この時期は雑草もですが、虫も元気な時。今年は暖冬で虫の卵の越冬率が高かったのか、例年以上に多いように思い増す。

 無農薬の畑にはモンシロチョウがひらひらと飛んでいて、見つけると網をもっておいかけてしまいます。

 農業を始めた頃、右も左も分からずにとにかく無農薬でやりたいという想いだけでした。その頃は土も出来てなく知識もないので葉野菜、特に白菜やキャベツなど青虫に食べられて何度育ててもレースのカーテン状態。とても売り物にはなりませんでした。何度、全滅させたことか・・。

 農業を始めて三年目でしょうか。初めて無傷のキャベツがひとつ穫れました。自分にとっては奇跡のようなキャベツ、あまりにも立派で五百円でも売りたくないと本気で思いました。

 実際、なんだか売るのがもったいなくて、売るに売れず、かといって自分達で食べるのもなんだし、なんて考えているうちに冷蔵庫の中で乾燥させてしまったのを覚えています。 

 今は土が肥えてきてバランスがとれてきたせいか、それほど肥料をあげなくてもいい野菜が出来るようになりました。不思議なものでそうすることで虫の害が少なくなりました。それでもキャベツを収穫する度にその頃のことを思います。

 北陸は例年梅雨入りが遅いのですが、去年に引き続き今年も6月の前半は雨が全然降りませんでした。

 農家のことわざで「梅雨は一年分の毒が降る」というのがあります。そのくらい梅雨時は高温多湿で野菜が病気になりやすく敬遠されるのですが、水は野菜にとって命。まったく降らないというのも困ったものです。

 こうなると水遣りもひと苦労。どれだけ撒いても焼け石に水といった感じで、改めて雨のありがたさを感じます。

 空調が利いたビルの中で働いていた時はさほど天気も気にならなかったのですが、農家になってから天気と季節を敏感に感じるようになりました。

 農業を始めた時、先輩農家から「目覚めた時雨音を聞いて心からホッとするようになったら、農家として1人前」と言われたことがありますが、今は「雨音はショパンの調べ」というぐらい甘美な音に聞こえます。

 まあ雨も続くと「降りすぎ」と文句も出るので我ながら勝手だと思いますが、天気には逆らえない、ただ受け入れるのみとここに来て感じるようになってきました。

 そしてこの地方はどんなに日照りが続いても白山の雪解け水のおかげで水は枯れることなく用水に流れています。

 小さい頃、母親が毎朝太陽と白山に手を合わせているのを不思議に思っていましたが、今では私も自然と手を合わせるようになりました。

 きゅうり、トマト、茄子に、ピーマン、かぼちゃにオクラ。夏の野菜はカラフルでとてもバラエティに富んでます。収穫していても楽く、季節の恵みに感謝です。

 今はどんな野菜も一年中手に入り、どれが旬なのか分かりづらくなりました。

 かくいう私も農家になるまで、どの野菜が旬か?なんてあまり気にしたことありませんでした。しかし農家になって、時期外れのものを育てるのがどれだけ大変で、そしてエネルギーを使うものであるかを知りました。

 最近「身土不二」という言葉が見直されてきています。

 これは住んでいるところの四里(16km)四方の物を食べていれば幸せになれるということわざで、その地にとれたその時期のものが一番体にいいという意味です。

 実際に、夏に多く穫れる実野菜は体を冷やし、冬多く穫れる根菜は体を温める。そして春の山菜の苦味は冬場固まった血をきれいにする、ということが分かってきました。

 それを初めて聞いた時、「自然はよく出来てるな」と思ったものですが、最近は「旬の野菜を取ることによって体のスイッチが入るのではないか、自然に人間が合わせるようになったのでは?」と思うようになりました。

 おいしくて、栄養価も高い旬のもの。農家になって四季があるってとても贅沢なものだと感じるようになりました。

 まだ本格的な夏にはなってませんが暑い日が続いています。そんな中、畑では秋・冬野菜の準備が始まります。

 といってもさすがにこの暑さだとなかなかその気になれません。農家には想像力も必要だとつくづく感じます。また、あの寒い冬がいつか来るんですね。

 さて、畑の準備は土作りから。肥料を撒いて、畑をトラクターで起こしていきます。 

 肥料が畑になじむのにひつ月ほどかかるので早めは早めに作業をします。風来の場合は少量多品種ですのでどこに何をいつ種を蒔くか、なんてことがパズルのようになり、きっちりとしたスケジュールを立てます。

 梅雨時は雨の間隙をぬっての作業になるのですが、畑の場所によってはシッカリ乾いていなかったりもします。水分が多い畑を無理やり起こした後、急激に乾くとゴロゴロした固まりになり土もカチンカチンになってしまいます。

 そうなると作業もやり直しになるのですが、一度そうなった畑はなかなか元に戻りません。
どんな作物も土がよい状態でなければ育ちません。最初が悪いと、その後の作業がすべて無駄になります。

 これまで何度もこちらの都合を優先して、手痛い目に合いました。

 農業は待つのも仕事だとようやく身にしみてわかってきました。

 うちで飼っているヤギのハナ、今はペットと言ってますが、やはりヤギミルクをとりたいということで交配させて子ヤギを2回産ませました。

 今思うと当たり前なのですが、子ヤギが出来ないと乳は出ないんですよね。

 ところでヤギの出産は恐ろしく安産です。最初はTVで見る牛のお産のように大変で感動の嵐かと思ってました。しかし昼の間、出かけている間に子ヤギが生まれていて、帰ってきた時には生まれたばかりの子ヤギがピョンピョン飛び跳ねていて嬉しくも拍子抜けしたのを覚えています。

 さて、最近ヤギミルクが健康食品として人気だそうです。ヤギの乳は母乳と一番成分が近く、アレルゲンがないのだとか。年配の方でヤギミルクで育ったという方がいらっしゃいますが、そういった理由があったんですね。

 味は少しクセがありますが、素朴で懐かしい味がします。

 そんなヤギミルクですが、乳は血から出来ていると聞いた時は本当に驚きました。

 乳腺で血液から濃縮された成分と、乳腺で作られた成分が合わさり乳になるそうです。一kgの乳をつくるためには、五百リットルの血液の循環が必要なのだとか。
母親はまさに自分の身をていして子供を育てているんですね。

 それまで当たり前のようにもらっていたのですが、それを知ってから「分けていただきます」という気持ちになりました。生命ってホントすごいですね。