皆さんこんにちは、或いはこんばんは。

今回ご紹介する映画のテーマは「道」です。

言葉にするとたったの一言ですが、それの持つ意味や使い方は実に様々ですよね。道を歩く、道が交わる、道に迷う、逸れる、探す、選ぶ、つくる、etc.. 即物的な意味と観念的な意味が同居していて不思議な言葉です。さてさて、今回紹介する農民の好きな映画は、息子を失った男がとある道を “辿る” お話です。



The Way

邦題: 星の旅人たち



監督・脚本: エミリオ・エステヴェス
原案: エミリオ・エステヴェス、ジャック・ヒット
制作: エミリオ・エステヴェス、他
制作総指揮: フリオ・フェルナンデス、他
音楽: タイラー・ベイツ
撮影: ファンミ・アスピロス
編集: ラウル・ダヴァロス、リチャード・チュウ

ー Cast ー
トーマス ・エイヴリー (マーティン・シーン)
サラ・マリー・シンクレア (デボラ・カーラ・アンガー)
ジャック・スタントン (ジェームズ・ネスビット)
ヨスト (ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)
ダニエル・エイヴリー (エミリオ・エステヴェス)
and more..

ー Copy ー
さあ、人生の旅に出かけよう

ー Story ー
人生の“道”を見失った初老の男がひとり。アメリカ人眼科医のトム (マーティン・シーン) は、ひとり息子のダニエルの突然の訃報に、途方に暮れる。サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の初日、嵐に巻き込まれ不慮の死を遂げたというのだ。果たしてダニエルは何を想い、旅に出る決意をしたのか?トムはその真意を確かめるべく、亡き息子のバックパックを背にサンティアゴ・デ・コンポステーラへと旅立つ…。


ー Official Trailer ー



本作の主人公、カリフォルニアの眼科医であるトーマス・エイヴリー (トム) は、医者然とした少し堅物な男。対してダニエルは大学の博士課程をやめて「世界を見たい」と自分探しの旅に出た息子。相容れない価値観を持った父子はある時から疎遠になっていましたが、そんな中、突然ひとり息子の訃報を受けることとなった父。価値観は違えど、愛する息子の死に直面し途方に暮れるトム。なぜ独りで?なぜ巡礼の旅などに?受け入れ難い息子の死に気持ちの整理がつかないトムでしたが、火葬に付した息子の遺灰と共に、息子が歩むはずだった聖地巡礼の旅に出ることを決めたのでした。

独りで “道” を歩き始めたトムはその先々で亡き息子の遺灰を撒き、祈る。時折りふとダニエルの存在を感じながら、慣れない道を歩きサンティアゴを目指します。

旅は道連れーーダニエルの死と向き合いながら歩くトムは旅の中で、ダイエットのために巡礼しているというオランダのヨスト、禁煙のために巡礼しているというカナダのサラ、スランプ脱却のために巡礼しているアイルランドから来た作家のジャックと出会い、何時とはなしに彼らと旅を共にするようになっていきます。当初はそのことを不本意に思っていた堅物なアメリカ人・トムでしたが、それぞれに何かを抱えた彼らと道を歩き、交流を深めていく中で、その心持ちは少しずつ変化していくのでした。

この映画は “道” の上で紡がれるヒューマンドラマを軸に構成されていますが、同時に巡礼地の自然風景や歴史的な街並み、そして文化などがとても魅力的に描かれています。そして主題である “道” は、旅、引いては人生のお話でもありますので、きっと共感できるところも少なくないのではないでしょうか。大切な誰かの死と向き合い、人生を見つめ直すロードムービーらしいロードムービー、The Way (星の旅人たち)。農民の好きな映画です。
なお、本作品は Amazon Prime にて日本語字幕版を視聴できます (R6. 4月現在)。

ー Movie Poster ー



ー サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼 ー


その名の由来ーーサンティアゴ・デ・コンポステーラ (Santiago de Compostela) とは、スペインの北西部に位置するガリシア州の都市 (州都) の名前です。語源はスペイン語で、サンティアゴ: 聖ヤコブ (イエスの十二使徒の一人)、コンポステーラ: 星降る野原、2つ並べて “星降る野原の聖ヤコブ” という意味になるのだそうです。9世紀頃にこの地で聖ヤコブのお墓が発見されたことが起源なのだそうですが、つまるところ、キリスト教会における重要な聖地の一つってワケで、サンティアゴ巡礼における最終終着点がここなのです。世界遺産にも登録されているサンティアゴ大聖堂など、農民もいつかは行ってみたいものです。




巡礼路ーー聖地・サンティアゴへと続く巡礼路は実は無数にあるのですが、本作で描かれているルートは「フランス人の道 (Camino Francés)」と呼ばれる、巡礼路の中でも最も人気のあるルート。スペインとの国境近くにあるフランスの村: サン・ジャン・ピエ・ド・ポール (Saint Jean Pied de Port) を旅立ち、標高差1,200mのピレネー山脈を越え、サンティアゴまでは約800kmの道のり。日本で言うと東京から広島まで歩くのと同等の距離。農民は歩けるかなぁ…


It's a long way to Santiago

It's a long way to go~♪


余談ですが、トム (マーティン・シーン) とダニエル (エミリオ・エステヴェス) は、現実世界でも親子なんだそうです。「人間はみなお前の家族だ」という暗示や比喩でなく、血を分けた実の父と子。更にエミリオ・エステヴェスのご子息 (マーティン・シーンのお孫さん) は、劇中でトムたちが立ち寄ることとなるブルゴス (Burgos) という街の、とある宿の娘さんと結婚されていて今もスペインに住まわれているとか。きっとブルゴスでの撮影の裏側では、親子孫3世代のハッピーな宴が開かれていたに違いありません。

 🍷salud~ 



Have a nice trip everyone