背景:内視鏡的スリーブ状胃形成術(ESG: Endoscopic Sleeve Gastroplasty) は過去数年で極めて重要な成功を収めた内視鏡的肥満治療である。そのため、米国および世界で最も確立された肥満治療である胃内バルーン留置術(IGB:Intragastric balloon)とESGを比較することはタイムリーである。最近のメタ解析では胃内バルーン留置術(IGB:Intragastric balloon)は、6か月で総体重減少率(%TBWL: Total Body Weight Loss)は9.7%だが、6か月以降はその効果が減弱すると報告されている。

リアルワールドの多施設研究ではIGBは6か月でTBWLが約11% と報告されている。多施設研究によるとESGは6か月で%TBWLが15.2%で、重大な偶発症は2%(外科的介入なしに管理可能であった)と報告されている。筆者らはESGがIGBよりも減量効果に優れていると仮説を立てた。

 

方法:2015年から2017年にジョンホプキンス大学でIGBまたはESGを受けた患者が対象となった。治療1か月、3か月、6か月、12か月後の体重が記録された。プライマリーアウトカムは%TBWLと偶発症(入院が必要なものに限る)である。

 

結果:IGB患者は47人、ESG患者は58人であった。

患者背景としてIGB群ではESG群よりも男性の割合が少なく、平均BMIが低く、睡眠時無呼吸の割合が有意に少なかった。 Table 1

 

 

%TBWLに関しては、1・3・6・12か月すべてにおいてESGがIGBよりも優れていた。 Table 2, Figure 4 

 

 

IGB群では17%の患者がバルーン抜去を必要とする偶発症(嘔気・嘔吐・腹痛・バルーンの過膨張・バルーンの胃前庭部への非閉塞性停滞)を認め、ESG群では5.2%の偶発症(上部消化管出血と胃周囲の液体貯留)を認めたが、ESG群で有意に少なかった。

 

結論:ESGはIBGよりも減量効果に優れ、また耐久性があり、偶発症が少ないことが示された。

 

 

 

 

背景:欧米と同様日本でも食道腺癌や食道胃接合部腺癌の発生は増加している。筆者らは以前、脈管浸潤・低分化腺癌・病変のサイズが食道腺癌における転移のリスク因子であることを報告した。これらのリスク因子を有さず、癌の深達度が粘膜または粘膜下層(1-500μm)までの患者はリンパ節転移の可能性が低く、内視鏡的治療の理想的な適応となる。筆者らはリンパ節転移のリスク基準を元にして、日本人における内視鏡治療後の食道胃接合部腺癌の長期的予後と異時性癌を評価することを目的とした。

 

方法:日本の13施設(5施設が大学病院、8施設が三次医療センター)において2000年から2011年までに食道胃接合部腺癌(AEGJ)に対して内視鏡治療を受けた患者が対象となり、それらが後ろ向き研究で解析された。

最初の内視鏡治療後の局所再発・リンパ節転移・遠隔転移、5年全生存率、5年疾患特異的生存率、5年間の異時性AEGJの累積発生率を筆者らは調査した。

転移の低リスク患者は、脈管浸潤と低分化腺癌の成分の両方を有さない粘膜癌の患者、癌の深達度が粘膜下層500μm以下で脈管浸潤を有さず、低分化腺癌の成分を有さず腫瘍径が300㎜未満の患者と定義された。

高リスク患者は、低リスクの基準を満たさない粘膜や粘膜下層浸潤の食道胃接合部腺癌(AEGJ)患者と定義された。

 

結果:内視鏡治療(EMRまたはESD)を受けた372人の患者が対象となった。

内視鏡治療別ではEMRが51人、ESDが321人であり、一括切除率(En bloc resection rate)はそれぞれ60.8%、99.1%、

完全一括切除率(R0 resection rate)はそれぞれ49.0%、87.9%であり、両者ともESDの方がEMRよりも有意に高率であった。 Table 3

 

内視鏡治療(EMRまたはESD)を受けた372人の患者が対象となった(277人が低リスク患者、95人が高リスク患者)。 Figure 2

5年累積局所再発率はEMRでは13%、ESD では0.5%であった。 Figure 3.A

 

 

5年全生存率は、低リスク患者(追加治療なし)、高リスク患者(追加治療あり)、高リスクリ患者(追加治療なし)ではそれぞれ93.9%、77.7%、81.6%であった。Figure 3.B

