早朝の神秘体験とともにうつ病性障害が寛解した一例*
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【抄録】
早朝の神秘体験(夢)とともに1ヶ月半患っていたうつ病性障害が寛解した症例を経験した。それは早朝の夢であった。朝方まで眠れず、朝方、2時間ほど眠ったとき、症例は不可思議な夢を見る。ほとんど夢を覚えない症例にとって、あまりにもリアルな夢であった。
この夢を見た後、激しい両口端の口角炎は完全に消失していた。激しい口角炎が僅か2時間の内に消失することは考え難い。しかし激しい口角炎は早朝に完全寛解していた。
そして症例は30年来の痙攣性発声障害(疑)が寛解したように僅かな力で大きな声が出ることを自覚した。
このように医学的に説明困難なことは臨床の現場に置いてしばしば起こっている。その一例を記す。
【key words】depressive disorder, fantasy, sleep disorder
【症例】42歳、男性
人類の誕生のときの光景が見えていた。朝日を浴びて一人の全裸の女性と思われる人間が野原の中央に横たわっていた。人類の誕生のときであった。朝らしい雰囲気と小鳥の囀りが聞こえていた。
その女性の身体は造り上げたばかりと思われ、皮膚、毛細管に至るまで完璧で傷一つ無かった。皮膚を通して血液の流れ・リンパ液の流れ・細胞の一つ一つなどが鮮やかに見えた。
「人間の身体には元々、病気はない」「病気は社会が出来るとともに憎悪、妬みなどから生まれたものである」という思考が閃光の如く閃いた。
ここで覚醒したらしかった。眩しい朝日が部屋の中に入り込んでいた。「自分は誰だ、ここは何処だ」と思った。しかし、しばらくして、自分の存在と名前を思い出し、また、ここが当直室であることも気付いた。
しばらく頭を休めて時計を見た。朝7時だった。5時頃から眠ったらしかった。最近、うつ病性障害のためか睡眠が取れないでいた。抗うつ薬を大量に飲んでも寝付けない。それ故、朝5時になるまで寝付けなかった。
朝8時頃、起床してからも、ぼんやりとした状態は続いた。今、自分が存在しているのが夢なのか本当なのか、解らなかった。8時半になって同僚が来た。症例は同僚に言った。「朝、起きたとき、自分が誰か解らないことがありますか?」同僚は「ない」と言った。このとき自分の声が全く掠れることなく出ることを覚えた。昨日、当直だったので朝の会議には出席しないで帰宅して良かった。
症例はフラフラとしながらも車の処へ歩いてゆき、車のエンジンを掛けた。足元がふらついていた。最近、マニュアルミッシオンからオートマチックの車に買い換えたこともあり、運転が行い辛かった。
ここはこう、ここはこう、と確かめながら慎重に運転しないと危険であった。
慎重に運転しながらも頭がふらつき危険であったが極力安全運転を心懸け運転した。自宅にはいつものように40分掛かって着いた。
車を運転しながらも「人間はもともと健康であり病気は無い」「病気とは後世に人間の悪い想念が造り上げたものである」という朝に経験した夢(思考)が交錯していた。
【考察】
激しい口角炎(写真)が2時間の内に完全に治癒することは考え難い。口角炎の治癒は夜半から起こっていたと思われる。激しいヘルペス性の口角炎が一夜にして完全に治ることは、うつ病性障害では免疫力が下がる、という実験結果から考えられなくはない。症例のヘルペス性の口角炎は一夜にして完全に治癒している。
この朝、症例の幼い頃から熱心に信じてきた信仰と相容れない思考が生じている。症例には当時、幼い頃から熱心に行ってきた信仰を続けるか、棄教するかの煩悶がその頃、存在していた。それは幼い頃から極めて熱心に行ってきた信仰故に激しい煩悶であった。
1ヶ月前からのうつ病性障害の再発であった。2度目のエピソードであった。1度目のエピソードは3年間続いた。しかし丹田呼吸法で一日で寛解した。1年後、福岡から生まれ故郷の長崎に戻るとき、二つの会社掛け持ちで3ヶ月間休み無しのハードスケジュールを行ったとき過労のため再発した。このうつ病性障害の2度目のエピソードは3ヶ月余り続いた。このとき社長がうつ病性障害を理解してくれなく、給料もカットされ、退職寸前にまで追いやられた。症例はこれも丹田呼吸法で一日または二日で寛解させた。
棄教、それはそれまで生きてきた自分の人生を否定するようなものであった。激しい涜神恐怖がそれに伴っていた。このまま弱いながらもこの信仰を続け、棄教しないで残りの人生を送ってゆくという考えもあった。
それは魔による不可思議体験であったのか、神による不可思議体験であったのか、鑑別が付かない11)。
症例はうつ病性障害はその一晩で、あるいはその早朝に完全寛解したが、社会不安障害、痙攣性発声障害(疑)(spasmodic dysphonia suspect)は軽症化しながらも寛解せずに残っていることが1週間2週間と経つ内に解ってきた。
【文献】
9) Watanabe,T.:Lucid dream: Its Experimental Proof and psychological Conditions. Jouranal of International Society of Life Information Science. Vol 21, No1, 159-165, 2003
10) 渡辺恒夫、蛭川立:「明晰夢の心理条件と心理生理学的実証」.日本心理学会第65回大会発表論文集、43:2001
11)日蓮大聖人御書全集:聖教新聞社、p1989,1998
早朝の神秘体験とともにうつ病性障害などが寛解した一例*
A case of depressive disorder, It remissioned with early morning mysterious and fantastic dream
http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html