「決済事務所はブラックなのか？」なんて問題提起したところで、司法書士事務所に勤務している人でもないと「何のこっちゃ？」だと思うので、簡単に説明する。

まず、一口に「司法書士事務所」といっても、その仕事内容は事務所によってまったく異なる。

その理由は、司法書士の業務が多岐にわたるからだ。1人の司法書士が、全ての分野においてスペシャリストたりえる訳ではなく、基本的に、それぞれの事務所ごとに異なる「専門分野」を持っている。

分かりやすいのは「不動産登記」と「商業登記」による分類だろう。

不動産登記　→　土地や建物に関する登記
商業登記　→　会社に関する登記

同じ「登記」といっても、両者はやり方も、必要な知識もまったく別物である。

だから、「不動産登記はたくさん扱ってるけど、商業登記は年に数件しかない」みたいな事務所はザラにある。

これは別に司法書士のやる気がないわけではなく、立地の問題もある。一般的に言って、商業登記の仕事は地方より都市部のほうが多い。理由は簡単、会社は都市部に集中しているからだ。

また、同じ「不動産登記」であっても、その「原因」によって登記というのはタイプが違ってくる。

「原因」というのは、「なんで登記するの？どういう理由で登記をするの？」という意味だと思ってもらえばいい。

分かりやすく、かつ代表的でもあるのが「売買」と「相続」だろう。

Aさんが持っている土地を、Bさんが買った。

あるいは、Aさんが死んでBさんが相続人になり、Aさんの土地を相続した。

こういった時に、土地の「持ち主」をAさんからBさんに変える登記が必要になる。

同じ司法書士事務所でも、売買をメインに扱う事務所もあれば、相続をメインに扱う事務所もある。

そして、この「売買をメインに扱う事務所」のことを、俗に「決済事務所」と呼んだりする。

「決済」とは、「お金のやり取りをする事」である。「売買を原因とする登記」では、当然ながら、どこかで「お金の動く場面」というのが存在する。

しかも、扱うモノがモノなだけに、スーパーで買い物するようにその場でピッという訳にはいかない。何しろ数千万～億単位の買い物である。一括払いができないなら、銀行の力（住宅ローン）を借りる必要もあるだろう。

だから、不動産の売買をするときには、それなりの「場」を設けてやる必要がある。

その「場」には、不動産の買主、売主はもちろん、それぞれの仲介業者、司法書士、さらには銀行の担当者が一堂に会し、取引の説明を受けたり、必要な書類をまとめたりする。

そしてそういった「場」のことを、「決済」とか「立会」とか言ったりする。

たとえば、銀行の一室を借りて、買主と売主が向かい合い、その隣に仲介業者が座って、司法書士は登記に必要な書類を確認し、「確認が取れました。それではお願いします」と言って、待機している銀行の担当者にお金を動かしてもらう。

これは決済のいち形態でしかないけれども、おおよそそんな場を想像してもらえばいい。

この「決済」は、「売買を原因とする登記」を象徴するイベントである。実のところ、司法書士にとっては決済までの準備のほうが大変だし、重要でもあるのだが、関係者が一堂に会する決済の場は、やはりインパクトがある。

だから、その象徴的なイベントの名を借りて、売買登記をメインに扱う事務所のことを「決済事務所」と呼んだりするのである。

※　余談だが、この「決済」というのは、司法書士や仲介業者にとってはありふれたものだが、多くの人にとっては人生に1度あるかないかの大舞台である（業者とかならまた別だが）。

だから、この「決済」の場では、独特の雰囲気が漂うこともある。

決済の雰囲気は、買主・売主、またはその仲介業者の性格によるところが大きい。話し上手の仲介さんがいれば和気あいあいと終わることが多いし、お客さんが細かいことを気にする性格だと、妙な緊張感が走ることもある。

大きなお金が動くだけに、ちょっとした非日常体験を味わえるだろう。決済に行くと分かるが、本当に、色んな人がいる。

とはいえ、和気あいあいとまではいかなくとも、基本的には和やかな雰囲気で終わることが多い。これは、司法書士の扱う仕事が「平和産業」であることに起因する。

たとえば、裁判だとどうしても「紛争」という対立構造があるから、場の雰囲気も殺伐としてしまいがちである。

これに対して「決済」は、もともとが互いの合意の上で「売ります」「買います」という契約を結んでいるのだから、対立というのは本来的には起こり得ない（もちろん、中には例外もあるが……）。

