お尻の注射小説第7弾です。今回は少しだけ趣向を変えました。

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 村はずれの雑木林に生えた木々にも秋の気配が色濃くなり、その木々の枝を赤城山から吹き下ろす風が容赦なく揺らしていた。その小さな村の役場近くに建てられた家の中の子供部屋で、小学校5年生の武田敦子は風邪をひいて学校を休んで寝ていた。

 10時を少し過ぎたころ、寝ている敦子の傍らに母親の聡子が来て

 「敦子、病院に行くよ、起きなさい」

と言った。

 母親に言われて敦子は布団から顔だけを出して無言で頷くとのろのろと起き上がりパジャマを脱いでピンクの長袖シャツを着ると鼠色のズボンと紺色の靴下を穿き、さらに今年の秋になって買って貰った真新しい赤いジャンパーを着た。

 「お母さん、病院いかなくちゃダメなの?」

 着替えを終えた敦子は頭の両側に垂らした髪の片方の束をいじりながら、横にいた聡子に訊いた。

 「風邪ひいて熱があるんだもの、行かなくちゃダメよ。なんで?」

 敦子と向かい合わせになった聡子は、そういいながら敦子の額に手を当てて

「体温計がないから正確にはわからないけれどひどい熱よ。病院に行かなくては駄目でしょう」

と言った。

「注射、打たれるかもしれないし。注射って痛いんだよ」

 敦子はそう言うと、うつむいた。

 「診療所に行って何時もの様にここに注射してもらおう。早く風邪を治した方が良いでしょう」

 聡子は敦子の横に来ると彼女のお尻を片方の手でぽんぽんとしながら言い、敦子は聡子の方を見ると両手で両手でズボンの上から自分のお尻をさすった。

 母に連れられて家の外に出ると、いきなり風に吹かれた敦子はよろめいて横にいた聡子に抱き着いた。

 「敦子、大丈夫?」

 「大丈夫だよ」

 高熱と頭痛、それにひどい倦怠感を覚えている敦子は、出来るなら家に戻って布団に潜り込みたいところだったが、聡子に逆らえるわけもなく、聡子の方を見ようともせずに前を向いたまま小声で答えた。

 これから敦子が聡子に連れいかれようとしている村立診療所までは大人の足で5分ほどの距離があった。その道のりを敦子は聡子に手をひかれて時折、風にあおられてよろめきそうになりながら歩いた。

 村立診療所は村役場の敷地内に建てられていた。

 この村は3年後に近隣の幾つかの町や村と合併するとことになったと大人たちが話しているのを敦子も聞いてはいたが、それが何を意味するのかなど子供の彼女にわかるはずもなかった。

 この診療所の建物は、この村で代々製材所を営む家の主が、その家の長男が東京帝国大学医学部を卒業して医師になったことを記念して無償で建てて村に寄付したものだった。その長男は今は東京の大きな病院で医師として働いていた。

 敏子が片方の手手で敦子と手をつなぎ、もう片方の手で建付けの悪い引き戸を開けて中に入ると二人の敦子の鼻腔に消毒薬の強い匂いが飛び込んできた。

 二人は診療所の入り口で靴を脱いでから事務室の壁に作られた窓のところに置かれた用紙に聡子が「武田敦子」と名前を書いて、事務員から体温計を受け取って、待合室に入った。

 待合室は6畳間ほどの広さで、中に入ると駅の待合室にも置いてあるような木製のベンチが二つ置いてあり、その時は診察の順番待ちの患者や付き添いの親たちなど数人がベンチに腰掛けていて、それなりに混んでいた。

 待合室の中には消毒薬のにおいと煙のにおいがまじりあって立ち込めていた。

 片隅には薪ストーブが置いてあり、その上に蒸発皿かわりに置かれた薬缶から淡い湯気が出ていた。事務室から大きめの湯飲みを持って出てきた若い女性事務員が無言のまま薬缶の中に水を入れてから、その薪ストーブの口を開けて中の火の具合を確かめると火ばさみを使って燃えかけた薪を均してから、数本の新しい薪を入れて事務室に戻った。

 この村では雪の便りこそ聞こえないが、それでもベンチに座った患者や付き添いの親たちの服装は一様に寒さに備えたそれだった。その患者の中に敦子や聡子の近所に住む千代田成子がいた。成子は去年の春に隣町にある県立高校を卒業、隣町の農協に就職して親の家から職場まで通っていた。 