 

5年疾患特異的生存率は、低リスク患者(追加治療なし)、高リスクリ患者(追加治療あり)、高リスクリ患者(追加治療なし)ではそれぞれ100%、94.4%、92.8%であった。

追加治療を受けていない316人の患者における食道胃接合部腺癌(AEGJ)の5年間累積異時性癌発生率は1.1%であった。 Figure.4

 

 

 

結論:リンパ節転移のリスクが低い食道胃接合部腺癌患者において内視鏡治療後の長期的予後は良好であった。日本人の表在性食道胃接合部腺癌患者においてESDは適切で効果的な治療法である。

 

コメント:リンパ節転移のリスクが低い(SM 500μ未満、低分化腺癌の成分を有さない、腫瘍径30㎜以下)食道胃接合部腺癌はESDの長期予後がいい。EMRは一括切除率や完全一括切除率でESDに劣る。

欧米では異時性癌は珍しくなく、3年以内の異時性癌の発生率は15%から30%と報告されているが、今回の研究では5年累積発生率は1.1%ととても低く、その原因として患者背景などを含む以下の点が考えられる。

第一に日本人と欧米人のバレット食道の長さの違いである。LSBEはSSBEと比較して異時性癌のリスクが高く、またLSBEは内視鏡治療後の異時性癌の独立したリスク因子であることが報告されているが、今回の研究ではLSBEは9% だけであった。

第二に日本人のSSBEの長さは欧米人よりも短いことである。杉本らは、SSBEを有する患者の85%が食道胃接合部から10㎜以内のultra-SSBE であると報告しており、内視鏡治療(特にESD)により高リスクの背景粘膜であるバレット食道が切除される可能性が高い。

第三に異時性癌の定義の違いであり、欧米の文献では局所再発を異時性再発に含んでいる。

 

 

 

 

 

 

背景:胃ESDにおいて抗血栓薬内服と腫瘍径40mm以上はESD後出血のリスク因子であることが報告されている。抗血栓薬内服患者数の増加やESD拡大適応を考慮すると今後胃ESD後出血の高リスク患者は増加することが予想される。

内視鏡治療ESDの偶発症(出血や穿孔)を予防する方法として、ポリグリコール酸(PGA)シートとフィブリン糊を用いた被覆法が最近報告されており、PGAシートは外科領域でも縫合を強化する吸収性素材として広く使用されている。滝本らは十二指腸ESD後潰瘍をPGAシートとフィブリン糊で被覆することが遅発性穿孔に対して有効であることを最初に報告した。辻らのpilot studyでは、抗血栓薬内服や腫瘍径40㎜以上の高リスク患者においてPGAシートとフィブリン糊による被覆が胃ESDの後出血率を減少させた(PGA群6.7% vs コントロール群 22.0% p=0.04)と報告された。

筆者らはPGAシートとフィブリン糊による被覆法は高リスク患者において胃ESD後出血を減少させるという仮説を立て、RCTを施行した。

 

方法:胃ESD後出血の高リスク患者(高リスクは抗血栓薬内服または腫瘍径40㎜以上と定義)をPGA群とコントロール群に振り分けられた。

PGA群では、胃ESD後の潰瘍面にフィブリン糊を用いてPGAシートが被覆された。

Figure 1  

 

胃ESD後出血は緊急内視鏡で胃内に凝血塊を認めた状態または、内視鏡的止血術を必要とした状態と定義され、全ての患者はESD後28日間までfollow された。

プライマリーエンドポイントはESD後出血の割合であった。

 

結果:2014年から2016年まで140人の患者が登録され、そのうち137人がintention-to –treat 解析に含まれた(PGA群67人、コントロール群70人)。

胃ESD後出血はPGA群 3人(4.5%)、コントロール群4人(5.7%)で有意差を認めなかった。

Table 2a

 

胃ESD後出血は、コントロール群でPGA群よりも遅い時ご期に認める傾向があった(コントロール群 中間値12.5日 vs PGA群 中間値 2日)。Figure 3

 

 

結論: PGAシートによる被覆は胃ESD後出血に対する予防的効果を示さなかった。

 

コメント:予想に反してPGAシート被覆法は胃ESD後出血の高リスク患者において出血予防効果を示さなかった。Discussion のパートで論じられているが、(コントロール群における後出血患者3人はすべてESD後7日以内に出血しており、PGA群では後出血患者4人はすべてESD後8日以降に出血をしていることから)

