だんなさんは、誰にでも優しくて、段取り上手で、常識人。


喧嘩の中で、私は「自分が普通じゃないこともわかってるけど、やりたくないことを我慢してやりたくない」っていうようなことを言った。


だんなさんは、「自分が普通じゃないってわかってるなら、ちょっとは普通になれるよう我慢しろ」みたいなことを言った。


哀しかった。わかってくれないと思った。


もう無理だと思った。


一緒にいる意味もない。


ひとりになりたいって。


ひとりになったら、悲しい思いもせずに、自由になって、進んで行けると思った。


最初に「離婚したい」って言ったとき、だんなさんは怒った。理由も問い詰められた。理由なんて、明確なものがひとつあるわけじゃない、説明できないって思った。色んな積み重ねでもう無理ってなったんだって思った。でも、うまく伝えられなかった。


私はいつもそう。うまく気持ちを言葉にできない。だんなさんはいつも正論を言う。私はいつも言葉では勝てない。喧嘩になると、一方的に怒られてるみたいだった。それが怖かった。


9月にもう1度だんなさんが帰ってくることになって、改めて、「離婚したい」って話した。だんなさんは飲み会終わりでお酒のにおいがした。


最初は穏やかだったけど、途中で「俺の気持ちを考えたことあるのか」って胸ぐらをつかまれた。着ていたシャツをビリってされたから、買ったばかりのユニクロのシャツのボタンが飛んでった。質問には答えなかったけど、だんなさんの気持ちを考えたことないなって思った。あまりに怒っている人を目の前にすると、逆に冷静になるんだな、と思った。


考えたことないって言えばよかったのに、私、まだいい人でいたかったんだな。でも、問われる質問は、はいと答えても、いいえと答えても、どっちを選んでも怒られそうで答えられなかった。


怒っていたけど、「離婚しないでくれ」とは言われなかった。最終的には、了承してくれた。でも、どこかで、「離婚したくない」と言われなかったことに、やっぱり愛されていなかった、と思っていた。