「成子お姉ちゃん」

敦子は幼いころからよく遊んでもらっていて大好きな千代田成子を見かけると思わず彼女の隣に座った。

成子は聡子たちをみると会釈した。

 茶色のセーターに鼠色のスカートを穿いた成子は傍目にも体調がすぐれないことが一目で分かるくらいに顔色が悪かった。その成子に聡子が

「こんにちは、成子ちゃん、今日は?」

 と声をかけた。

「風邪を引いたみたいなんです、頭が痛いし熱もあって」

「そう、大変ね」

成子は聡子の方を見ると言い、二人の大人の間に挟まった敦子はニコニコしながら成子を見上げて、それに気が付いた成子は、やさしい笑顔を敦子に向けながら

「敦子ちゃんは?」

と言った。成子に言われた敦子は

「私も風邪をひいたみたいなの。頭も痛いし寒気もするの」

と言った。

 敦子たちが診療所について少ししてから、聡子は敦子に渡した体温計を受け取った。それを見た聡子は

「38度4分、結構あるのね。大丈夫だよ、敦子、お尻に注射打ってもらって元気になろうね」

と言い、それを聞いた敦子は思わず聡子に顔を向けながら

「もう、お母さん、敦子が注射されるなんて決めつけないでよ」

と言った。そんな敦子の頭を成子は微笑みながら柔らかい手つきで撫でた。

 敦子たちのいる待合室の壁には東京オリンピックを宣伝する大きなポスターが張られていた。2年後、東京でオリンピックという大きなスポーツ大会が開かれることは敦子も学校で習ってはいた。大人たちが「新幹線」と呼ぶ早い電車が東京と大阪の間を走り始めるらしいと見聞きしないではなかったが、何を聞いても敦子からすると何のことやらだった。

 敦子たちも含めて、待合室で診察の順番を待つ患者や付き添いの親たちは皆、無口で、ただ壁際に置かれた薪ストーブに乗せられた薬缶でお湯が沸騰するかすかな音と風に揺すられた窓が時折立てるガタガタという音が聞こえるだけだった。

 その静かな待合室に村の中学校のセーラー服を着た女の子が母親に付き添われて診察室から出てきた。

 その子はセーラー服のスカートの上から自分の両方のお尻に両手をあてていた。敦子はその子の両頬にある涙の跡を見逃さなかった。

 「あの人もお尻に注射を打たれたんだ」

 敦子は小声で隣に座っいる成子に前を向いたまま言った。

 「そうみたいだね」

 「お尻の注射って痛いよね?」

 「それは、まあ、注射針をお尻に刺されるわけだからね、痛いと思うよ」

 成子は敦子の問いに素直に答えて、それを聞いた敦子は再び黙り込んだ。その時、診察室の中から子供の泣き声が聞こえてきた。それを聞いた敦子は、思わず診察室の中を覗こうとして体を曲げたが、無理だった。

 まもなく、青いセーターを着てジーンズをはいて左胸に「3年生 ++++」と書かれた名札を付けた男の子が付き添いの母親に手を引かれて診察室から出てきた。その子も片方の手でジーンズの上から自分のお尻をなでていた。

 「成子お姉ちゃんは、注射、痛くないの?」

 敦子は成子の方を見ながら言った。

 「痛いに決まってるよ、お尻に針を刺されるのだから。でも、注射してもらった方が風邪を早く治せるからね、仕方がないと思っ    ているの。お尻が痛いのも少しの間だけだしね、早く風邪を治さないとね。お仕事をいつまでも休むわけにもいかないでしょ」

 成子は、再び優しい手つきで敦子の頭を撫でながら言い、敦子も小さく頷いた。そして、その二人のやり取りを聞いていた聡子が

 「ほら、見なさい、みんな注射してもらいたがるのよ、その方が良いのよ、そうよね、成子ちゃん」

 と言いながら成子の方を見て、言われた成子は曖昧にほほ笑んだ。その時、再び診察室の中から子供の泣き声が聞こえてきて、しばらくすると薄桃色の長袖Tシャツの左胸に「6年生++++」と書かれた名札を付けて、その上に薄桃色のカーディガンを着て水色のスカートを穿いた女の子が母親と一緒に待合室に出てきた。その子も両手でお尻をスカートの上からさすっていた。

 「あの人もだ」

 敦子は小声で言い、それを聞いた聡子が

 「何?」

と言ったが、敦子は前を向いたまま

 「何でもない」

と言って黙ってしまった。

 4人目は白いセーターを着てジーンズを穿いた大人の女性で、彼女はお尻を摩りはしないが、その歩き方がぎこちなかった。彼女は敦子の隣に座っている成子と目が合うと軽く会釈して、成子もそれに倣った。

  「成子お姉ちゃん、あの人のこと、知っているの?」

 「同じ高校だったの。あの人の会社がうちの農協の近くにあるから知っているのよ」

 「あの人もお尻に注射打たれたのかな?」

「多分ね、だって、お尻が痛そうだったもの」

 「なんでわかるの?」

 「歩き方で分かるよ、注射を打たれた後、しばらくはお尻が痛いから歩き方も変わるのよ」

 成子の言うのを聞いて敦子は頷くしかなかった。

 その時、看護婦が診察室の出入り口に立って、手に持ったカルテに記載された数人の患者の名前を読み上げて

 「中へお入りください」

 と言った。その呼ばれた患者たちの中には敦子や成子の名前もあった。

 診察室の中に入ると壁際に5個の丸椅子が並べられていて、5人の人たちが座っていた。その人たちの目の前に二つの学校の教室で使われる机が置かれていて、その机の向こう側に大きな衝立が二つ、椅子に腰かけて順番を待っている人たちの視界を遮るために置かれていて、その衝立の向こう側で医師が患者を診察していた。そして、壁際には大きな薬品棚が置かれていて、その横では看護婦がこちらに背中を向けて何かをしていた。

