シャボンまみれの 猫が逃げ出す 午下がり 永遠なんて どこにもないさ

 

中学生の国語の教科書にも掲載された短歌です。

作者は「穂村弘」さん。

歌人ですが、正直なところ穂村弘さんの短歌は、教科書に掲載されたこの一首しか存じません。

これから歌集を読んでみようかな、と思います。

 

にょっ記との出会い

私、学習塾の講師なのですが、国語の授業で前出の一首を教えるんです。
そこでは、全く気に留めることもなく、教えにくい短歌だなあ、くらいにしか思っていませんでした。
(お恥ずかしい。)
 
初めての出会いから、5年は経っていたでしょうか。
日本文藝家協会の「ベスト・エッセイ」(何年かは忘れました。)を読んでいたんです。
そこで穂村弘さんのエッセイと出会いました。
 
(穂村弘ってあの短歌の人か…)なんて思いながら読んでみると、、、
 
不覚!電車の中でクックと笑わされてしまいました。
 
内容はシンプルなもので、
 
穂村弘さんは自宅に着いた瞬間、服を着替えたい
だから、家に着く少し前から、シャツのボタンを外し始めてしまう
それが日を追うごとにだんだんと早まってしまい、
いつの間にやら、家に着くずいぶん手前の時点でボタンを外し終えてしまった
これでは私は変質者ではないか、
 
といったものだったと思います。
 
(お…おもしろい…)
淡々とした語り口で、こんなに面白い話が書けるのか。と軽くショックでした。
 
そして穂村弘さんのエッセイ集を数冊購入「蚊がいる」と「にょっ記」を読んだのでした。
 

おもしろい

とにかくシュールでおもしろいんです。
 
私の笑いのツボは、「ちびまる子ちゃん」なのですが、
マンガで最も笑わせてくれたのがちびまる子ちゃんであれば、
文字でもっとも笑ったのは「にょっ記」です。
 
にょっ記は、現実と空想の間のような日記です。
感覚的には現実:空想=7:3、ちょうど地球の海:陸の比率くらいです。
 
にょっ記 P39「6月10日計算」
ここでもう駄目でした。
部屋で転がりながら笑い震えていると、4歳の息子に「とと、何笑ってるん」と冷静に言われました。
 
下ネタといえば下ネタですが、語り口が絶妙に軽快で、穂村弘さんの真骨頂だと思うんです。
 
にょっ記を読んでから、穂村弘さんの短歌を数首調べました。
 
体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は
 
どちらも現代的かつ、口語的です。
1人でぼそっとつぶやくセリフみたいでもあります。
分かりやすく、どこか切なさを感じてしまいます。
ただ卵置き場って涙落ちる位置にある?と思ってしまうので、もしかすると、このあたりはそういったシュールさも含まれているのかもしれません。
いづれにせよ、穂村弘さんの代表的な歌にはどこか影を感じてしまいます。
その魅力については、今後歌集を見て、見つけていきたいです。
 
ギャグマンガ家ほど現実では寡黙でマジメな人が多い、と誰かが言っていたのを思い出し、
穂村弘さんもエッセイの中では、ひょうひょうとした方だと思われるけど、実際には内省的な部分があり、物事を俯瞰で捉えている方なのかな。
と感じました。
 

ちょっと疲れているときにぴったり

にょっ記に限らず穂村弘さんのエッセイはとにかく読みやすくて、しかも笑える。
普通に生きててこれだけ面白いことがあるんだ。
こんな風に生きていいんだって発見が溢れています。
 
ちょっと疲れたな、って人にぜひ読んでほしいですね。