私は「都議会のドン」内田茂の裏の顔をここまで知っている! | 大和民族連合

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小池氏を阻む「都議会のドン」の壁

国政の与野党対決の構図が持ち込まれた東京都知事選は、政党の支援を受けない小池百合子氏の圧勝で終わった。女性初の都知事となる小池氏が公約に掲げた「東京大改革」。その前に立ちはだかる「都議会のドン」との全面戦争も、もはや待ったなし。小池氏は選挙の勢いそのままに都政改革の旗手となれるか。

 

野田数(教育評論家、元東京都議会議員)

 

 2009年の東京都議選で初当選し、2012年5月に会派から離脱するまで、私は都議会自民党の所属議員だった。その間から今に至るまで、都連幹事長として君臨しているのが内田茂氏である。私が見た内田氏は決して弁が立つほうではなく、自らはめったに発言しない。自分は黙ってじっと座っていて、腹心から意向を伝えたり、内田氏の歓心を買うために回りの議員が進んで発言する状態を作っていく。それが内田氏の手法なのである。

 

 私が初当選する前には、都議会自民党にも派閥があり、議論も活発に行われていたという。しかし2009年の都議選で自民党候補が大量に落選したことで大きく変わってしまった。この都議選は民主党への政権交代が実現した総選挙の1カ月前に行われたため、都議選でも自民党に対して逆風が吹き荒れ、気骨ある議員の多くが落選してしまった。
 

増田寛也氏の選挙事務所を出る自民党都連幹事長の内田茂氏(中央)=7月31日、東京都千代田区(古厩正樹撮影)
増田寛也氏の選挙事務所を出る自民党都連幹事長の内田茂氏(中央)=7月31日、東京都千代田区(古厩正樹撮影)

 しかしその間も現主流派の議員たちは当選し、現首脳部とされる議員たちも、落選したにもかかわらず自民党都連や都議会自民党の役員にとどまったのである。実はこの役員留任が自民党都連の中で大きく問題視され、当時の国会議員たちが排除しようと試みた。だが、彼らもまた政権交代選挙で大半が落選したため、都連所属の国会議員の数も少なくなっていた。

 

 当時の石原慎太郎知事も加わり、石原伸晃都連会長以下、都連の国会議員は落選した内田氏を都連幹事長から外そうとしていた。しかし、都議会議員の数が圧倒的に多く、多勢に無勢であった国会議員と石原知事は都議会議員の抵抗になすすべがなかった。加えて東京都連の幹事長職は、東京都内の各級選挙の公認権を持ち、業界団体に対しての影響力も強いため、小選挙区選出の国会議員は最後まで抵抗しきれなかったのである。そのときの抵抗も内田氏本人が前面に出るのではなく、側近で現議長の川井しげお氏が数少ない国会議員の前で机をバンバン叩いて威嚇していたという。私も会派の控え室で「内田先生じゃないとカネ作れないじゃないか!」と凄んでいるのを聞いたことがある。

 

 その結果、当時内田氏を下ろそうとしていた石原都連会長と平沢勝栄都連総務会長は、もはや逆らえないとあきらめて、今や内田氏のいいなりになってしまった。今回の都知事選でも、一度内田氏に弓を引いた人間が内田氏の歓心を買うために、小池百合子元防衛相を必要以上に攻撃したことも容易に想像がつく。

 

 また、2011年7月1日に自民党所属都議会議員の樺山卓司氏が自殺した後、都議会上層部のご機嫌取りかウケを狙ったのかわからないが、若手の議員たちがこぞって樺山氏の自殺を揶揄するような発言をしていた。さらにベテラン議員たちもまた酒の肴のように冒瀆を通り越した言葉を発していたのである。若手からベテランまで、まるで「ポイント稼ぎ」としか思えないような異常ないじめ方だった。

 

 樺山氏が自殺した時も多くの国会議員に相談したが、誰一人として声を上げてくれる人はいなかった。みんな厄介ごとのように、樺山氏の問題を封印したのである。この自浄能力のない自民党都連が現状のままなら、都民にとっては不利益しか与えないだろう。

 