 千代田成子は診察室の出入り口とは反対側の壁際から二つ目の椅子に座った。敦子は空いた椅子がなかったので、聡子と並んで立ったまま診察の順番を待つことにした。

 「はい、肩にお注射しますね」

 敦子から見ると反対側の壁に一番近いところに置かれた椅子に腰かけた、もじゃもじゃ頭ででっぷりと太って黄色い長袖Tシャツを着た中年女の前に2本の注射器を持って立った看護婦が言い、言われた女が

 「はいはい、肩にね」

 と言いながら来ているTシャツの襟を思い切り広げて肩を出した。その時、かすかにパチパチという、女のTシャツの糸が切れる音が聞こえた。

 敦子は、そんな肩の出し方をする大人を初めて見たので、思わず見とれた。しかし、女も看護婦もそんな敦子の様子にはまるで気が付かずに、看護婦は淡々と女の肩に結構な大きさのの注射を2本打ち、その間中、なぜかニタニタしていた。

 肩に注射を打たれた女が椅子から立って看護婦に

 「ありがとう」

 と小声で礼を言ってから待合室に出ていき、空いた椅子には敦子の隣に立って椅子が空くのを待っていた、左胸に「3年生 ++++」と書かれた名札を付けた男の子が座り、隣に付き添いの母親が立った。 

 不意に衝立の向こうから医師の声がして、薬品棚のところで何かをしていた看護婦が慌てた様子でそこに行くと数枚の紙を持って出てきた。そして、その直後、クリーム色の長袖シャツの左胸に「6年生 ++++」と書かれた名札を付けてジーンズを穿いた男の子が付き添いの母親と一緒に衝立の向こう側から出てきた。

 その子も付き添いの母親もどうしてよいのかわからずに衝立のそばに立っていると看護婦がカルテを見ながら

 「お尻に痛いことしますから、順番を待っていてください」

と言ってから、男の子の名前を呼び、呼ばれた男の子は壁側から数えて4番目の椅子から立ち上がると母親と一緒に衝立の中に入っていき、空いた椅子には、そのクリーム色の長袖シャツを着た子が座った。そして看護婦が女の子の名前を呼ぶと5個並べられた椅子の真ん中の椅子に座っている顔が土色になって左胸に「6年生 ++++」と名札を付けた赤いジャージ姿の女の子が、はい、と小声で返事をした。

 「お尻に痛い痛いするからね」

 看護婦はその子を見ながら言い、女の子は何も言わずに椅子からおずおずと立ち上がった。すると彼女の隣に付き添いの母親が来て、その子の名前を呼ぶと

 「机に手をついて。あとはお母さんがしてあげるから」

といい、言われた赤いジャージを着た女の子は、母親の方をちらりと見てから、目の前に置かれた机に肩幅で両手をついた。真ん中の椅子が空いたので敦子が座った。

 お尻に注射を打たれると言われ女の子が椅子から立ち上がるのを見た母親が、娘の横に立ちズボンをおろしてからパンティーをおろして娘のお尻を丸出しにして、次いで、ジャージの上着の裾を持ち上げて、娘のお尻に打たれる注射の邪魔にならないようにした。

 その赤いジャージの女の子の丸出しになったお尻が、丁度、敦子の目の前に来た。

 その子も、その子の母親も薬品棚に向かって、その子のお尻に打つ注射の準備をしている看護婦を看護婦の背中を見つめていた。

 やがて、2本の大きな注射器を片方の手指の間に挟んで持ち、もう片方の手に脱脂綿を持った看護婦がお尻に注射を打たれるのを待っている女の子のところに来た。その子は看護婦が手に持った大きな注射器を目で追って、娘の様子に気が付いた母親に

 「体をまっすぐにしなさい」

と言われて、仕方なさそうに前を向いた。

 「お尻に注射を打つからね。痛い注射だから我慢しようね」

 「はい、大丈夫ですよ、もう小学校6年生だもの」

 看護婦はお尻を丸出しにされて目の前の机に両手をついてお尻に注射を打たれるのを待っている女の子を真ん中に挟んで母親に言い、母親は自分が注射を打たれるわけでもないのに、こともなげに看護婦に言った。

「えーと、では、1本目はここに打ちますね」

「はい、お願いします」

 女の子の横に立った看護婦は少しだけ屈むと女の子の左のお尻をアルコールが沁みた脱脂綿で消毒した。その瞬間、それまでお尻をひくひくさせていた女の子が、お尻の横のくぼみがはっきりと見えるくらいにがちがちにした。消毒を終えた看護婦は、そのがたがちになった女の子のお尻の真ん中あたりに注射を打った。 