かくいう自分も、初めて決済の場に臨んだときはかなり緊張した。決済における司法書士の責任は重大なのでなおさらである。

しかし、先輩司法書士からの「気を楽にしていきましょう。楽しい決済ですから」という言葉を貰って、幾分肩の荷が下りたように思う。

お客さんは決済の場に言い争いに来ているわけでも、粗探しをしに来ているわけでもない。買主さんは新たな住まいを手に入れ、売主さんはその対価を元にまた次の住まいを探す。それぞれの新たな人生のスタートがそこにはある。決済というのは本来的に楽しいものなのだ。

そんなわけで、不動産を買ったりして「これから自分も決済行くよ！」という人は、ぜひリラックスして臨んでほしい。面倒なことは司法書士や仲介が全部やってくれるし、そのほうが司法書士も緊張せずに済むので（笑）。

　⇒　あと、決済というのは待ちの時間が長いという事も知っておいて損はない。銀行の振込み手続きに時間がかかるためだ。具体的に何をやってるのかは知らないが、とにかく長い。スムーズに進んでも30分、長いときだと2時間以上待たされることもある。

それともう1つ、先ほど述べたように、決済というのは多くの人にとって「人生に1度あるかないかの大舞台」である。これは、司法書士として常に心に留めておかなければならない事だと思う。

というのは、司法書士からすれば、決済というのは「ありふれた業務の中の1つ」でしかないからだ。人によっては、月に2～30もの決済をこなす。

しかし、自分の一世一代の大舞台を、「ありふれた業務の中の1つ」として扱われて面白い人はいまい。

だから、司法書士にとっては「ありふれた業務の中の1つ」でも、お客さんにとっては「人生に1度あるかないかの大舞台」であることは、常に意識として持っておく必要があると思う。

もちろん、決済に場慣れすることは大事だけれども、それが行きすぎて淡々と流れ作業的になってしまったり、ましてお客さんから「本当にコイツに任せて大丈夫なのかよ」と思われてしまっては、互いにとって不幸だろう。

で、話が逸れたが、ここからが本題。「決済事務所はブラックなのか？」という話だ。「決済事務所　ブラック」で検索すると、それっぽい情報がいくつも出てくる。

さらに、他の司法書士から聞いた話を踏まえると、決済事務所がブラックだと言われる由縁はおおよそ以下のような理由にあるようだ。

■昼飯を食う時間が安定しない

この意見が最も多い。そして、これは事実その通りである。

なぜ決済事務所だと昼飯を食う時間が安定しないのか？また簡単に説明する。

既に述べたとおり、「売買を原因とする登記」では、「決済」というイベントが必要になる。絶対ではないが、多くの場合において決済がある。

そして決済の日時を決めるのは司法書士ではない。「その日は予定がパンパンでして……」みたいな交渉はできなくもないが、基本的にはお客さん主導で日時が決まる。

もうこの時点で好きな時間に昼食を取れそうにない（お客さんが「12時からで」と言ったらそれに合わせるしかない）わけだが、理由はそれだけではない。

簡単にいえば、司法書士は、決済が終わったあとも必要な書類を取りに回らなければならないからだ。

決済の場では登記に必要な書類を集めるが、全てがそこで揃うわけではない。

抵当権（担保のこと）の抹消があるなら銀行に行かなければならないし、必要な証明書を取りに役所まで行かなければならない事もある。

そして、そういった銀行や役所が、決済場所の近くにあるとは限らない。決済を東京で済ませたら、そのまま神奈川の銀行に行くなんて事は日常茶飯事である。

そうこうしている内に15時、16時になってしまう訳だが、あまりノンビリとはしていられない。登記の申請は17時15分までしか受け付けてくれないからだ。

もしその日のうちに登記が間に合わなければ、司法書士としてはもう致命的、ジャンピング土下座ものの大失態である（いや冗談でなくマジで）。

　⇒　だから、決済というものの多くは午前中に行われる。「自分は別に午後でも大丈夫なんだけど……」と思うかもしれないが、それでは司法書士が間に合わない。

だから、決済がある日の昼食は二の次、三の次で、とにかくまず申請を終わらせてからという事になる。

それが嫌なら、予めパンでも買っておいて、合間の時間に詰め込むしかない。

■長い距離を歩かされる

■忙しさの波がある

それ以外で目にする理由としてはこの辺か。いずれも、決済事務所の特徴である。

登記に必要な書類を集めるため、司法書士は西へ東へ、色んなところへ行かなければならない。

　⇒　ちなみに行き先として圧倒的に多いのは銀行・役所・法務局である。

車で移動できればいいのだが、自分のように電車メインだと、どうしても歩行距離が長くなる。今みたいな暑い時期だとけっこうキツイ。

最近スマホに万歩計アプリを入れてみたのだが、平日に1日1万歩ちかく歩いていることが分かった。距離にして5～10㎞である。

　⇒　これに対し、休日は外に出掛けないと全然歩かない（笑）。

しかもただ歩くのではなく、「決済ファイル」を持ち歩かなければならない。決済ファイルは紙の束だから、1～2㎏ほどの重さがある。これを複数持ち歩くとなると、侮れない重量になる。ましてこの炎天下である。