PGAシートはlate-phase での出血に対して効果があるかもしれない。佐藤らは抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)または抗凝固薬内服患者において胃ESD後出血はESD施行7日目以降に出現する傾向があると報告している。そのため、PGAシートはこのような高リスク患者に対して効果があるのかもしれない。

 

 

 

 

背景:HBVに対する抗ウイルス薬の有効性は、薬剤耐性HBV変異株の出現により減少することが指摘されており、ラミブジン(LAM)の臨床的利益はrtM204V/1 やrt180M 変異株により80%にも至る抵抗性により相殺される。アデホビル(ADV)単剤療法やLAM+ADV併用療法はレスキュー治療として用いられるが、LAM抵抗性の慢性B型肝炎に対するADV単剤療法は5年間の累積ウイルス陰性化(VR)率は48.8%と報告されている。そのため耐性の頻度がより少なく素晴らしいウイルス陰性化率を有するテノホビル(TDF)やエンテカビル(ETV)が推奨されている。多剤耐性HBVに対しては、ヨーロッパのガイドライン(EASL)ではTDF単剤またはTDF+ETV併用療法が推奨されているが、米国のガイドライン(AASLD)ではTDF単剤が第一選択肢、TDF+ETVが第二選択肢として推奨されている。

筆者らは多剤耐性HBV患者に対するレスキュー治療としてのTDF単剤療法とTDF併用療法(TDF+LAM or TDF+LdT(テルビブジンtelbivudine:LdT) or TDF+ETV)の有効性と安全性について調べた。

 

方法:韓国の8施設の抗ウイルス薬に耐性を有する慢性B型肝炎患者423人(TDF単剤療法174人、TDF併用療法患者249人)を対象とした。Follow- up 期間の中間値は180週間で、ウイルス陰性化(VR:virologic response)は、HBV-DNA<20 IU/ml と定義した。


結果:ウイルス陰性化率はTDF単剤療法群とTDF併用療法群で有意差を認めなかった:48週時点(71.7% vs 68.9%)、96週(85.1% vs84.2%)、144週(92.1%vs92.7%)、192週(93.4%vs95.7%)、240週(97.7%vs97.2%)。 Figure 2

 

 

 

多剤耐性患者において血清HBV-DNA<4.0 log IU/ml、ADV抵抗性に関する変異株がないことはウイルス陰性化と関連性が認められたが、年齢・性別・肝硬変の有無・HBe抗原陽性・腎機能にウイルス陰性化と関連性が認められなかった。 Table 3

 

結論:長期間のTDF単剤療法は多剤耐性HBV患者において、TDF併用療法と比較して非劣性を示した。

 

 

 

 

 

 

 

背景:腸内細菌叢の構成異常(dysbiosis)はIBDの病態の主な環境因子と考えられている。サルモネラやカンピロバクターを含む急性胃腸炎の既往のある患者においてIBDのリスクが高いと報告されてきたが、相反する報告も見られる。筆者らは、スウェーデンの患者データを用いて先行する急性胃腸炎(細菌性・寄生虫性・ウイルス性を含む)とIBDの関係を評価することを目的とした。

 

方法:2002年から2014年までの44,214人のIBD患者(UC 26,459人、CD 13,387人、IBD-unclassified 4377人)を同定し、コントロール群として一般集団から436,507人をマッチさせた。

 

結果:IBD患者の7%(3105人:UC1672人、CD1050人、IBD-UC 383人)、コントロール群の4.1%(17,685人)が胃腸炎の既往があった。IBD患者では先行する消化管感染症(OR 1.64:95%CI 1.57-1.71)、細菌性(OR 2.02:95%CI 1.82-2.24)、寄生虫性(OR1.55:95%CI 1.03-2.33)、ウイルス性(OR1.55 95%CI 1.34-1.79)のオッズが高かった。UC患者では、サルモネラ、大腸菌、カンピロバクター、C.difficileに対する過去の感染の割合がコントロール群と比較して高く、CD患者ではサルモネラ、カンピロバクター、エルシニア、C.dificile、アメーバ、ノロウイルスに対する過去の感染の割合がコントロール群と比較して高かった。過去の胃腸炎は10年以上経過した後でもIBDの発症と関連性が認められた。