 「痛い」

 片方のお尻の真ん中あたりに注射針が刺さった時、女の子が小さく声を上げた。

 「我慢してね」

 「我慢しなさい」

2人の大人に言われて、女の子は何度も頷いた。

 「1本目、終わりましたよ」

 女の子のお尻に注射針を刺してから少しして、看護婦が空になった注射器の先端についた長くて太い注射針を女の子のお尻から引き抜きながら言い、その子のお尻にできた注射痕を圧迫している脱脂綿を母親に引き継いだ。

 「2本目、打ちますからね、痛い注射だから我慢してくださいね」

 「大丈夫ですよ」

 1本目の時と同じように看護婦は女の子を挟んで反対側にいる母親に笑顔で言い、母親も笑顔で答えた。その二人の大人の様子を見た敦子は他人事ながら目の前でお尻を出して注射の痛みに耐えている女の子に同情した。

 「痛い、痛いよ」 

 女の子の片方のお尻を消毒した看護婦が手に持った注射器の針をお尻に刺した時、女の子は大きな声を出して言ったが、看護婦は注射を打つのを止めようとはしなかった。

「我慢してね」

「我慢しなさい」

「はい、2本目も終わりましたよ。よく我慢したね、偉かったよ」

 看護婦がそう言いながら女の子のお尻から注射を引き抜いた。

 看護婦とその子に付き添ってきた母親が、それぞれに女の子のお尻にできた注射痕に脱脂綿を当てて圧迫したものだから、女の子のお尻の真ん中あたりがへこんだ。やがて、女の子のそれぞれのお尻にできた注射痕から出血がないことを二人とも確認して、母親が女の子の服装を直してあげると看護婦に二人して、ありがとうございました、と礼を言ってから、そそくさと診察室を後にした。その時、敦子は女の子が片方の手で涙をぬぐうのを見逃さなかった。

 今、赤いジャージ姿の女の子のお尻に2本の注射を打ち終えたばかりの看護婦は薬品棚のところでガラス製の結構な大きさの注射器と長くて太い注射針をガスコンロにかけられた別々の白い鍋にいれた。それを終えると傍に置いてあった紙を手に持って男の子の名前を呼んだ。すると敦子のすぐ横に座っている男の子の母親が

 「はい、うちです」

と男の子の代わりに返事をした。それを見た看護婦が手に何かが書かれた数枚の紙を持って男の子の傍に来ると

 「お尻に痛いこと2つしますから、準備して待っていてください」

と言って速足で受付に向かい、言われた男の子は椅子から立ち上がると母親が横に来て、息子の穿いているズボンとパンツをおろして息子のお尻を丸出しにした。

 看護婦が受付からもどっ来た時、衝立の向こう側から医師の診察を終えた男の子が出てきて、それを見た看護婦が衝立の向こう側に行き書類を見ながら戻ってきて、男の子の付き添いの母親に

 「お尻に2本しますから」

 と言い、続いて千代田成子の方を見ながら、

 「千代田さん、診察です」

 と言った。

 看護婦に言われた千代田成子は小声で、はい、と返事をしてからおもむろに椅子から立ち上がって衝立の向こう側に消えて、彼女の後ろに看護婦が書類を持ってついていった。お尻に注射を打たれると言われた男の子は成子が座っていた椅子に座り、傍らに母親が立った。

 千代田成子を医師の前に連れて行ってから、直ぐに看護婦は敦子の横でお尻を丸出しにされて注射の順番を待っている男の子のお尻に打つ注射の準備を始めた。

 男の子は壁の方を向いたままで、付き添いの母親が息子の横に立つと何も言わずに看護婦の背中を見続けていた。

 手早く注射の準備を終えた看護婦が、赤いジャージ姿の女の子の時と同様に長くて太い針をつけて、敦子からすると見ていて少し怖くなるくらいの大きな注射器2本を手指に挟んで、もう片方の手指に脱脂綿を挟んで男の子の横に来て少し屈んだ。

 「はい、お尻に2つ痛いことするからね。男の子だもの、我慢出るよね」

 「大丈夫ですよ、もう小学校6年生だもの、注射の痛みぐらい我慢できますよ」

二人の大人はお尻を丸出しにして壁を向いて無言のまま立ち続ける男の子を挟んで笑顔で話した。

 「それでは、1本目はここに打ちますから」

看護婦は片方の手で目の前の男の子の母親側のお尻に数度、触れてから注射を打つ箇所を決めて、そこを軽くつまむと長くて太い注射針を男の子のお尻に刺した。

 お尻に注射を打たれるために立っている男の子の隣の椅子に座った敦子は、男の子の様子に興味津々だったが、見つめてはいけないと思い、両手を両ひざの上にきちんとおいて無言で前を見続けた。

