こんにちはアヴィです。

今日は気まぐれに若い頃、多分18〜22くらいまでに書いたやつをあげます。

短編小説と言えるのかな？

稚拙だなと思う反面、今も凄く耳触りがよく安らぐのは、多分今も昔も自分は自分の根本が変わってないからなんだろうなと思います。

反響などあれば。。。いや無くてもネタに詰まればまた書き溜めてた長編小説のストックもあるので載せるかもしれません笑

本当なんで自分バンドマンなんだろうね。

正直テンプレ的なバンドマンを遠目から見るのは好きですが関わるのはとても苦手なんですけどね、今まで極力避けて通って来ましたけどね、自分がバンドマンになってどうするんだ？と思いますけどね、人生とは不思議なものです。

新たな視点の発見ということなのでしょうか？

ただ言えるのはバンドマンは昔より今の方が勿論ではあるのですが想像以上に多様化しているということです。

こういった変化が人類の進化や文明の進化ということなのでしょう。

素晴らしいと純粋に思います。

まあ数人集まるとテンプレ的なバンドマンだなって思うことは多分少なくないでしょうしある意味そういうのは現代において好ましい部分になっているのかもしれません。

自分はあくまで距離は置いての触れ合いしておきたいというのは主張しておきますが。

自分のペースが一番大事ですよ。

だから周りに合わせられないからとかで悩む必要もないし、折り合いをつけて周りと必要最低限＋妥協できる範囲で融合していれば良いのですよ。

肩の力は抜きましょう。

貴方らしさが一番ステキです。

波形

　真っ白なテラスに真紅のクロスをかけた円形のテーブル。二人が腰を下ろして丁度というような大きさである。椅子は二脚、向かい合うように配置してあったが、装飾過多で白い曲線美を描いているそれは実用にはあまり向かないように思われた。誰もそこに腰を下ろすことを望まない椅子。それは椅子でありながらまるで誇り高い貴族ででもあるように見えた。
「おや、君は本当に何もいらないのかい？上等の紅茶、それによく合う焼き菓子もある。さあ一緒にひと時の安らぎのお茶会を開こうではないか！それとも他になにかするべきことがあるのかい？全く馬鹿げているよ、君には行く当てもない、やるべき役割もないではないか。そんなことはすっかりわかっているんだよ。だから君を誘ったのだ。あえて君に役割という形で与えるとしたら、それは私の僅かな休息時間の相手になってもらうことくらいなのだよ」
　名も無き者に初老の紳士は、既にお茶の準備が整っている席に腰掛けたまま、大仰な仕草で向かいの席を勧める。
　空は晴天、暑くも寒くもない、心地よい気候の上、ここは緑に囲まれた生命力の溢れる庭であった。
　名も無き者はテラスへ踏み出すこともなく、芝が青々と生い茂るその庭の一部となって答える。
「私には行く当てもなければ役割もありません。ですが、それは一向に差し支えないことなのです。役割として私に同席する義務をお与え下さったのは私のことを気にかけて頂いたのか、ただの気まぐれかは存じませんが、私にはそもそも役割など必要ないのですから役割としての義務を受けなくてはならない意味はありません。私はただたまたまここに居合わせてしまっただけの無意味な存在なんですから」
　名も無き者は穏やかとも冷酷とも言える様な無表情を浮かべている。
「ふむ、それはまた奇妙な話ですな。確かに君の今の状態はとても無意味であることを私も承知していいるところだ。だがそれは不変であるものなのかね？恐らく私もある一面から見た場合君と同様に無意味な存在だと言えるだろう。君がその無意味という言葉にどれ程の意味を持たせているのか、私には全く知る由もないことだが、それでも君はここに居るではないか。それはある一面から見た場合意味のあることではないのかね？世の中には運命と宿命というものがあるらしい。一見これは似て非なるものなのだ。宿命は生まれた時一緒に生まれる。だが運命は結果論なのだ。死んで初めて運命を知る。もし君が何らかの要因で既に運命と言うものを悟っていてもそれは運命ではない。君の宿命の中の選択肢でしかないのだ。兎に角もし君が今悟っている運命があるとするなら私はそれがどんなものであるのか大変興味がある。それは君にとって良いものであるのか悪いものであるのか、私はそれを是非お伺いしてみたいものだね」
　紳士はまたもや大仰な仕草で示してみたが、鋭く冷静に名も無き者の真意を計ろうとしている。
　名も無き者はピクリとも表情を変えることなくただ言葉を紡ぐ。