 

結論:スウェーデンのデータでは、過去の胃腸炎のエピソードはその後のIBD発症の可能性を増加することが認められた。Misclassification bias を完全に排除できないが、腸管感染症はIBDの発症に寄与する腸内細菌叢の構成異常(dysbiosis)を誘導する可能性がある。

 








 

 

(背景)下部消化管出血(LGIB:lower gastrointestinal bleeding)の29-37%の症例では、患者が抗凝固薬や抗血小板薬を内服している。これらの抗血栓薬内服患者におけるLGIBの臨床的経過や結果に関するデータが少ない。ワーファリンのような抗凝固薬は拮抗薬が使え、直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC)は半減期が短く、中和剤も使用可能となっている。一方で、抗血小板薬は血小板に不可逆的に結合するため、抗血小板薬の作用を直接戻す薬剤はなく、抗血小板作用は血小板の寿命の4-10日間持続する。ACGのLGIBガイドラインでは、2次的予防のためのアスピリンは継続することが推奨されている(上部消化管出血に関するエビデンスから推論されている)。筆者らは、ワーファリン、抗血小板薬、DOACs を内服中で、LGIBにて入院となった患者における再出血、死亡率、心血管イベント、出血による再入院について、これらの薬剤を服用していない患者と比較した。

(方法)英国の病院における下部消化管出血患者(LGIB)2528人を対象とした後ろ向き研究を行った。NSAIDsを併用している患者、抗血小板薬とワーファリンやDOACなどの抗凝固薬を併用している患者、非経口で抗凝固薬を投与されている患者は除外し、抗血小板薬または抗凝固薬内服している917人、いずれも内服していない1218人が対象となった。

輸血が必要になった場合や全身状態が安定してから24時間後にヘマトクリットが20%以上減少した場合を“再出血”と定義した。

再出血による再入院は”退院後28日以内の再出血による入院”と定義した。

多変量解析を用いて、薬剤の種類とLGIB、再出血、死亡率、心血管イベントの関係性を調べ、また抗血小板薬や抗凝固薬を休薬した患者における再出血と心血管の偶発症についても調べた。

 

(結果)抗血小板薬を内服している患者(583人)では抗血小板薬・抗凝固薬(ワーファリン内服患者 232人、DOAC内服患者102人)のいずれも内服していない患者(1218人)と比較して入院中の再出血のリスクが高かった(抗血小板薬単剤内服者 504人 HR 3.57、抗血小板薬2剤併用療法者 79人 HR 5.3)。この出血リスクは5日以下の休薬期間を設けた患者では、休薬しなかった患者と比較しても低くなかった(HR 0.98 :95%CI 0.45-2.17)。心血管イベントは標本数が少なすぎて評価できなかった。

 

 

 

 

(結論)LGIBにおいてワーファリンやDOACなどの抗凝固薬ではなく、抗血小板薬が再出血のリスク増大と関連があった。入院中に抗血小板薬を休薬することは再出血のリスク減少にはつながらず、心血管死の増加につながる可能性がある。

 

(コメント)Discussionにもあるが、ACG のガイドラインでは、”心血管疾患のリスクが高く下部消化管出血の既往がある患者では、2次的予防のためのアスピリンは休薬してはならない”と記載されている。過去の報告では、退院時にアスピリンを休薬した患者とアスピリンを継続した患者の比較では、後者では下部消化管出血の再出血のリスクが3倍高かったが心血管イベントが減少し、全死亡率が3倍も減少した。今回の論文は出血と心血管イベントのジレンマに対する答えを出し、前述のガイドラインを支持する結果となった。

一言でいうと、抗血小板薬は抗凝固薬よりも下部消化管出血の再出血のリスクが高く、出血しても休薬するべきではない。

 

Rapid Response to Vedolizumab Therapy in Biologic-Naive Patients With Inflammatory Bowel Diseases. Clin Gastroenterol Hepatol. 2019
Jan;17(1):130-138.e7. 

