私が小学生だったころの話だ。

ある休みの日、家には私と母と兄の3人がいた。

私と母はリビングでテレビを見ていた。

兄は一人で部屋にいた。

リビングから兄が風呂場へ風呂掃除をしにいったのがみえた。

ちょうどリビングから風呂場が見えたが、母は奥のソファに座っていたため私だけが目視できる状況だった。

数分たって、誰かが私の名前を呼んでいるに気が付いた。

周りを見渡すと、風呂場から兄が私を呼んでいたのだ。だが何か隠そうとしているようだった。母には聞こえないくらいの声量でしきりに私を呼ぶのだ。

仕方がないから何も言わずに風呂場へ行くと、風呂の蛇口が外れていた。

外れるというより、そこにあるはずの蛇口がなかった。

壁から水道管の穴がみえており、その穴から猛烈な勢いで水が噴き出していた。

兄は噴き出してくる水を抑えるのに必死だった。顔面に飛んでくる水を両手で覆っていたが、手の間をすり抜けて顔面に直撃していた。もちろん全身ずぶ濡れで、防戦一方の兄の姿はまるでアクション映画のワンシーンのようだった。

私は焦って兄に聞いた「なにがあったんや」

兄は泣きそうな声で答えた「もたれかかったら外れた。お母さんには言わんとってくれ。」

まさか私がこの状況をおさめれると思っているのかと兄を疑った。

いやなんでやねん と言い残しダッシュで母の元へ行った。

ことの顛末を伝えたが、母は半笑いで聞き流した。

らちが明かないため母親の手をもって風呂場へ連れて行った。

母の顔色が変わった。急いで兄の加勢に入る。

床に落ちていた蛇口を拾い上げ、力任せに壁の穴へ突き刺す。

壁の穴がふさがるほど水の勢いは増し、二人とも殴られているかのような水圧を全身にくらっていた。

必死の思いで蛇口を取り付けることに成功した。

だがほっとしたのもつかの間、家の中は水浸しだった。

おそらく4日分くらいの風呂の水が一気に放出されていた。

私の実家は団地の2階だったため、被害は1階の同級生Hちゃんの家にまで及んでいた。

天井から水が滴ると苦情が入り、後日手土産をもって兄と母が謝罪にいった。

私は当時、密かにHちゃんへ思いをはせていたのだが、その日以来まったく話せなくなってしまった。