時に日本でも「ゾンビ」のビデオが出たのだが、これが海外ソフトと同じ別バージョン。
ここまで焦らされるとは、この世にイタリア版の発売を邪魔している何かがあるんじゃないかと考えたくもなる。
それから待つこと約9年、最初の出逢いから実に15年!の歳月を経て、ようやく日本で僕の愛したイタリア版が発売された。
ロメロ監督による初期編集の「完全版」という、嬉しい別バージョンのプレゼントと共に。
ちなみにバンダイから出たLDのライナーには僕のコメントが二つも掲載されたのに、何の粗品も送られて来なかった。
ステッカーをくれるはずなんだけどね。
その後のDVD全盛期は、海外からいろんなソフトが買えるし、特に日本未発売のBOXでは25年後の主演4人の姿を拝見出来て感動しました。
サントラCDは未収録曲も補完されて新装発売、そうかと思うと「デッド・ライジング」なるゲームが出て、映画の舞台同様のショッピングモール内で好き勝手出来るなんて!
これまで何度も夢の中で訪れたあの場所に、いつでも行けるんですよ。
ついでに、アメコミ版のラストについて。
この映画でロメロ最大の失敗は、妊婦の扱い。
わざわざ出しておいて、全く効果的に使っていない。
その欠点を補うのが、コミックのラストカット。
夜明けの空に飛び立つ、妊婦と男を乗せたヘリ。
遥か地平線の彼方へ消えかかるその瞬間、彼女はつぶやくのです。
「今、赤ちゃんがお腹を蹴ったわ・・・」
この瞬間、なんだかジーンと来てしまいました。
まだまだ語ることは、山ほどある。
日本公開版フィルムの謎や、小説の話も、幻の別エンディングについても。
この映画は、今ではあらゆるサブカルチャーに最も影響を与えた作品として語られ、熱狂的なファンを多く持つ、知らぬ者のない存在。
そして僕の青春時代の象徴であり、絶望の中でも最後まで望みを捨てず生きろと、叫び続ける夜明けの光。
「ゾンビ」とは、そういう映画です。
我が最愛の映画、「ゾンビ」の話。
中学時代、日本ヘラルド映画に電話してプレスやスチールを入手した。
対応したお姉さんが親切で、会社迄来たら有料で好きな写真を焼いてくれると言う。
でも当時の僕にそこまでの行動力はなく、今思えば本当に勿体無い話だ。
高校時代に、ついにビデオソフトが海外で出たと知り、二万くらいで購入。
初めて見る瞬間の興奮は、今までで一番だったかもしれない(笑)。
が、再生開始直後、頭の中がパニックになる。
音楽が違う!
それだけじゃない、編集も違う!!
それから映画を見終わる迄、一喜一憂の連続。
普通なら発狂しますよw。
再生終了後も、電源を切る気力も出ない。
ホセ戦後の矢吹ジョーの如く、真っ白・・・
この頃知り合った※という男から、上映当時の宣伝番組を見せてもらう機会があり、これまた興奮状態。
おすピー司会のミニ番組で、なんとその中に日本の上映プリントでカットされた場面が使われていた!
無論イタリア版だから、輸入ビデオとは音楽も編集も違う、僕の求め続ける夢の映像。
その後、彼と一緒に第1回スプラッタームービーフェスティバルのオールナイトへ。
宣伝ではなんとイタリア版のノーカット上映を売りにしていたのだが、当日上映されたのは、これまで通りの日本公開カット版で肩透かし。
何でも、フィルムが間に合わなかったとか。
ホントかねぇ?
そういえば※とは、ブラックな思い出もある。
彼は海賊版ビデオレンタル店の常連客であり、コンプライアンス意識の低い当時はそれら違法店が大手を振るって商売していたのだ。
その経緯で、まだ日本でソフトが出る前に字幕スーパーを入れる仕事を※が聞きつけて来た。
一緒にやろうと言いながら、実質的にはほとんどこちらに頼りきりの※(よくあるな、このパターン)。
僕は小説も持っていたので、わからない部分はデタラメに意訳しながらも頑張った。
かなりの時間を費やしたその翻訳原稿は、海賊版ビデオとして市場に出回った。
で、ギャラはというと、無償。
※も、貰っていないと言う。
それどころか、彼からは完成品のダビング料金迄請求された!
※曰く、‘趣味なんだからいいじゃない’だと・・・
僕にとっては、悪い大人に騙されたのではなく、悪い友人に利用されたという苦い記憶となった。
※とは、その後もいろいろあるのですが、それはまたの機会に。
この映画を好きだと言うと、当時はかなり白い目で見られた。
中学時代にグループノートにその話を書いたら、担任から「健全な趣味を持ちましょう」とコメントされた。
最初に見たのは、昭和54年3月11日。
場所は銀座の有楽座。
TVの特番で見て、絶対行こうと決意していた。
ロードショー中、二回行った。
そのタイトルは、「ゾンビ」。
あまりにも有名なので、あらすじは省略です。
仲間に宣伝しまくりました。
シングルとLPの、両方買いました。
少年時代の感性にはあまりに刺激的な毒、痛烈な皮肉!
そして切なく、乾き切った中にあるほんの少しの優しさや温もり。
ある意味、当時の僕の人生観そのものであり、作品と自分が一体化した唯一の瞬間でした。
周りに理解されず、ズタズタに切り裂かれてるところなんかもね(笑)。
当時のスターログという雑誌に、オリジナルは三時間近いと書いてあり、11歳の少年はいつかそのプリントを見る日を夢見て成長することになるのです。
翌年の10月、最初にTV放送された時は近所の電気店でビデオを録画してもらいました。
デッキも無いのに(笑)。
当時、テープ一本で5千円の時代です。
ところがこの放送、音楽が他の映画のサントラに差し替えられていたんです。
わけわからん。
同じゴブリンだからって、サスペリアはないだろう!
後年知ったのだが、他にも未公開映画「ローマ麻薬ルート大追跡」からも流用されている。
選曲担当は、間違いなくただ者じゃない!!
ヘビメタは好きではないが、プログレかつフュージョン系の本作のサントラは僕のベスト盤となり、なんとしてもオリジナル音源のバージョンを入手すべく決意を固めたのであります。
ここから、長~い巡礼の旅が始まるのでした・・・。
吹き替えの声優に関しては、一級レベル。
内海賢二、石丸博也、津嘉山正種とくればイメージもピッタリ!文句なしです。
ただ、ラストの台詞が勝手に変更されているのが気になりました。
オリジナルは、ヘリの燃料が残り少ないと知った主人公の一言、「いいぜ」(上映用プリントスーパー)という極めてクールなものです。
なのにTVでは、「赤ん坊を育てる場所を見つけなきゃ。任しとけ!」という、同乗の妊婦を気遣う心温まるものとなっていたのです。
内容的には、悪くはないとも思いますけどね。
で、二年後の昭和57年放送時、英語の原音をカセットに録音しようと待っていたら、今回はなんと二ヶ国語放送じゃないんですよ。
どういうこと!?
おまけに、音楽がちゃんとオリジナルに変更されてるし。
思いっきり振り回されてます。
挙句の果てのラスト、「燃料はどのくらいある?」「あと少しよ」「・・・大丈夫だ」
・・・ちっとも大丈夫じゃないんですけど!
当時は今と違い、映画が商品として出回っていませんでした。
次に逢えるのはいつの事か、僕等映画ファンは、作品一つ一つに恋をしていられた幸せな時代でしたね。
あれっ、まだまだ話は続くのに、もうこんなに書いてる。
マニア心に火が点くとこれだから怖い(笑)。