地味～なデスクワークのイメージが強いかもしれないが、司法書士というのはけっこうな肉体労働なのだ。

そしてもう1つ、決済というのは月末に集中する。理由は知らないが、明確にそういう傾向がある。

となると、必然、司法書士が忙しくなるのも月末である。

もっと毎日の忙しさを均等に均せればいいのだが、そうもいかないのがこの仕事だ。

■決済事務所＝ブラックではない

さて、そもそも何故こんな記事を書いたかといえば、自分が今いる職場が決済事務所だからである。

扱っている案件数としては、不動産と商業が９：１ぐらいのバランス、さらに不動産の中でも売買と相続が８：２ぐらいのバランス。典型的な決済事務所である。

そして、決済事務所に勤務していると言うと、同期の司法書士からよく言われる。「決済事務所ってブラックなんでしょ？」

しかし、自分にはこれがピンとこない。「えっ、そうなの！？」という感じである。

そこで、決済事務所がブラックだと言われる由縁を調べてみた。それが上に挙げたような理由である。

上記はいずれも決済事務所の特徴だが、しかし、これをもって決済事務所＝ブラックとは言えない。以下のように反論が可能である。

■昼飯を食う時間が安定しない

別にいいじゃないか。決まった時間（たとえば12～13時）に昼飯が食べられなくても、自分は一向に構わない。

自分は最近、15～16時ぐらいに昼食をとることが多い。たとえ12～13時に飯を食べられる日であっても、である。昼を遅めにすることに、明確なメリットがあるからだ。思いつくものをいくつが挙げてみよう。

①落ち着いて飯が食える

最大のメリット。自分の事務所は駅にちかく、周りにオフィスも多いため、お昼どきはかなり混雑する。飲食店は基本的に長蛇の列を作っている。

こんな環境で、「お昼休みは12～13時に取れ」と言われたら、むしろ困ってしまうだろう。

ほとんどの店が行列待ちなので入れる所が限られてしまうし、人でごった返した場所では落ち着いて食べることもできない。

しかし15～16時にもなれば、人もはけ、どの店にもすぐ入れる。やはりご飯は落ち着いて食べたい。

②晩飯を食わなくて済む

これも大きい。自分は夜10時ぐらいには寝るので、15～16時に昼食を取れば、夜はもう何も食べなくていい。

　⇒　「ずいぶん寝るのが早えーな」と思うかもしれないが、これにもちゃんと理由がある。

単純に晩飯代が浮くので節約になるし、「晩飯に時間をかけなくて済む」というのも大きい。

晩飯を作って、食べて、片付けてとしていれば、どうしても1時間ぐらいはかかるだろう。

晩飯を抜けば、この1時間ぶん1日の可処分時間が増えることになる。

③ガーッと仕事を終わらせることができる

前にいた職場は、昼食の時間を厳密に12～13時としていたが、これでは昼食のために仕事のリズムが縛られることになる。「仕事中心」でなく「昼食中心」のスケジュールになってしまう。

