「チーズはどこへ消えた?」
作:スペンサー・ジョンソン 訳:門田 美鈴
この物語はある″2匹のネズミ″ と″2人の小人″ が迷路にある特別なチーズを探す物語である。
2匹のネズミであるスニッフとスカリー。
スニッフは良く効く鼻でチーズの場所を嗅ぎつけ、スカリーはただひたすら突き進む。そんな単純で効率の悪い方法でチーズを探す2匹。
対して2人の小人であるヘムとホー。
2人は経験から得た教訓や思考とその複雑な頭脳で実に高度な方法でチーズを探していた。
ネズミと小人は毎日毎日必死に歩き回り、何度も行き止まりや迷路に迷いながらも自分たちにとって ″特別なチーズ″ を探していた。
そんなある日、ネズミと小人はついに見つけた、チーズステーションCと名づけたその場所で大量な好みのチーズを。
それから毎朝、ネズミも小人もチーズステーションCに向かい、それぞれの「習慣」ができた。
スニッフとスカリーは毎日早起きをして迷路へと急いだ。
一方ヘムとホーも初めは毎朝早起きをしてチーズステーションCへと向かっていたが、しばらくすると″2人″の日課が変わった。
起きる時間は遅くなり、ダラダラとチーズステーションCへ向かい、迷路には進まず、このチーズは自分たちの物だと思うようになったのだ。
しかしこのチーズはどこの誰が置いていくのかわかっていない…
にも関わらず2人はそこを生活の拠点にし、さらには友達を呼んで分け与えることもあった。
2人のうちホーは思った ″ チーズを手に入れれば幸せになれる″ と。
そんな頃、ある大きな変化が起きた。
チーズステーションCのチーズが無くなっていたのだ…!
2人は困惑し腹を立て、嘆きながら何とかこの事態を分析しようとしていた。
2人にはそれぞれチーズを見つけることに大きな意味があったからだ。
ヘムにとっては人の上に立つためや、丘の上に大きな家をかまえるため、
ホーにとっては精神的な安心や、いつか愛する家族を持つため、そして居心地の良い家に住むためだった。
2人にとってチーズはとても重要だった。
2人はあくる日もあくる日もチーズステーションCを調べ、探し、分析し、いつも同じ答えに辿り着き、うなだれて家へと帰った。
2人は不安に打ちひしがれていた、これから自分たちはどう過ごしていけば良いのだろう、どう未来を切り開けば良いのだろう。
そんな時、ヘロヘロになったホーは思った。″自分のチーズが大事であればある程それにしがみつきたくなる″ と。
ある日ホーは言った、「ネズミたちはどこへ行ったのだろうか」
ヘムにはその疑問が理解できなかった。自分たちの方が賢く考えることできる、自分たちには権利がある、こんなことはおかしいのだと。
… 2人がそんな相談をしている頃、ネズミのスニッフとスカリーの2匹は迷路を進み色々な道を通り、たくさんのチーズステーションを見つけ、しばらくはハズレばかりだったがある時、今までにない程大量で様々な種類のチーズがある ″チーズステーションN″ を発見したのだ…! 2人は歓声をあげ喜びあった。
一方、ヘムとホーは未だチーズステーションCで文句を言い合い、失望のドン底にいた。
しかし小さな ″変化″ が起きようとしていた。
ホーが「ここを出よう!」と言い出したのだ!
それに対しヘムは何のためにここを出るのか、
チーズはきっと…きっと戻ってくる、
それに迷路を進むのは危険だ、迷うかもしれない、何も見つからず餓死してしまうかもしれない、と言った。
ホーは不安を抱きそのまま家に帰った。
次の日2人はチーズステーションCに向かった、今日もまた同じ日々を過ごすのかと思われた。
だがホーはただ事態が好転するのを待つのが嫌になり迷路へと出発することを決めたのだ!
ホーは気づいていた、あのチーズはもう戻ってこないのだと。
ホーはヘムに言った、「あの頃と一緒だよ、ヘムこれが人生だ!人生は進んでいく。僕らも進まなくてはならない」
そう言い残しホーは出発した。
そしてホーは思った、 ″変わらなくては破滅することになる″ と。
ホーは迷路へと出発し、迷路を進んでいくにつれ怖くなった、本当に自分は迷路へと進んで行きたいのだろうか。
同時に後悔した、なぜすぐに立ち上がりチーズを探しに行かなかったのかと。
そしてホーは思った、 ″もし恐怖がなければ何をするだろう″ と。
ホーは考えてみた。
恐怖が役に立つこともある、そのおかげで行動を起こせたのだから。
その一方、恐怖のあまり何も出来ない時もあると思った。
だが彼には覚悟があった。
「遅れをとっても、何もしないよりいい」
「スニッフとスカリーに出来たのなら、私にだってやれるはずだ!」
ホーは改めて、チーズステーションCのチーズは一夜にして消えたわけではないと、チーズは残り少なくなり徐々に古びて美味しくなくなっていたのだと気づいた。
そしてホーは思った、 ″常にチーズの匂いを嗅いでみること、そうすれば古くなってきているのに気づく″ と。
長い時間が経ち、ホーはやっと見込みのありそうな大きいチーズステーションを見つけた! しかし中は空っぽだった。
報われず、投げ出したくなり、不安や孤独にまたも打ちひしがれそうになった時、彼は再び思った。
″もし恐怖がなかったら、何をするだろう″ と。またも恐怖に負けて人に遅れをとっていたのだ。
そしてホーは思った、 ″新しい方向に進めば新しいチーズが見つかる″ と。
ホーは進んだ、暗い小道を。
ホーは死ぬほど怖かったがふと思った。恐怖のせいで悪い方に考えているのだと。
そして恐怖がなければ何をするだろうかとふたたび自分に問いかけた。