「痛い」

 臍のあたりで両手をもじもじさせ俯いて目を閉じた男の子が小さく声を上げた。

 「我慢してくださいね」

 「我慢しなさい」

大人たちに言われて男の子は頷いた。

 「はい、1本目終わったよ」

 看護婦が1本目の注射を目の前でに立っている男の子のお尻に注射をうって、それを終えて男の子の母親側のお尻から注射針を引き抜いた。その時、男の子は小声で、痛い、と言った。

 付き添いの母親が目の前で立っている息子のお尻にできた注射痕を看護婦から引き継いだ脱脂綿をあてて圧迫した。その様子を見てはいけないと思った敦子は身じろぎせずに前を見続けていたが、ふと自分の視界の端で何かが動いた気がして、つられてそちらを見ると看護婦が男の子の敦子側のお尻を消毒していた。男の子の母親は息子のTシャツの裾を背中に持ち上げて息子のお尻の注射の邪魔にならないようにしていた。

 男の子のお尻の消毒を終えた看護婦は

 「2本目打つよ、この注射も痛いから我慢してね」

 と言いながら男の子のお尻に注射針を刺した。敦子からするとその注射針は怖くなるくらいに長くて太くて先端部がとがっていて、その針の後ろにつけられた注射器も太くて大きかった。

 「痛い、痛いよ」

 お尻に2本目の注射を打たれた男の子は目をきつく閉じてお尻を横のくぼみがはっきりと分かるくらいにがちがちにしながら言った。看護婦が男の子ががちがちにしたお尻に刺した注射針はゆっくりとお尻の中に消えていき、根本が少し見えるくらいの深さまで差し込まれると、看護婦が注射器のピストンをひいて血液の逆流がないことを確かめた。それを終えると

 「お薬入れていくからね」

 と言ってから大きな注射器のピストンをゆっくりと押して男の子の片方のお尻に薬液を注入し始めた。敦子からすると、その注射は看護婦がわざと男の子のお尻の注射の痛みを増すために遅くしているのではないかと思われるほどにゆっくりとしていた。敦子は男の子のお尻の痛みを思い浮かべて、思わず両ひざの上に置いた両手をもじもじさせた。

 「はい、今日の注射はこれで終わりだよ。痛かったよね、よく我慢したね」

 薬液の注入を終えた看護婦は男の子のお尻から注射針を引き抜きながら看護婦は言い、続いて、その子の付き添いの母親がしているのと同じように男の子のお尻にできた注射痕を脱脂綿で圧迫した。少しの間、それを続けていたが、出血がないことを確認すると母親と目顔で合図してそれを止め、母親は息子のパンツとズボンを上げると、ありがとうございました、と看護婦に言ってから、男の子の手を引いて診察室に行った。

 この後、看護婦は敦子の隣で立ってお尻に注射を打たれた男の子に使った注射器を注射針と注射器に分けてそれぞれの鍋に入れた。そして、男の子の名前を呼んで、

 「お尻にですから」

と言うと、呼ばれた男の子は最も壁側に近い椅子から立ち上がり、代わりに付き添いの母親が腰かけて、小柄なその子を膝の上にのせて敦子の方に頭を向けて、壁の方を向いたお尻を丸出しにした。

 少しの間をおいて、その男の子のお尻に打つ2本の注射を作った看護婦が男の子を膝の上にのせている母親の前に屈んで、男の子の背中に向いて、

 「痛い痛いしますからね」

と笑顔で言い、言われた母親は

 「はい、お願いします」

と言った。

 看護婦は母親に言われたまま男の子の片方のお尻の真ん中あたりを消毒すると、そこを少しつまんでから

 「では、注射を打つよ、痛い注射だから我慢してくださいね」

と言いながら男の子のお尻に注射針を刺した。

 注射針を刺した瞬間、母親の膝の上でうつぶせになっていた男の子は無言のまま、くしゃくしゃになった顔を上げた。その口は堅く閉じられていたが、目には涙があった。その様子を見た敦子はズボンの上から自分のお尻を摩った。

  母親の膝の上でうつぶせになった男の子のお尻に2本の注射を打ち終えた看護婦は母親と共に、男の子のそれぞれのお尻にできた注射痕を圧迫していて、それを終えるとが立ち上がりながら

 「はい、痛いことは終わったよ、痛かったね」

と言い、母親は無言で自分の膝でうつぶせになっている男の子を立たせると衣服をなおして

 「ありがとうございました」

と看護婦に笑顔で礼を言った。その傍らで男の子が少しふくれっ面で立っていた。

 男の子のお尻に2本の注射を打ち終えた看護婦は、薬品棚のところに戻るとそれを分解して鍋に入れて、傍に置いた書類に目をやり、男の子の名前を呼んで、痛いことするよ、と言い、呼ばれた男の子が敦子の隣の椅子から立ち上がると傍らにいた付き添いの母親にしがみつき、その腰のあたりに自分の両腕をまわした。母親はそんなわが子のズボンとパンツを下げて、そのお尻を丸出しにした。その時、医師の診察を終えた千代田成子が衝立の向こうから出てきた。