　⇒　で、仕事が忙しくなると12～13時に昼食をとるのが難しくなるので、結局昼休みを満足に取れなくなるなんてのもよくある話。

昼飯を食べたあともまだまだ仕事が残っているし、満腹感で眠くなってしまうのも地味に鬱陶しい。

これに対し、昼食を遅めに取るということは、「昼食までにほとんどの仕事を終わらせてしまう」という事でもある。

15～16時までにその日の仕事をガーッと終わらせ、ゆっくり昼食を取ったら、事務所に戻って明日の予定を確認し、準備だけして帰る。

そんな働き方が良いかどうかは別として、自分にはこのスタイルが合っていた。

　⇒　やっぱり、飯を食うときは「なるべくストレスの少ない状態で、落ち着いて食べたい」という気持ちが強いのかなあと思う。

そんな自分にとって、「昼飯を食う時間が安定しない」というのは、デメリットどころかむしろメリットである。

要するに、「昼飯を食う時間が安定しない」というのも物は言いようで、決済事務所というのは「自由な時間にお昼休みが取れる」職場環境なのだ。

■長い距離を歩かされる

■忙しさの波がある

別にいいじゃないか（2回目）。自分が歩くのが好きだからかもしれないが、全然ストレスにならない。

むしろ仕事しながら運動もできて、色んな所に行けて、各地の美味しいものを食べられる。最高じゃん。

「仕事しながら」という部分も重要である。1日の時間を削ることなく、ジムに通ったりする必要もなく、自然と毎日300～500kcalの運動ができるのである。

　⇒　しかも数㎏の荷物を抱えているから、実際の消費カロリーはそれ以上だろう。

友人から「それ、かなり鍛えられてるんじゃないの？」と言われ、試しに自分で触ってみたのだが……脚めっちゃ硬え。

上半身がほとんど鍛えられていないので気付かなかったのだが、知らない間に、下半身が鍛えられていたようだ。なんと健康的な仕事であるか。

ただ、これについては自分が「雇われ司法書士」だからそんな悠長な事を言っていられる、という面もある。

「雇われ司法書士」の場合、月給制だから、極端なハナシ歩いているだけでも一定の給与は約束されている。

これに対し、自分で事務所を営む「開業司法書士」の場合だと、歩く時間はムダでしかない（歩いているだけでは1円にもならない）。

だから自分も開業した場合、車を持たないとダメかなあという気がする。

それともう1つ、月末の忙しさについてだが、これも事前の準備である程度均すことは可能である。

決済の日までにできる事は全て終わらせておいて、決済当日は「書類集め」と「申請」だけで済むようにする。

周りの先輩を見ていると分かるが、できる仕事を早め早めに終わらせておき、ある程度余裕をもって月末を迎えられるようにする。それが「デキる司法書士」というものなのだと痛感する。

■雇われ司法書士か、即独立か

そんな訳で色々語ったが、とりあえず決済事務所＝ブラックという単純な図式は成り立たない。

自分の場合をみても、月の残業時間が20時間を超えたことはないし、そもそも残業を「辛い」と感じたことがない。

これは別に強がりを言っているのではなく、本当にそう思っている。その最大の理由は、事務所選びを間違えなかったからだろう。

まず残業について、過去に自分が書いた内容を引用する。

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少し話は逸れるが、残業については以前から思うことがあって、時間とストレスは必ずしも相関しない。

やりがいがあって、自分の意思でする残業なら深夜何時までかかろうと苦ではないが、イヤな仕事を任されてする残業は1秒だってやりたくない。

ニュースで過労死や自殺が問題になるたび、「たった〇〇時間残業しただけで自殺するのか」という声を聞くが、本当に問題なのは時間ではなく、仕事の内容のほうではないだろうか。

だから、「いかに残業をしないか」という考え方も大切だが、それと同じぐらい、「いかに残業を苦にしない働き方をするか」という事を考えてみるのも重要ではないかと思う。「いかに残業をしないか」だけを考えていると、いざ残業することになったとき、大きなストレスになってしまうからだ。

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司法書士試験に合格して喜んだのも束の間、受験生たちには「どこで、どのように働くか」という次の試練が待ち受けている。

ざっくり言って、合格者の進む道は以下の2つに分かれるだろう。

・どこかの事務所に勤務する（雇われ司法書士になる）

・独立開業する（即独立する）

実際、合格してすぐ独立した同期も、何人か知っている。自分もすぐ開業しようか悩んだが、そうしなかった。というのも、事務所に勤務したことがなく、司法書士「試験」の勉強しかしてこなかった自分には実務の知識がまったくないからである。

ひょっとしたら、「司法書士試験に受かってるんだから知識は十分なんじゃないの？」と思うかもしれないが、全くそんな事はない。

一人前の司法書士として働くには、試験知識だけではダメで、そこから様々な「実務知識」や「仕事のやり方」を覚える必要がある。試験に通っただけの司法書士ではまったく使い物にならない。

　⇒　とはいえ、試験で覚えたことがムダという訳でもない。「実務知識」の中には、その地域特有の「ローカルルール」のようなものも含まれている。そんなものは試験には出せない。だが仕事をやる上では必要である。試験で覚えたことをベースにしつつ、いくらかの実務知識を上乗せする必要があるということ。

