同級生ととある中華屋に来ていた。
小学校以来の再会で話も弾み、
町中華とお酒を楽しんでいた。

中華屋の店主は口数の少ない方で
奥様と思われる方がちゃきちゃきとホールを回していた。

瓶ビールは昔ながらの自分で取って開栓し、報告するタイプの店で居心地もよく2人でお酒が進んでいた。

…気がつくと朝。

頭の中でハテナが浮かんでいた。
さっきまで飲んでいたはずだが…
隣には中華屋の娘が寝ていた。
身体は細く折れそうで頭は小さく
ショートボブが似合う、芸能人でいえば
"あのちゃん"によく似ている。

娘が眠そうに起きて言った。
「昨日は最悪だったよ。自宅で吐いてたから連れ帰ってきたけど、家の中最悪だと思う。」

顔が青ざめた。

記憶がないほど飲んだと言う事実にも驚いたが、まさか自宅で吐き散らし、よそ様にお世話になるとは…

中華屋の夫婦にも謝り倒し、
清掃するため自宅に戻ることにした。
まだ酒が残っているのか足がふらつく。
時刻は夕方だろうか。
勢いのいい自転車にぶつかりそうになりながら、なんとかタクシーに乗った。

自宅は二階建ての安アパート。
1階にある自宅のドアノブを回す。

鍵が開いている…
中を覗くと電気もついている。
なんて不用心な状態で出てきたんだろう。

靴を脱いで中に入る。
かすかに、吐瀉物特有のツンとした匂いがする。

いやそんなことよりも。
見覚えのない家具、見覚えのない靴。
誰かが浴びているシャワーの音。
どうして…?まだ酔っているのか…?

私の家のはず………あれ?

その時唐突に思い出した。

数日前に引越したことを。
娘が言っていた自宅は前の家のことで
今は中華屋の2階の居住スペースに居候していたことを。

酒に溺れた挙句、酔って間違えて前の住所へ帰り、他人の住居に侵入し、吐いたのだ。

青かった顔が白くなる。
なんてことを。
そして今再び住居侵入である。

バレないようにゆっくり後ずさりし、
そっとドアを閉めた。



───起床────