第二回 ディック・マードック&マスクド・スーパースター
忘れてませんよ、このコーナーのネタを考えてるときが、幸せなひと時なんですから。
さて、今度は新日本での名タッグの紹介です。
俺が大好き、マードックおじさんと言えば、これまた、タッグの名手です。
国際プロレス、AWA圏内では、ダスティ・ローデスと、ジ・アウトローズを結成。
ともに、エルボーの名手として、名を馳せました。
新日移籍してからは、ハンセンとのテキサス・ロングホーンズ。
これは、ハンセンの全日本移籍に伴い消滅(号泣)。
その後、アドリアン・アドニスとのコンビで、新日本&WWFの二団体を股にかけ、大暴れ。
スーパー・バイオレンス・コンビとして、MSGタッグリーグでは、決勝に進み、猪木&藤波組に肉薄しました。
WWF認定タッグ・チャンピオンにもなり、ベルトを巻き、MSGでは、藤波&前田のチャレンジを退けていた・・・筈です(うろ覚え)。
日本では、第二回IWGPで、ホーガン&マスクド・スーパースター対マードック&アドニスの特別試合が行われました。
まぁ、試合自体に乗り気じゃなかったんでしょうか、アドニスが、ホーガンのギロチン・ドロップで、あっけなくフォール負け。
ある意味、実に外人同士らしい試合となりました。
この頃のスーパースターは、シングルを中心に、試合をしていました。
しかし、維新軍、UWFがそろって移籍、大量離脱に悩んだ新日本は、起死回生の企画を立てます。
一目で正体かわかってしまうジャイアント・マシーンとそのパートナーのスーパー・マシーンが登場したのです。
その年の年末タッグリーグ戦の豪華な顔ぶれ!
ジャイアント・マシーン&スーパー・マシーン
ブルーザー・ブロディ&ジミー・スヌーカ
ディック・マードック&アドリアン・アドニス
ドスカラス&エル・カネック
アントニオ猪木&藤波辰巳
坂口征二&木村健吾
あと2チームくらい。
維新軍いなくても新日本余裕!とか思っていたら、大事件が発生しました。
マクマホン・シニアから息子のビンスに社長が代わった途端、WWFとの年間契約料が、3倍に膨れあがったのです!
なんと、昭和60年当時で2億円!
この緊急事態で、泣く泣く、WWFとの契約を打ち切った新日本に更なる悲劇が!
アンドレとアドニスが、WWFとの専属契約を結んだため、来日がキャンセルになってしまったのです!
つまり、リーグ戦参加の2チームが消滅してしまうという前代未聞の事態が!
リーグ戦中止の声もささやかれる中、マードックとスーパー・マシーンの中の人は、こんな声明を出すのです。
マードック「俺は別に、スープ(スーパースター)とのコンビでいいぜ」
スーパースター「それでかまわない。俺たちは、誰と組んでもいい仕事するぜ」
そうか、その手が!
ということで、急遽、マードック&スーパースターのコンビが結成されることとなったのです。
結果的には、決勝まで届かなかったんですが、別にそんなの関係ねー!とばかりに、気持ちよくプロレスしていたこのチーム、同大会での二年連続エントリーを決めるわけです。
マーおじさん曰く、『ベスト・パートナーはスープ!』と断言しているだけあって、このチームの安定感は特筆するべきものがありました。
前述のアウトローズは、目立ちたがりのローデスのサポートにも回らねばならない上に、『テキサスの荒くれ者』を演出するために、どうしてもラフ・ファイト中心な試合展開になり、試合が単調になる嫌いがありました。
実績でいえば、WWFタッグチャンピオンにもなったアドニスとのコンビなんでしょうが、この二人、気が乗らないと、本当に、ファイト内容が雑になるので、たまに、『やる気ねーだろ、お前ら』が、透けて見えるときがあり、興ざめしたときがあります。
これは、マーおじさんが、NWAチャンピオンになれなかった理由の一つなんですが、本当にムラッ気が多い。
その日のテンションで、試合をあっさり片付けてしまうので、試合の出来不出来が激しかったりします。
そこで、スーパースターです。
この人の根が真面目な事といったら、すごいです。
大量離脱で、観客動員数が激減した新日本に、『ファンの皆さんが、外人に話しかけてくれやすくなるように、簡単な英会話教室を開こう!』と提案、実際に、会場の片隅で、ホワイトボード並べて、『サインのねだり方』『一緒に写真をとってください』といった授業を行ったくらいです。
レスラーになる前は、教職についていたそうですから、なんとなく納得してしまうんですが。
だから、マーおじさんが、試合中に、「なぁ、今日は暑いから、そろそろ終わらせて、ビール飲みに行こうぜ」とか言い出すと、「じゃあ、終わらせてくるから、コーナーで休んでてくれ」とか言い出して、結局、試合のほとんどをコントロールして、マーおじさんのブレーンバスターにつないで、いいところを譲り、結局、チームとしての価値をあげていくという、実にいいサポート役なわけです。
これによく似たチームが、「武藤&馳」ですね。
天才肌でひらめきとセンスで試合を組み立てる武藤とマードック、堅実で理詰めなレスリングでサポートしながらも、自分の色を主張する馳とスーパースター。
タイプが違う二人が組んで、成功した例だと思います。
スーパースターが、WWFに引き抜かれ、デモリッション・アックスに変身。
マーおじさんは、ニュー・リーダー対ナウ・リーダーの世代交代でゆれる新日本のリングで、猪木のパートナーを買って出て、新たなる道を模索。
それぞれの道を歩み、何年かが過ぎました。
もう、このコンビを見ることもないのかなぁ、と思っていたら、なんと!W☆ingで復活!
これには感動しましたが、明らかに格下の松永相手に、スーパースターがフォール負けするという展開に、怒り心頭でした。
ちなみに、この試合では、マードックが後頭部から大出血し、激高。
憤懣やるかたない表情で、リングを降りたのが、悲しかったです。
時代が時代なら、IWGPタッグのタイトルを巻いていてもよかったチームですが、時代が悪かった。
新日とWWFの軋轢で生まれたチームが、同じ理由で解散。
記憶に残っていますが、タイトル戦線に出ることがない、不運なチームでした。