この日は体と両足を結合させる日だった。
まずはインナーマッスルから、そして骨、最後にアウターマッスルと、内から徐々に外側へ移っていく流れだった。

リアルに作成している分、組みやすさなどの作業性は考慮されていないため、それぞれのパーツの隙を縫って溶着した。

難しいところは熟練のスタッフが手慣れた手つきで実施した。

水泳部のメンバーは周りから見ていた。徐々に完成されていく赤月の実寸の胴体から下半身までが完成した。

本日の工程が終わって自然と拍手が巻き起こった。

 

 

白原がスタッフと何か話しているのを桃山が見た。ゴミのケースを指さして、中の骨や筋肉のサンプルを取り出した。

「え、その失敗したやつ持って帰るの?」

白原は、膝から下の頸骨、腓骨、アキレス腱、ヒラメ筋などの一式を手にしていた。

「あぁ、もういらないらしいから、ちょっと参考にしたくて」

「そう言って、実は元自分の体に愛着でもわいてきたーとか、言うんじゃないでしょうね」

「ど、どういうことだよ」

赤月たちはレーザー溶着の作業を一部代行していたが、最初のうちは半分以上失敗してしまい、

再度そのパーツを3Dプリンターで作り直してもらうことがあったが、

徐々に慣れてきてミスが減り順序通り進めてきた。

大きなプラモデルだから、組み上がっていく過程に達成感もあり、

水泳部のメンバーたちは楽しみながら作業に当たった。

 

特にこの作業にハマったのは坂本だった。

難しいからここの研究班のメンバーがやろうとしていた、

手と足の指の細かい筋肉群も自らやると名乗り出て、

器用な手さばきで小型レーザー溶着機を駆使して完成させた。そこの教授も驚いていた。

 

フィギュアや車のプラモデルを小学生の頃から好きで作っていたようだ。

ここの研究室から熱烈な勧誘を受けていた。

それと並列で頭のパーツのスケジュールが細かく表示されていた。

頭は非常に繊細なため、別室でロボットアームを駆使しながら組み上げていくようだった。
「頭はいらないかと思いましたが、これだけ体側と筋肉が連結しているのが意外でした」

藍葉は教授に話しかけた。

「そう、だから視線の方に体全体が引っ張られることなどがある。

 あと頭の中で完結する表情筋の一部は今回外してる」

一同は大きくうなずいた。

赤月は水波にコソコソと話した。

「なんかすごいショックです…自分の体のことなのに、こんなに知らないことがあるのが…」

「人間の体って小宇宙、身近にあるのに奥が深すぎる…それは人間の脳も一緒だけどね」

水波の小宇宙の発言に、赤月の脳は大いに納得した。

桃山たっての要望で、赤月の体の理解を深めるべく、水泳部の練習後、

その作業の一部をさせてもらうことになった。

水波はこれに藍葉も参加するように連絡をとった。