 東京都議会は首都東京を牽引する議会だから、開かれた議論闊達な場だとお思いの有権者も多くいただろうが、実態はそのようになっていない。都議会を一言で言えば、ムラ社会であり、ムラ議会なのである。議論など一切行われず、とりわけ都議会自民党の所属議員は上層部の決定に追随するだけである。たとえ賛否が分かれる案件も一糸乱れることなく賛成するのは、このような体質によるものだ。本来であれば、政策も自民党内で様々な議論があり、意見集約を経た結果、賛成か反対か判断するはずだが、そのようなプロセスもない。このものを言わせない体質が大きな問題であり、都民からの不信感を呼んでいる。

2016年6月13日、東京都議会総務委員会集中審議で追求される舛添要一東京都知事=東京都庁(撮影・春名中)
東京都議会総務委員会集中審議で追求される舛添要一東京都知事=2016年6月13日、東京都庁(撮影・春名中)

 その一端が現れたのが、舛添要一前知事の公私混同問題に対する対応だ。世論やメディアが早期の辞職を求めていたにもかかわらず、都議会自民党だけが舛添氏をかばおうとしていたのである。特に顕著だったのが、都議会総務委員会の一問一答形式の集中審議で、自民党議員はあらかじめ用意された原稿を読み上げるだけで、厳しい追及を行わなかった。その後の審議でも他の会派が辞職を迫ったのに対し、手心を加えた質問に終始した。この対応が世論の反発を受けて、参院選に影響があってはならないと自民党本部の意向により、舛添氏は辞職を選ぶに至った。自民党都議団の意向は自民党本部や首相官邸が持つ危機感を共有できていなかったのである。それは極端なムラ議会のために、世論に対して無神経であり、都議団内で批判も許されず、自由な議論ができてないことに起因するものだ。

 

 今、都政の様々な面に対して、都民や国民が不信の目を向けている。都の職員も、東京都政推進のため生活向上のために日夜全力で働いている。にもかかわらず、都議会自民党がこのようなレベルだから彼らの足を引っ張っている。だから「東京大改革」を進めなければならないのである。

 

 また都議会議員たちが都民、国民にとって何をしているのか、おそらく見えづらいだろうからこの点を明らかにしていく必要がある。本来、地方議員の仕事は条例を制定することである。しかし、条例を作ることのできる議員はほぼいない。ほとんどが役所側から出てきた条例案を追認するだけの存在でしかないのだ。また議会の質問も、自民党に関して言えば役所の職員が作っているのだ。だから原稿を棒読みするのもそのせいである。もっと言えば、漢字を読み間違える議員もいるから、職員がルビをつけるぐらいなのだ。では、都議会自民党の議員は何をしているのかというと、地域の冠婚葬祭を回り、業界団体の予算要項を聞く。これがメインの仕事になっているのである。本来ならば、地域をくまなく回り、様々な諸課題を条例化するのが仕事のはずなのに、選挙対策ばかりしているのが現状だ。これも改めなければならない。

 

 この数代の知事は議会のコントロール下にあったと言えよう。まずはこれを改革する必要がある。そのためには情報公開を徹底しなければならない。情報公開を徹底し、政策決定のプロセスを透明化し、都民、国民の目にさらさなければならない。今まで東京都議会および東京都政が都民、国民の注目を浴びてこなかったのはマスコミの関心が低かったためでもある。したがって、新知事はマスコミに対して積極的に発信している必要があるだろう。政策決定のプロセスを透明化し、疑惑を持たれる案件を積極的にメディアに発信していくことによって、都民に対しての情報公開が進展するのだ。むろん東京都の情報公開制度の仕組みを変えていく必要もあるだろう。これにより都民、国民にとって都政が身近なものになるはずである。身近なものになれば、都民、国民の間で都政に対する様々な議論が沸き起こり、関心も深まる。そこで都政に対しての新たな意見や要望が増えてくるのではないだろうか。また、不透明な案件に対しての情報提供も増えてくるだろう。これから小池百合子新知事による「東京大改革」が進められることになるのである。(聞き手 iRONNA編集部・松田穣)

 

 

のだ・かずさ 教育評論家。昭和48年生まれ、東京都出身。早稲田大学教育学部卒業後、会社員、国会議員秘書を経て、東京都東村山市議、都議会議員などを歴任した。

 

http://ironna.jp/article/3748?p=1