「私には運命だの宿命だのといったものも御座いません。死んで運命を知るとおっしゃいましたが、それは私にはわからないことです。他人を引き合いに出した場合、私はそこに運命を見る事になるのかもしれません。ですが、私は宿命を持たずに生まれてきたのでしょう。ですから運命もそこには有り得ないのです。確かに私はここに存在している。それは紛れもない事実だと言っておきましょう。こうして今会話をしているのがなによりの証拠でしょうから、少なくとも貴方の前には私が存在しているということが言えるのです。でももし貴方が、または他者が、ここで私を目に止めることがなければ私は存在していると言えるでしょうか？私が誰にも意識されない場合、私自身、私の存在を自覚することが出来なくなるのです。私は残っている記憶を元にしてみるといつも一人でした。貴方のように声を掛けてくださる場合は幾度となくありましたが、私は僅かの所属するものも持たず、行く当てもないただの名も無き者です。もうその人達の記憶から私の残像を鑑みるのは不可能なのです。勿論貴方もきっとすぐに私の存在がまるでなかった様に思えてくることでしょう。寧ろこれは白昼夢というやつなのかもしれません。私はただの貴方の想像の産物かもしれないのです。もしくは私が無意識に貴方という登場人物を創作し、私が夢の中を彷徨っているだけなのかもしれません。私は真実というものをまるで信じていませんが、真実というものがもし存在しているのなら、その真実を確かめる方法というのはいったいどこにあるのでしょう？それは己がただ真実を作り出して信じているに過ぎないのです。もしくは個人が作り出している真実が真実の本質なのかもしれませんが」
　名も無き者の音は暫く虚空を舞い溶けて行く。音が解けた世界は僅かに明るさを増したが、それは一瞬だったのかもしれない。
「とりあえずそこの椅子に腰をかけるだけでもどうかね？君を立ちっ放しにさせておくのも落ち着かないのだよ。私は一人でお茶の時間を過ごすから、君はそこに座って君の自由にしていてくれて構わない」
　再度紳士は席を勧めたが、既にお茶を一緒に楽しむということに関しては諦めたようだった。ただそれでも紳士はこの名も無き者とまだ時間を共有したいという思いがあるらしい。
　名も無き者は少々間を置いた後、何も言わず、殆ど音も立てずに短い階段を昇り勧められた席についた。
「やっぱり向い合って座って同じ視線に立った方が断然良い。私は君を見下ろすことも、君に見上げられるのも酷く違和感を覚えてしまっていたものでね。私は君と話さなければならないような気持ちになったのだよ。何故だか私にも良く分からないのだがね。だが、総じて人間というものはかくも曖昧な感情というものをもつ存在なのだから、今深く意味を検討するという無粋な真似はするべきではないはずだ。ただ君はそこに腰を下ろしてくれた。それだけで私は酷く安心したのだよ。これで少なくとも今の君には意味が生まれたことになると思うのだが、君はどう思うかね？」
　紳士は上品な仕草でカップを手に取り紅茶に口をつけた。
「それは貴方によって私は意味を与えられたということになりますね。ですが私自身は一貫して無意味な存在であり、貴方に与えられた意味は私の中では決して意味にはなりえません。きっと貴方も今感じられた意味をすぐに忘れてしまうことでしょう。よしんば覚えていたとしてもその時はきっとそれが意味だと感じられなくなっているはずです。私とはそういうものなのです。貴方は何か私に望んでいらっしゃる。でもそれは見当違いというものですよ。きっと貴方も知っているのではないですか？私がなにも与えられないということを」
「君に望みを持っているというのは確かにそうかもしれない。だが私は君になにかを与えてもらいたいわけではないのだ。いや、でも今会話していることで君に時間というものを与えてもらっているとは言えるのかもしれないがね」
「いえ貴方はそう感じてらっしゃるかもしれませんが、私が貴方に私の時間を与えているというのは全くもって見当違いです。私はただ在るだけです。先ほど貴方もおっしゃったように私はこの状況でも全くの自由であるのです。ただの気まぐれで腰を下ろしただけであり、私が貴方の言葉を受けて答えているのもただの気まぐれであり、なんの意味も無いのですよ」
　その言葉を聴き紳士は少しだけ笑みをこぼした。
「では何故君は生きている？先程話したこれが夢であったとしても、今起こっていることは私にとって紛れもない現実だ。だからそれを教えてくれないか？私の作り出した幻影でも構わない、寧ろそれなら何故私が君のような者を作ってしまったのか、それが知りたいのだ」
　紳士はどこか皮肉にも感じ取れるような声音で問うたが、相変わらず穏やかだった。
「私には行く当てもなければ役割もないのです。ですから死もないのです。もしこの肉体が朽ちてしまっても私に死が与えられることはないでしょう」
　名も無き者は一切変わらぬ表情、声音でそう言うと音を立てることもなく紳士の目の前から消えてしまった。
　初老の紳士はそれを全く不思議に感じることもなく、何かが自分の中で終わってしまったことを悟った。
　ふと一瞬全てが無音になる。
　一迅の風が通り過ぎたとき、全てが元のままになり、変わらず晴れ渡る空を一瞬仰ぎ見た後、静かに目を閉じた。