また会える日の前日に予約を入れた。




出来るだけ仕事終わりの時間をとってあげて、気持ちよく帰宅させてあげたい。そう思っていつもギリギリの時間をとった。


そして、ソライロノートを暇さえあれば広げる日課が続いた。


まずは自分のことをひたすら書いた。会えてる時間だけじゃ伝わらないこと、ボクがここに来ることになったきっかけなど色々綴った。


ボクにとって2度目の青春なんだということも書いた。つまりは未来の見方が違うということ。キミとの未来にはそのさらに向こうに光を見ることが出来ている。そこに向かって走り続けることはボクにとって希望でしかない。もう一度夢をみてもいいんじゃないかという気にさえしてくれる。そんなことをたくさん書いた。


仕事にも身が入った。なんとなくクレーム対応や、流れ作業をしているような日々だったし、家族からも距離を置かれたように感じていたボクは孤独だった。しかし、キミとの未来には計り知れないボクの期待がある。渇いた人生に愛って涙が溢れて、無色に見えていた世界に色がついた。ボクにとって本当に居心地がいいソライロだっていうことを綴った。


今思えば彼女の気持ちは何度も感じたが、間違いなく突っ走っているボクがいた。それが重荷になっていたのかもしれない。


そして、予約をいれた日の当日になった。


彼女はスヌーピーが好きだ。以前にも言ったと思う。ボクは友人と同窓会的な集まりに行く予定の後、彼女に会いに行く予定を立てていた。


その集まりの前、時間が空いたので、ドラッグストアにて時間を潰した。

お風呂好きの彼女のために、目に入ったのはスヌーピーの入浴剤。一つ一つに名言、言葉が綴られていた。これだと思い、手に取って購入した。


同窓会を後に、ボクは急いで彼女の下に向かった。


早めに到着して、ボクはいつも通り部屋でソワソワしながら彼女を待った。


「ヤッホー。」

彼女の声がノックの後、耳に飛び込んできた。

「あ、ヤッホー。笑」

思わず喜びとともにボクは笑顔になった。

「あれ?予約ってもう少し後じゃなかった?」

「早く会いたくて前の用事、少し早く出て来た。会いたくさ。」

ボクは照れ臭い気持ちを溢しながらそう答えた。

「あ、あれ、ノート、ノート。」

「待ってたの?交換日記。」

「うん。楽しみやもん。」

可愛すぎやろと呟いて徐にノートを出した。ノートを入れる入れ物も新調していた。

「あ、かわいい。スヌーピー?嬉しい。」

スヌーピーの給食袋のようなものを彼女に渡すとそう反応した。

その笑顔は無邪気で本当に心からずっと見ていたかった。

そして、いつものように

「ねえ、読んでいい?あ、、めっちゃ文字感覚開けて字大きくしてくれた?」

よみながら彼女は言った。

「うん、目が疲れるって言ってたやん。コンタクトなん、それで初めて知ったし。カラコンだったこともね。」

「あはは。そうそう、これ身バレしないためにも役立つんだよ。」

「そうなんや。そんなに変わる?」

「うん。意外と。あ、目の前で読むの嫌?」

「ううん。全然。答え合わせしてくれるし、それでいいと思うよ。全部俺の気持ちしか書いてないし。」

そう言ってノートに目をやりながら読み聞かせしてくれた。

そこにボクの気持ちを書いてあった。

「俺がいつも来て、何かできることないか探してやってあげる、やってあげたいのは何よりの愛情表現のつもり。本気でキミが大好き。それを言葉以外で表現すると少し気持ち悪いかも。それでもいいかな?キミの愛情表現をいつも探してるんやけど、俺、自信ないからなぁ。」

なんてことを書いてた。そこで彼女の読み聞かせが少し止まった。

「私の愛情表現って伝わってないんやなぁ。最大の愛情表現はここで会えることのつもり。誰よりも楽しみにしてるし、逆に来なかったら、、って不安だよ。」

突表紙もないその言葉にボクは戸惑った。ソライロノートはここまでココロを丸裸にする。嘘がないことがここまでお互いの想いを言い合える。すごいノートだと思った。

「あ、ありがとう。めっちゃ伝わったよ。ありがとう。」

見つめあってお互いの芯から出た笑顔で安心しあった。この笑顔は誰よりも輝いていた。ボクも彼女にとってきっと眩しいモノになれていたのではないかと思う。


お互いのノートを交換した。つまり、ノートは2冊存在した。ボクが受け取るものとボクが彼女に渡すもの。ほんとに交換日記だ。


ボクは次の予約をとって帰るようにこのころからなった。