ご主人様はフルート奏者です。


ご主人様の唇に私の唇を重ねる。

軽く触れるか触れないかの接触に、私の後頭部は痺れました。


以前間接的に味わったご主人様の唾液を、今、直接頂戴しております。

微かに開く唇から、若干早く、浅い呼吸。

それに併せて漏れ出る吐息。


その空気の感触を私の肌で感じ、私自身がフルートになったような、そんな錯覚を覚えました。


再度、唇を重ね、私の舌でご主人様の唇をなぞる。

ご主人様の唇を恐る恐る抉じ開け、私の舌が侵入する。


少しずつ、少しずつ私を受け入れてくれましたね。


そこは、ご主人様の息に、匂いに包まれた完全な密室。

もし、私の全神経が舌に集まっていたなら、そこは正に『全身でご主人様を感じる空間』だったでしょう。


運命の人を探すかの様に私の舌がご主人様の舌を探す。

小さい空間のはずが、控え気味のご主人様の舌を探すのには、なんと広大な空間か。


そして、ついに私の舌先がご主人様の舌に触れた時、あまりの柔らかさに舌先から全身に稲妻が走ったのを覚えております。


それからの私は、ご主人様の舌を離さない様にあらゆる角度から絡め捕りました。

その度に、ご主人様が上げる微かな漏れ声が大変愛おしく、気づけば両手でご主人様の全身を弄(まさぐ)っておりました。私の舌のリズムに併せて。


無意識な私。


そんな様子をご主人様は満足そうな笑顔で眺めていらっしゃいましたね。