初めに
「人を苦しめるのは自身の信念であり、行動にあらず。」
私達が抱える日々の困難は、実際に存在するものではなく単純に言い換えれば、ただの感情なのです。その良からぬ状況に傷つかれるのではなく、その状況によって湧き上がる様々な悪い感情―ストレスによって害されていると観がられます。そう考えると、その実在しないなにかに四苦八苦するなんて、少し馬鹿らしくなってきませんでしょうか。
紀元前三世紀頃、古代ギリシャのアテネで誕生したのがStoicism、ストア主義と呼ばれる哲学の一種なのです。
二十一世紀の日本人にとってこのような古臭い思想に一体もって価値などあるのでしょうか。
あります。
ストア主義という「哲学」が誕生して何千年後のいま、私達が直面する弊害は根本的に同じものだからです。寧ろ、いまの社会の中暮らしているからこそこのような「哲学」に触れる必要があるのではないでしょうか。
科学を通じて世界の仕組みを理解できることができても、人生においてことの良し悪しを断定するのは不可能、人生においての方向を定めるのは無理です。科学は私達の「生き方」についてなにも教えられないのです。
ストア主義というのはその一つの「生き方」、方向性と考えても良いのではないでしょうか。
ストア主義の三つの教旨
ストア主義において第一に理解しておくべきこととは、とにかく単純で、「素朴」な哲学です。飾り気が無いからこそ、実用性があるとも言える、限りなく頼りになる思想です。
単純故に、この「哲学」を、三つの教えへと容易にまとめります。それら三つの点をさらにまとめて抽出できる鉄則は、「無駄なことに心配をかけるな」、です。
1.自身の限界を知り、力に及ばないものに対しては心配しない。
アメリカではこのような祈りがあります。
「神よ、
変えるべきものを変える勇気を、
そして、
要するに、
例えば明日、上司達にプレゼンを披露するとします。適宜な準備を済ませる限りそれ以上悩んで無駄に睡眠時間を削るというのは、
入院中の親戚の病状に対し、常日頃四苦八苦して体を崩しても、
常に自身の限界というものを弁えておけば、
2.世界の辛さを受け止め、他人への期待は最小限に抑える。
周囲から過剰の期待をしない。苦しみ、悪、
優しい人になるというのは、
このように、ある意味理不尽な期待を抱くことはやめることによって、他人からの優しさ、思いやりをより感謝し、満足をできるのではないでしょうか。
3.Amor Fatiー運命を愛す。
自身が大切にしているものの全ては、
愛用している自転車が今日、盗難にあうかもしれない。
人生において全ては授かったものであり、
別の言い方をすれば、
最後に以上、三つのストア主義の教旨でした。
この思想を実用的に活用するにあたって、理解しておくべき点がひとつあります。
ストア主義というものとは、あくまで一つの教え、「哲学」であり、数ある人生の歩みかたの一つに過ぎません。これが唯一の正しい答えということではなく、他の思想と融合させることなどもできるのではないでしょうか。
それを前提として、ストア主義という、素晴らしく単純で頼りがいのある思想を気軽に、日々の暮らしに活かしていくのも生き甲斐のある人生に繋がるきっかけになるかもしれません。