どんな職業でもそうだと思うが、「仕事のやり方」を覚えていない新人にいきなり仕事を任せるのは危険である。

まして扱う金額の大きい司法書士ならなおさらだ。自分のような実務経験のない者がいきなり開業しようとするのは、そんなリスクを抱える事に他ならない。我流の誤ったやり方が身に付くことにもなりそうである。

実際、自分の周りを見ても、まずはどこかの事務所に勤務するという司法書士が多い。

勤務司法書士のメリットは、何といっても先輩から仕事のやり方を教えてもらえることである。十分な給料をもらいながら、実際の仕事の中で、正しい実務知識を身に付けられる。

それが1年なのか、2～3年なのか、あるいは10年以上続けるのか、それは人によりけりだろうが、将来独立を見据える司法書士にとってこれほど有難い話はない。

■事務所選びのポイント

だからこそ誤ってはならないのが事務所選びである。ここの選択を誤るかどうかで、その後の人生が大きく変わる。

これは同期や先輩司法書士から聞いた話だが、「大手の事務所だから安心」とはならないのが、この業界の難しいところである。大手事務所の場合、完全な分業制になっていて、特定の業務にしか関われない可能性があるからだ。

たとえば書類作成のみ、本人確認のみ、申請のみetc...特定の業務にしか関われないということは、それだけ「関わっていない業務が多い」ということであり、そのぶんだけ独立が遠のく。1人で独立するつもりなら、全ての仕事を1人でできるようにならなければならないからだ。

だから、「A事務所では1年真面目に働けば一人前になれるけれども、B事務所では5年働いても一人前になれない」という事が、ふつうに起こり得る。B事務所ではずーーっと同じ仕事しかできない（させてもらえない）からだ。やりがいもヘッタクレもない。

せっかく死にもの狂いで勉強して資格を勝ち取ったのに、会社からそんな「使われ方」をされるのは、自分だったら耐えられないだろう。

だから事務所選びというのは非常に大事だし、その重要なポイントの1つとして「分業制でなく、全ての仕事に関わることができるか」という事が挙げられると思う。

　⇒　独立するつもりがなく、ずっと同じ会社で働き続けるというなら話は別だが。

あとはやっぱり「人」だろう。司法書士事務所というのは、一般的にいって企業ほど大規模にならない（数人～十数人程度。30人を超えることは稀）。

という事は、必然的に、毎日同じ人たちと顔を合わせることになる。これで職場に馴染めなかったらけっこうな地獄だろう。

しかも内部にどんな人がいるかなんて、募集要項を見ただけでは分かりっこない。面接で「職場に変な人はいますか？」と聞くわけにもいかないし、だいたい聞いても「いますよ～」なんて答えないだろう。

だが、この手の話については前々から思うことがあって、それは直感は裏切らないということだ。

最初に受けた印象で「あ、ここいいかも？」と思った職場なら、だいたい上手くいく。給与や待遇といった目に見えるパラメータよりも、直感を信じて入った職場のほうが、あんがい良かったりするものである。

そもそも新人司法書士に対する待遇なんて、せいぜい数万円違うぐらいでどれも大差ない。だったら、雇われ時代は「修業期間」だと割り切り、直感で「人」が良さそうな職場を選ぶというのは十分アリだろう。

さて、今年もさる7月3日、司法書士試験が行われた（例年、7月の第1日曜日に行われる）。自分もふと去年を思い出し、懐かしい気持ちになった。

問題は見ていないが、今年の不登法は、去年に比べると幾分マイルドになったようだ。やっぱ去年のアレはどう考えても異常だったもんなあ……。

その他、所々に難しい問題はあれども想定の範囲内で、比較的「例年どおりの司法書士試験」に落ち着いたようである。

　⇒　とはいえ、「問題の解きやすい年度」が「合格しやすい年度」にならないのが、この試験の厄介なところなのだが。

今年もまた600人前後の合格者が出ると思うが、せっかく頑張って取った資格、どのように活かすかを今のうちに考えてみるのも、時間の使い方としてはアリだと思う。

………と、長々語ったのだが、ここまでの話は全部前振りである。

本当は別のネタについて書きたかったのだが、そのためにはどうしても「今の自分の仕事スタイル」について説明しておかなければならず、別立てて記事を書くことにした。

まあ、まとめようと思えば200字程度でまとめられない事もないのだが、決済事務所の云々についても書きたいし、前々から思ってたことをまとめようと思ったら9000文字を超えてしまった次第。

と、いうわけで次回に続く。

【司法書士】決済事務所はブラックなのか？