 成子もどうしてよいかわからずに、少しの間、衝立の傍で立っているとそれを見た看護婦が

 「座って待っていてください」

と言ってから慌てた様子で医師のところに行き、言われた彼女は敦子の隣の椅子に座った。

 「成子おねえちゃんは注射しないの?」

敦子は看護婦から成子が何も言われなかったことを不思議に思い、訊いた。

 「どうなんだろう、先生からは何も言われなかったけど」

 「そうなんだ、いいなー、お姉ちゃんは」

  「いいって、なにがそんなに良いのよ?」

成子は敦子の方を見ると、その頭を柔らかい手つきで撫でながら言った。

 「だって、先生が何も言わなかったってことは、きっと注射されないってことだよ。わたしなんかとても痛い注射をお尻に打たれ  るのだもの」

 「そんなの、診察もまだなのに、わからないじゃない」

 成子はこちらを見ながらふくれっ面で言う敦子の言い分を聞いて思わず微笑みながら言った。その時、看護婦が椅子に腰かけていた左胸に「6年++++」と書かれた名札を付けた黄色い長袖Tシャツを着て赤いスカートをはいた女の子と付き添いの母親を医師の前に連れていき、続いて

 「千代田成子さん、お尻に痛いことしまいから」

 と言った。看護婦の言うのを聞いた敦子と成子は互いの顔を見合った。

  看護婦は敦子の隣で母親にしがみつくようにしてお尻を丸出しにして立っている男の子のお尻に打つ注射の準備をして、   その子の母親は無言のまま息子のお尻を片方の手でぽんぽんとして、息子は何も言わずに薬品棚の傍で作業している看護婦を振り返るようにして見続けた。

 しばらくして注射を持って敦子の隣で立っている男の子のところに来た看護婦は、他の子どもたちの時と同じように

 「お尻に2本打ちますから」

 と母親に言ってから、男の子の片方のお尻を消毒の後、注射を打った。2本目の時も1本目と同じように片方のお尻を消毒して注射を打った。その時、男の子は痛いとも言わずに母親のお腹のあたりにつけた顔を大きくしかめた。

 敦子の隣に立ってお尻に2本の注射を打たれた男の子は、母親に服をなおしてもらい、二人は手をつないで待合室に向かった。

 「千代田さん、こちらに来てください」

 看護婦に呼ばれた成子は敦子の目の前に置かれた机の反対側、丁度、敦子の目の前に行き、穿いている鼠色のスカートの中に手を入れるとパンティーをおろしてから片方の手でスカートの裾を腰のあたりまで持ち上げてお尻にかぶされないようにして、少しだけ前かがみになって机に片方の手をついた。その時、敦子と目が合った成子は、敦子に向かって笑顔を向けて小声で

 「大丈夫だよ」

と言い、敦子は何が大丈夫なのかが理解できないまま成子につられて微笑んで頷いた。

 成子も敦子も薬品棚の横で成子のお尻に打つ2本の注射を作っている看護婦の背中を見つめ続けた。

   まもなく注射の準備を終えた看護婦が片方の手指の間に脱脂綿を挟み、もう片方の手に、敦子からすると先端が鋭く尖って恐ろしくなるくらいの太くて長い注射針を付けた大きな注射器を2本持って成子の横に来た。

 「では、お尻に痛い痛いしますからね、我慢してくださいね」 

 「お願いします」

 成子の答えを言い終わらないうちに、看護婦が手早く成子の片方のお尻を消毒して、そのお尻の真ん中あたりの一番盛り上がったところに針を注射針を刺した。

 「うっ」

 お尻に注射針が刺さった瞬間、成子は短く声を出した。

 その時、成子は眉間に大きなしわを寄せて目を固く閉じると口を真一文字にして息を止めていた。

 敦子は、お尻に1本目の注射を打たれている成子を見て

 「お姉ちゃんでも、お尻に注射を打たれると痛いんだ」

 と思った。

 「1本目終わりましたよ」

 看護婦がそう言いながら、成子のお尻から注射針を引き抜いた。

 「2本目打ちますね。どちらに」

 「1本目と同じで」

 「では、こちらに打ちますね、この注射も痛いですから、我慢してくださいね」

 「はい」

 看護婦は成子に言われた通り、彼女の1本目の注射を打ったのと同じ方のお尻を消毒してから、注射針を刺した。その時、成子は敦子の方を向いたまま少しだけお尻を上にあげようとした。

 「動くと危ないですからね。動かないでくださいね」

 「すみません、痛くて」

 「1本目の時より痛い注射ですからね、我慢してくださいね」

 「はい」

 看護婦にそれとなく注意されて成子はわびながら小声で返事した。その時の彼女は目にいっぱいの涙をためて、口角をひくひくさせていた。成子の様子を見た敦子は怖くなって、ズボンの上からお尻を思わずさすった。

