サマーウオーズはおもしろかったー!
今年で公開から10周年をむかえ、先日の金曜ロードショーで初のノーカット放送された「サマーウオーズ」ですが、何回見てもおもしろいし、おばあちゃんやかずまはかっこいいし、泣けるし、かわいいし最高ですよね?
サマーウオーズのまるで現実に起こっているかのような緊迫感を作り出している要素としては映像が緻密で作画が正確なことや声優の声がすばらしいことはもちろんですが、
意外と忘れられがちなのですが、登場する車両や衛星、コンピューターなどに対するこだわりがすごくて、ハードウエア面に関する描写や技術の背景がちゃんとしていることも作品にリアルさを与えていると思います。
技術的な考証がされているのでウソっぽさやいいかげんさを感じないところがほんとうにカッコイイと思います。
ということで今回は
「サマーウオーズに出て来たあの200テラFLOPSとかいうバカでかいスーパーコンピューターは、10年後の今ではデスクトップパソコンよりちょっと大きいぐらいのシステムで実現できて、普通の家庭用電源でもつかえるらしい」
という話が本当かどうか検証してみました。
作品中に出て来るスーパーコンピューターがかっこよかったー!
特にアキバ民や電脳好きの興味をそそるのは、かずま(池沢 佳主馬)の操る「キングカズマ」が仮想世界OZの中で人工知能ラブマシーンとの戦いに勝つため、おじの陣内 太助が用意するスーパーコンピューターです。
↑サマーウオーズに出て来るコンピューター
これは陣内電気店の店主、太助が大学に納入する予定で仕入れたものを一時拝借して持ち込むという設定で登場し、作品中では船舶用の電源や自衛隊の通信回線、冷却のために数十本の氷柱が用意され、氷が無くなってオーバーヒートするまで圧倒的な性能を発揮して、もう少しでラブマシーンを倒せるか?っというところまで行き、ストーリーを面白くしていました。
あのコンピューターは何?
作品中では大学で使う最新のスーパーコンピューターで、その性能は200テラFLOPSだと説明されています。
気になって当時のスーパーコンピューターをいろいろ見ていて、あの独特のデザインに似てる!と思ったのがコレ↓です。
↑ サマーウオーズのスーパーコンピューターの元になったと思われるNEC SX-9
これだー!っと思っていたら、今回の地上波放送中に、国立天文台の広報アカウントからも下記のようなツイートがありました。
<ツイートの内容>
現在放送中の #サマーウォーズ で陣内家に持ち込まれるスパコンのモデルとなった機種であるベクトル型スーパーコンピュータNEC SX-9は,2008年4月から2013年3月まで国立天文台三鷹キャンパスでもシミュレーション用として運用されていました.ピーク性能は約1.6Tflops,主記憶総量1TBでした.
やっぱりこれだったんですね!
国立天文台のSX-9は1.6テラFLOPS!
国立天文台のSX-9のピーク性能は1.6テラFLOPSと公開されています、SX-9は1コアあたり100ギガFLOPSなので、国立天文台のものは16コアのSX-9ということになると思います。
つまり、
構成:単体ノード
CPU数:16
総ベクトル演算性能:1.64TFROPS
というものだと思います。
カッコイイし、16コアって性能もスッゲーし、さすが国立の研究機関!って思いますよね?
作品中に出て来る200テラFLOPSは?
そういえば作品中では200テラFLOPSだと説明されていなかったっけ?1.6テラFLOPSだと100倍以上違うけど、、、この差は何?
と思いますよね?この違いの説明ははちょっと難しいのですが、
その説明の前に
FLOPSって何?
かを説明する必要があります。
FLOPSは「フロップス」と読み、スーパーコンピュータの性能指標です。
この名前は「Floating point number Operations Per Second」の略からきています。
翻訳すると「浮動小数点数演算が1秒間に何回できるか」を、理論的・実際的に表す指標ということになります。
作品中で出てくる200テラフロップスは、「1秒間に200兆回演算できる」ということになります。ひえースッゲー!
サマーウオーズに出てくる200テラFLOPSのコンピューター
国立天文台のSX-9の構成はシングルノードですのでコンピューターが1台の性能です。
これに対して、複数のコンピューターを専用の高速回線でつないでメモリーを共有して並列演算させることでシングルノードの演算速度Xノード数の演算速度を出すことができ、これを仮想的に1台のコンピューターとして動作させることができ、このような仕組みをマルチノードシステムと言います。
SX-9は、シングルノードで最大16CPUなのでシングルノードとして最大性能1.64TFLOPSということになります、(国立天文台のSX-9はこの構成)で最大メモリ容量1Tバイトです。
メーカーのデーターによると、SX-9は最大512ノードつなげられる構成できるとされていて、そのときの演算速度は838.8テラFLOPSと発表されているので、作品中に出て来る200テラFROPSは最大構成の4分の1ぐらいの規模、たぶん128ノードの構成だと考えられます。(CPUの数でいうと2048個)
下の図でいうとシングルノードが左の構成なのに対して、ノード数が増えていくに従ってどんどん長くなっていく感じで、、、
128ノードは右側の最大構成の4列のうちの1列ぶんのことだと思われます。
100Gbpsのミリ波回線!