(背景)ベドリズマブはリンパ球の表面に発現しているα4β7インテグリンに結合する消化管に選択的なヒトIgG1ヒト化モノクローナル抗体

であり、α4β7インテグリンの腸粘膜アドレシン細胞接着分子-1(MAdCAM-1)への結合を阻害する。べドリズマブがα4β7インテグリンに結合することは、α4β7表現Tリンパ球が消化管組織に入ることを阻害し、炎症を減少させる。

GEMINI試験では、ベドリズマブの導入および維持療法としての効果は中等症から重症のUCやCD患者(TNF製剤ナイーブまたはTNF製剤既往例)において示された。

これまでさまざまなIBD治療薬の効果発現の早さについての研究がないため、過去にTNF-α抗体製剤で治療されたあるいは治療歴のない患者を対象としてベドリズマブに対する臨床的反応の時間的経過が調査された。

(方法)GEMINI 1,2,3の3つのRCTの事後解析が行われた。UC 374人とCD784人が対象となり、患者が報告する症状(UCでは肛門出血・排便頻度、CDでは腹痛・軟便の頻度)を治療2、4、6週間の時点で集計し、ベースラインからのスコア変化の平均および、所定のスコアを達成した患者の割合を報告した。
また早期反応(2週間)に関する因子を同定するために多変量解析を施行した。

(結果)UC患者(全体またはTNF-αナイーブ)では、ベドリズマブ群ではプラセボ群と比較して治療2,4,6 週目で有意に高い割合で所定のスコアを達成した。TNF-αナイーブのCD患者ではベドリズマブ群ではプラセボ群と比較して治療2,4 週目で有意に高い割合で所定のスコアを達成した。


(結論)今回の研究では、ベドリズマブの効果発現の早さ(UC,CD患者において投与開始2週間で症状の開園を認め、6週目までそれが続く)が示された。ベドリズマブは投与2週目で症状改善を示すことから、TNF-αナイーブのUCおよびCD患者においてベドリズマブは第一選択の生物学的製剤となり得る。

(コメント)ベドリズマブは投与2週目で症状改善を認めたということは、他のTNF製剤にない即効性があると思われる。

背景:プロトンポンプ阻害薬のような酸分泌抑制薬は慢性C型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA:direct acting antivirals)との相互作用でDAAの効果を減少させるとされている。筆者らは9施設のphase 2,3 試験のデータを用いて、マヴィレット配合錠(一般名:グレカプレビル水和物・ピブレンタスビル錠)と酸分泌抑制薬を併用している慢性C型肝炎患者における効能と薬物動態を調べた。NS5A阻害剤のレジパスビル(Ledipasvir;LDV)とベルパタスビル(velpastavir;VEL)はph依存性の溶解度を有しているため、ハーボニー配合錠(一般名:レジパスビルアセトン付加物・ソホスブビル錠、SOF/LDV)やエプクルーサ配合錠(一般名:ソホスブビル・ベルパタスビル錠、SOF/VEL)はプロトンポンプ阻害剤(PPI)との併用は勧められていない。しかし、医学的に必要な場合は、エプクルーサ配合錠(SOF/VEL)は低量のPPIであればPPI投与の4時間前であれば投与してもよいとされている。

マヴィレットは、NS5A阻害剤ピブレンタスビル(Pibrentasvir)とNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤グレカプレビル水和物(‎Glecaprevir Hydrate) を有効成分とする経口のC型肝炎治療薬であり、ジェノタイプ1-6の慢性C型肝炎、代償性肝硬変の患者(HIVの共感染や透析を含む高度腎機能障害を有していても可)に対して認められている。また、マヴィレット錠における治療12週間後のウイルス学的著効率(SVR12)は約97%以上であり、副作用による治療中断率が低いとされている。

NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤グレカプレビル水和物(‎Glecaprevir Hydrate)については、PPIのオメプラゾール20㎎との併用で血中濃度の曲線の積分値(面積)であるAUC(Area Under the blood concentration-time Curve) が29%減少し、オメプラゾール40㎎との併用ではAUCが51%減少するとされるが、一方でNS5A阻害剤ピブレンタスビル(Pibrentasvir)はPPIによって影響されないとされている。

その後の解析ではSVR12とグレカプレビル(‎Glecaprevir)の血中濃度は無関係であると報告され、グレカプレビルの濃度は治療閾値をはるかに上回っていることが推測された。しかしながら、ピブレンタスビル(Pibrentasvir)の血中濃度はSVR12の独立した因子である。

 

方法:HCV ジェノタイプ1-6でマヴィレット配合錠を投与された2369人のデータを調べ、酸分泌抑制薬を内服している患者における効能と薬物動態を比較した。これらの患者におけるSVR12が今研究の目的である。高用量PPIは1日にオメプラゾール20㎎以上と定義する。