 「痛い、です」

 「我慢してくださいね」

 敦子の目の前でお尻に注射を打たれている成子が幾ら看護婦に言っても取り合おうとはしなかった。

 「はい、終わりましたよ、痛い注射でしたね」

 「ありがとうございました」

 2本目の注射が終わり、成子のお尻から針を引き抜きながら看護婦がいい、成子は自分のお尻にできた注射痕を少しだけ圧迫していたが、それも直ぐにやめるとパンティーとスカートをなおしながら看護婦に礼を言った。そして、敦子に

 「では、敦子ちゃん、私は帰るから。お大事にね」

と言って待合室に向かった。その時の成子が片方のお尻をかばうような歩き方をしていることを敦子は見逃さなかった。

 成子がお尻に注射を打たれてからゆっくり歩いて待合室に行き、彼女の後を追うように受付に数枚の紙を持って看護婦が行き、戻ってくると丁度、 医師の診察を終えた女の子が出てきた。それを見た看護婦が医師のところに行くと紙を受け取り出てきて、女の子に注射の順番を待つために椅子に座っているように言い、代わりに

 「武田敦子ちゃん、診察ですよ」

と敦子と付き添いの聡子を医師の前に呼んだ。

 呼ばれた敦子は聡子と手をつないで医師の前に行った。

 「武田敦子です、小学校5年生です。」

 敦子が白衣姿で眼鏡をかけた医師の前に置かれた椅子に腰かけると聡子が早速、医師に敦子の症状などについて話始め、医師は時々、手元に置いた書類に何かを書き記した。

 医師は聡子の話を聞き、敦子の体に聴診器を当てたり、幾つか質問したりして診察を進めた。

 一通りの診察を終えた医師は敦子の症状は流行り風邪と思われること、特に気になるのが高熱と悪寒、そして、強い吐き気だということを告げ、これで診察は終わり、後は看護婦の言うことに従うように言い、衝立の向こう側にいる看護婦の名前を呼び、呼ばれた看護婦は、はーい、と返事はしたがこちら側に来る様子はなかった。

 医師の診察を終えた敦子は、椅子から立ち上がると医師に丁寧にお礼を言ってから聡子と一緒に衝立の向こう側に出た。

 衝立を出てすぐ、敦子は、一瞬立ち止まった。それと言うのも、敦子の直前に診察を受けた女の子がこちら側にお尻をけて、注射や診察の順番を待っている人たちの側を向いて目の前に置かれた机に両手をついている光景を目にしたからだった。

 その時、看護婦がその女の子のお尻に注射を打っていた。

 その女の子の背中側に立った看護婦が

 「痛い注射だからから泣いてもいいんだよ」

と言いながら女の子のお尻に注射を打ち、スカートを持ち上げて注射の邪魔にならないようにしている母親が

 「我慢しなさい」

と言ったが、女の子はべそをかいていた。

 お尻に注射を打たれている女の子の後ろを通って机の前に出たが、5個ある椅子はすべて診察の順番待ちの患者たちが座っていて敦子の座れる場所がなかった。

 敦子たちはどうしてよいかわからずに邪魔にならないように立っていると、お尻に注射を打たれてべそをかいていた女の子のそれが終わり、彼女は片方の手で涙をぬぐいながら、付き添いの母親と一緒に待合室に出た。そのすぐあと、看護婦が女の子の名前を呼んで、診察です、というと村に一つしかない中学校のセーラー服を着た女の子が、はい、と小声で返事をすると椅子から立ち上がり付き添いの母親と一緒に医師の前に行った。椅子が空いたので敦子がそこに座った。

 看護婦がセーラー服の女の子を医師の前に呼んでから受付に向かい、戻ってくると薬品棚の傍に行き、そこに置いてある書類を見て

 「武田敦子ちゃん、お尻に痛い痛いするよ」

 と敦子の方を見ることもせずにいい、言われた敦子が返事をするまもなく

 「はい、わかりました」

と聡子が言った。

 聡子に惹かれて椅子から立ち上がった敦子は、一瞬、立ち止まった。

 斜め前にある机に手をついてお尻に注射を打たれるとすると他の子どもたちや付き添いの大人たちに自分のお尻をみられることになる、そうかといって、机の向こう側に言ってお尻に注射を打たれるとすると自分の泣き顔が皆にみられることになる、それも気が進まなかった。お尻に注射を打たれたからと言って必ず泣くというものでもないとは思うのだが、今日、この病院でお尻に注射を打たれた子供たちは、皆、大なり小なり泣いていた。近所に住む年上の千代田成子もお尻に注射を打たれてとても痛そうにしていた。敦子は、多分、自分も泣くことだろうと思うのだった。