また、作品中に100Gbpsのミリ波回線という言葉が出て来ますが、これは100Gbpsの速度を有する衛星回線のことで、つまり並列演算させるコンピューターとして世界中のコンピューターを利用できるという可能性もあります、ここからは想像ですが、、、政財界に幅広い人脈を持つ陣内 栄(おばあちゃん)が防衛長官に電話して全面協力をお願いしてあって、日本中の防衛システム用のスーパーコンピューターを無条件で使わせてもらえるようにな話が通っていれば、あそこに出て来たSX-9が全てではなくても、衛星回線を通じてSX-9または同等のスーパーコンピューターが128台つながっている構成ということも考えられます。
いずれにしても巨大なシステムですね。
200テラフロップスはその時代でいうとどのくらい速いの?
この200テラFLOPSは当時(2010年)でどれだけすごいのか?、そして現代(2019年)の水準ではどのくらいになるのか?が気になったので調べてみました。
2010年当時の200テラFLOPSはスーパーコンピューターでいうと、日本に数組しかない超高速の構成だったと思われます。
そして当時のパソコンとの比較ではINTELがCore i7の第2世代Sandy Bridge を発表していたころなので、当時の最速Core i7の2700Kを組み込んだデスクトップパソコンと比べても比較にならない(1000倍以上)の速度だったと思われます。
2019年の現在でいうとどのくらい速いの?
あのドでかいスーパーコンプーターを128台つないで実現していた200テラFLOPSを、約10年後の現在実現しようとすると、意外と個人レベルでも可能で、デスクトップサーバー(大きめのフルタワーパソコンぐらいの規模)を組み立てる(または注文する)ことでデスクトップパソコンのスペース+αぐらいのマシン1台で実現できてしまいます!
一般に販売される現在最強と思われるプロセッサはNVIDIA社の数値演算アクセラレータ(数値演算アクセラレータはGPUの一種)「Tesla V100」ですが、その
GPUの演算性能は10年前のCPUの数100倍~1000倍!
とも言われています。
その秘密は10年で大きく進歩したGPU(CPUではなくてGPU)の存在がとても大きいと言えます。
演算速度はコア数Xクロックが効くので、数値演算はもっぱらGPUで行う(GPGPU)が今はあたりまえですが、
当時のPCはまだCPUがメインでした。
10年前のCore i7CPUはコア数6個X3.3GHzぐらいでしたが、
2017年に発表され、今でも最高性能のNVIDIA社の数値演算アクセラレータ(GPUの一種)「Tesla V100」における
数値演算コアの総数は5120個!というとんでもない数でです(クロックは約1.5GHzでそれほど速くない)
換算方法によっても違いますが今のGPUの演算性能は10年前のCPUの数百倍~1000倍ぐらいです。
そしてそのV100の演算性能は(ディープラーニングの行列演算の用途に限定される速度なので条件によっては全く同一ではありませんが)
なんと125テラFLOPS!
そして、この途方もない性能を持ったNVIDIA「Tesla V100」はお金さえあれば
通販でポチッと買えてしまう!
んだからすごい時代です。
しかも普通のグラフィックカードと同様のPCI-Express x16ソケットに刺せるので、
ソケットが複数あれば複数刺しも可能で、これを2枚使えばなんと
サマーウオーズに出て来た200テラFLOPSを超えるパソコンも作れる!(計算上は)
ということになります。
実際にはメモリーの速度やバスの速度、そのほかいろんな要因があるので、ちゃんとしたシステム設計を考えて組み上げないとダメで、
今使ってるPCのグラフィックカードをはずして付け替えれば200テラFLOPSのコンピューターになるというほどお手軽にはいきません。
たぶんこのぐらいの規模になると思います。
ということで、長々と書きましたが、「サマーウオーズに出て来たあの200テラFLOPSという憧れのスーパーコンピューターは、
今はデスクトップパソコンよりちょっと大きいぐらいのシステムで実現できるらしい」という話でした。
これを知れば、電源を確保するために船を持ってきたり、冷却のために何十本もの氷柱を必要とした理由がわかったり、もし、あの物語が現代だったら、あんなに大げさにならなかったかもしれない、そうするとドラマ的には盛り上がらなかった、つまり、あの時代=2010年っていうのはサマーウオーズを面白くするためには欠かせない設定だったのかもしれない、、、などと思ったり、サマーウオーズのことを深く考えることができると思います。
と分かったところで、、、
さあ、もう一回サマーウオーズを見ようかなー!