 

結果:401人(17%)が酸分泌抑制薬を内服しており、263人がPPIを内服していた(109人が高用量PPI,154人が低用量PPI)。SVR12率は酸分泌抑制薬内服患者で97%、非内服患者で97.5%と有意差なかった。同様に高用量PPI、低用量PPI内服患者におけるSVR12率はそれぞれ96.3%、97.4%で有意差を認めなかった。

Table 3

生物学的利用能(bioavailability)はグレカプレビル(‎Glecaprevir)で影響があり、高用量PPI内服患者において41%減少していた。

 

結論:酸分泌抑制薬を併用している慢性C型肝炎患者におけいてもマヴィレット配合錠(一般名:グレカプレビル水和物・ピブレンタスビル錠)は高いSVR12率を示した。

 

コメント:PPIなどの酸分泌抑制薬はハーボニー錠やエプクルーザ錠に影響を与えるが、マヴィレット錠のSVR12率には影響を与えず、PPIとの併用でも安心して使用できると思われる。

 

 

 

 

出典:Timing of Gastrointestinal Bleeding After Implantation of Left Ventricular Assist Devices Associates With Anatomic Location, Presentation, and Management. Clin Gastroenterol Hepatol. 2019 Feb;17(3):448-454

 

背景
心不全に対する定常流型植込型補助人工心臓(continuous-flow left ventricular assist device: LVADs)は消化管出血と関連性がある。筆者らは、補助人工心臓の植え込みと消化管出血のタイミング、出血部位、病態、患者の予後について調べた。

方法
2008年から2015年までに定常流型植込型補助人工心臓の植え込みを受けた患者を後ろ向きに検討した。筆者らは消化管出血の部位、病態、入院期間、輸血の必要性、内視鏡検査までの時間、30日以内の再入院についてのデータを解析した。

結果
22%(271人中59人)の患者に消化管出血を認めた。LVADs植え込みのための最初の入院期間での消化管出血は2回目の入院期間での出血よりも、上部・下部消化管出血の割合が多かった(86.7% vx 50.0% p=0.013)。最初の入院期間での消化管出血は2回目の入院期間での消化管出血よりも、中部消化管出血が少なく(0 vs 20.5% p=0.052)、顕性出血が多く(100% vs 63.6% p-0.006)、入院期間が長く(24日間vs 11日間 p<0.001)、内視鏡検査前の!輸血が多かった(7単位 vs 4単位 p=0.021)。
内視鏡検査までの時間に有意差はなく(2日間 vs2.5日間)、30日以内の再入院にも有意差を認めなかった(6.7% vs 9.3%)。毛細血管拡張症は中部消化管出血の患者に100%認めたが、上部下部消化管出血の患者では48.5%に認めた。

結論
LVAD 植え込みのための最初の入院期間での消化管出血に対しては、小腸の毛細血管拡張症が発達するまでに十分な時間がないという理由で最初に上部・下部消化器内視鏡検査を受けるべきある。
LVAD植え込み後の最初の入院以降に消化管出血を認めた場合は、早急に中部消化管出血の評価をするべきである。

コメント
補助人工心臓は薬物やペースメーカー、通常の外科的手術や薬物治療などの従来の治療によっても改善しない重症心不全の患者さんを対象として行われるが、植込型補助人工心臓は原則心臓移植適応が承認された患者さんを対象として心臓移植待機目的にのみ使用することができる(国立循環器病研究センター病院HPより)。人工臓器45巻3号2016年の秋山らの論文によると、定常流型植込型補助人工心臓(continuous-flow left ventricular assist device: LVADs)は日本では,2015年は単年度で140症例を超 えて、植込み後の生存率に関して消化管出血(GIB)が未解決問題の一つとして挙げられる。長期植込型補助人工心臓患者には18~23%にGIBを合併すると報告されており,欧米では定常流型植込型補助人工心臓患者再入院の主因の一つとして 問題になっている。消化管出血(GIB)は植込型補助人工心臓の継続使用 に必須の抗凝固療法に伴う合併症と考えられてきたが,最近では植込型補助人工心臓患者に特有の動静脈奇形形成や,後天性フォンウィルブランド症候群(acquired von Willebrand syndrome: AvWS)の関与が考えられている。