 「敦子、行くよ」

 聡子は敦子の心中など一顧だにせずに机の向こう側に連れて行た。そして、それに敦子の両手をつかせると

 「あとはお母さんがしてあげるよ」

と言いながら、敦子のズボンとパンティーを下げてお尻を丸出しにして、着ているセーターが垂れ下がって注射の邪魔をすることのないように片方の手でそれを敦子の背中あたりまで持ち上げ、もう片方の手で敦子の穿いているパンティーが跳ね上がってお尻を隠すことのないように抑えていた。その敦子は机に手をついたまま顔を伏せていた。

 「敦子ちゃん、お尻に痛い痛いするからね。痛いから我慢してね」

 敦子のお尻に打つための2本の注射を作り終えた看護婦は、それを持って敦子の横に立った。

 「はい、大丈夫ですよ」

 「どこに打ったら良いかな」

 「こちらに」

 「では、ここに打ちますね」

 お尻に注射を打たれる敦子を背中越しに二人の大人が話をして、1本目の注射は敦子の聡子側のお尻に打たれることになり、看護婦が消毒した。敦子は何かが自分の片方のお尻に触れたことは感じだが、振り返って自分のお尻を見る勇気もなく、ただ目を固く閉じて俯いていた。

 「痛い」

 注射針がお尻に刺さった時、敦子は声を上げて、看護婦と聡子が敦子を我慢するように言った。

 「我慢してね」

 「我慢しなさい、もう5年生なんだから、ちゃんとできるでしょ」

 看護婦が敦子のお尻に注射の薬液を注入すると、彼女のお尻にじわじわと痛みが広がった。その時の敦子は俯いて目にいっぱいの涙をためて口を真一文字にしてお尻の痛みをこらえていた。 

 「1本目、終わったよ」

 看護婦が敦子のお尻から注射針を引き抜きながら言い、敦子は内心、ほっとした。

 「2本目、打つからね、この注射は1本目よりも痛い注射だからね、1本目よりももっと我慢してね」

 「そんな、待って、待って」

 「もう、何を言っているのよ、この子は。いいですから、打ってください」

 聡子は目の前でお尻を丸出しにされて机に手をついている敦子を見下ろしながら怒ったような口調で看護婦に言った。

 「はい、では、痛いから我慢してくださいね」

 看護婦はそう言いながら敦子の片方のお尻の最も盛り上がったあたりを消毒してから、注射針を刺した。

 「痛い」

 お尻に注射針が刺さった時、敦子は声を上げると同時に顔を上げて、お尻をがちがちにした。

 2本目の注射が1本目の注射よりも痛みが強いかどうかは敦子にもわからなかった。ただ、片方のお尻を誰かに強くつねられているような痛みは耐え難く、彼女はお尻を思わず横に動かしそうになった。

 「動かないでくださいね、動くと危ないですよ」

 「じっとしてなさい、敦子」

 言われた敦子はお尻を動かして痛みから逃れることはこらえたが、顔を上げて涙を流すことは抑えることができなかった。

 「はい、終わりまたよ、痛かったね、よく我慢したね」

 看護婦が敦子のお尻から注射針を引き抜きながら言った。敦子からするとお尻に注射を打たれたくらいで泣いてしまった自分が情けなかったが、一方で看護婦の言う通り2本の注射の痛みに耐えたことは聡子に褒めてほしいとは思った。

 この後、聡子と看護婦は敦子をまっずくに立たせるとほんの少しの間、その両方のお尻にできた注射痕を圧迫して出血がないことを確認すると、聡子が服をなおしてあげた。その間、敦子は声を上げずに涙を流しながら他の患者や付き添いの親たちと目を合わせないように壁を見つめていた。

 敦子がお尻に2本のとても痛い注射を打たれてから、聡子は彼女の服装を直してあげて、それを終えると、二人は看護婦へのお礼を言うのもそこそこに待合室に向かった。

 受付で清算を終えて敦子は聡子に手をつながれて診療所を後にした。

 来た時と比べて、今は少しだけ風が弱くなっているようだった。その弱い風に吹かれながら二人は家に向かって歩いた。

 敦子は注射を打たれたお尻に覚える違和感が気になって歩くのが遅くなり、そんな彼女を見た聡子は何度か振り返って心配そうに見つめていた。

 家に着いた敦子は聡子に言われたこともあり、さっさとパジャマに着替えると布団に潜り込んだ。布団の中で彼女は、今日のお尻の注射は痛かった、と胸中でつぶやいた。

(完)

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僕は子供のころは風邪を引いては母に病院に連れていかれることが多い子供でした。ですが、これまでの人生で、お尻に注射を打たれている最中の人の顔を真正面から見たという経験はありません(横から見たことなら、子供のころは病院で何度もあります)。

今回は「年上の女性がお尻に注射を打たれてい時の表情を真正面から見る女の子」を主人公にしました。また、小説の舞台も「工藤内科小児科医院」から変えました。なお、「千代田成子」のモデルは僕の中ではいますが、ブログで名前を上げると差しさわりがありそうなので、言いいません。ご想像にお任せします(笑)。