気づけば彼は笑みを浮かべていた、心を満たす何かを見つけ、この先に何かがあると気づき始めたのだ。
ホーは気分が良くなってきた。チーズは持っていないしどこへ進んでいるのかも分からないというのに。
そしてホーは気づいた ″ 恐怖を乗り越えれば楽な気持ちになる ″ と。
ホーはどんどん楽しくなっていくのを感じた。
爽快で元気まで出てきた。そしてホーはイメージした、ありとあらゆる好みのチーズの山に囲まれた自分を、それもできる限り細かく。
そしてホーは思った ″ 新たなチーズに出会っていなくても、そのチーズを楽しんでいる自分を想像すればそれが実現する ″ と。
進むにつれホーは失ったものではなく手に入れる物を考え続けた。
ホーは度々見たことのないチーズのカケラを見つけその美味しさに感動していた。
しかし同時に空っぽのチーズステーションを見つけることもあった。
そしてホーは思った ″ 古いチーズに見切りをつければそれだけ早く新しいチーズが見つかる ″ と。
その後ホーは一度チーズステーションCへと戻り、新しいチーズをヘムへ渡したがヘムは受け取らなかった。
「慣れていない新しいチーズは好きじゃない気がする」、
「私は″あの″チーズが好きだったんだ」 ヘムはそう言った。
ホーは寂しかった。だがホーは1つ悟ったことがありそれが嬉しかった、もう恐怖に駆られてはいない、むしろ楽しんでいたのだ。
そしてホーは思った ″ チーズがないままでいるより迷路に出て探した方が安全だ ″ と。
ホーは改めて思った、
″人が思っている事態は、実際は想像するほど悪くはない、自分の心の中に作り上げている恐怖の方が現実よりずっと怖いのだ″と。
以前は不安と恐怖に支配されていた、しかし今は先に進むのに必要なチーズを見つけられるしその先のことも予想している。
全てはチーズステーションCを出てから変わったのだ。
そしてホーは思った、 ″ 従来通りの考え方をしていては新しいチーズは見つからない ″ と。
ホーは迷路を走りまわりながらこれまで学んだことを思い返した。
人は″考えが変わると、行動が変わる″
変化は害を与えるものだと考え、行動しない人もいる。だが新しいチーズを見つけることができれば変化を受け入れられる、と考えることができる。
そしてホーは思った、 ″ 新たなチーズを見つけ、それまでの過程を楽しむことができれば人は進路を変える ″ と。
ホーは不安や恐怖から変化を拒み、チャンスを掴み損ねるところだった。
小さなチーズのカケラを見つけ、小さくとも経験と実績を積み重ね気力と自信を取り戻した。
そしてホーは思った、 ″ 早い時期に小さな変化に気づけばやがて訪れる大きな変化にうまく適応できる ″ と。
ホーは過去から学び、今を一生懸命に進んだ。
永遠に迷路を走りまわるのかと思いかけた矢先、
彼の旅は、少なくともこの旅のこの部分は、ふいに結末を迎えた…
これまでに歩んだことのない道を進み、″チーズステーションN″を見つけたのである…!!
そこは辺り一面見たことのない量と見たことのないチーズの山で埋め尽くされていた。 その全部がどれほどか分かったことではない。彼は心から喜びの歓声をあげた!
そこで思い返した。自分自身を変えたのは何だったのか、餓死するという恐怖か? 確かにそうかもしれない、しかしそれとは別のものだ、それは失敗を認め、弱さを認め、向き合い自らの愚かさをあざ笑えたことだった。そうすれば見切りをつけ、前進することができるのだ。
全ては変化を恐れないことだ。
″物事を簡潔に捉え、柔軟な態度で素早く動くこと″
″問題を複雑にし過ぎないこと、恐ろしいことばかり考えて我を失ってはいけない″
最大の障害は自分の中にある。変えるべきは″自分自身″なのだ。
変化は災難に見えても結局は天からの恵み、変化は時に自らの長所を気づかせてくれる。
ホーは今まで学んできたことをヘムにわかって欲しかった、そして前に進んで欲しかった。
だがそれは既に伝えていたのだ。
ヘムは自分で道を見出さなければならない、居心地の良さから抜け出さなければならない。そんな彼のためにホーはチーズステーションNの1番広い壁にその要点を記した。
「 変化は起きる 」
→チーズは常に持っていかれ、消える
「 変化を予期せよ 」
→チーズが消えることに備える
「 変化を探知する 」
→常に状況を確認すれば古くなったことに気づく
「 変化に素早く適応する 」
→早く見切りをつければそれだけ早く新しいものを見つける事ができる
「 変化を楽しもう 」
→冒険として楽しみ、味わい、自らが成長していることを楽しもう
「 進んで素早く変化し、再びそれを楽しもう 」
→チーズは常に持っていかれる
それから、ホーはまた新たなチーズステーションを探しにちょくちょく迷路へと出かけ、チーズステーションNに戻っては常にチーズやその周辺の状況を確認した。
そんな時、外の迷路で何かが動く音がした…
ヘムがやってきたのだろうか、
彼が角を曲がろうとしているのだろうか…
ホーは心から祈り顔を上げた。
〜エピローグ〜
この「チーズはどこへ消えた?」では2匹のネズミと2人の小人が″様々な危機や挑戦、挫折を経験しながら自分達の追い求めるチーズとは何か、なぜチーズを追い求めるのかに気づいていくお話です。
皆さんはネズミのスニッフとスカリー、小人のヘムとホー、この中の誰を自分と重ねましたか? あなたにとってのチーズとは何でしょうか?
この4分小説がそういったものを見つかられるチャンスになればと思います。









