はじめに

 作品というものは、時に制作者の内面世界が本人が意図せずとも反映されてしまうことがある。音楽や絵画や映像は、言葉を超えたコミュニケーションツールであり、創作欲の裏には制作者が世界や観客に伝えたいことが深く絡んでいることが多い。そしてそれはVTuberとて例外ではなかろうか。


と、なんか大それた序文を書いてしまったが…

『I'm your treasure box』や『幽霊船戦』の考察はよく見かけるが、『A Horny Money World』のは、曲の軽いノリのためか全くと言っていいほど見かけない。こういう誰もがスルーしがちなものにこそ考察のしがいがあるのでは、と筆者は考えてしまう。

音楽制作にあたって、作詞やMV制作に船長がどれほど深く関わっているのか、観客である僕らは知り得ないが、『A Horny Money World』には船長の無意識が、おそらく本人も意図しないうちに反映されているように思う。また、この曲の歌詞そのものにも色々と吟味できる部分が多い。


この考察が100%正しいとは私自身も思わないし、あくまで「こんな見方をあるんだ〜」程度に見て欲しい。




『A Horny Money World〜伝説の夜』


「あァ~~ンまrrrrィーン金ピカめっちゃちゅ~~~きぃ~~~」


ナイナイ足りないナイナイ
ナイナイ船買えナイナイ
背に腹変えられない
Money or Die

イェン ダラ ポンド ユーロ
Money しゅきしゅき(あぁん)
ルピア リラ ウォン 元 ドン
(A Horny Money World) はぁ~い

寄ってらっしゃいなったら
おいでなシャッチョッサーマ
お宝売りまっせーら
Let's Go オークション!

(No.1)ドクロの旗
(No.2)オンボロパーカー
(No.3)リップに眼帯は?
(使用済み~ぃ)

How Much?「はい!」(100万円!)
からの~?「はい!」(1億円!)
からの~?「はい!」(1兆円!)
もうひと超え

How Much?「はい!」(1000兆!)
からの~?「はい!」(2000兆!)
からの~?「はい!」(3000兆!)
ぶっ飛んで~?(5000兆!)

欲ちいの 欲ちいの Money Money(Money Money)
助けて 欲ちいの Carry Carry(Carry Carry)
Start to drool “Horny Money World”(Ah)

Vale Vale Baile
Pare Pare Pirates
売り出せや お宝
ドパドパドパッパ(あっは~ん)
強引? でもちゅきCoin 商人降臨
(なんてね)

Dollar Dollar 欲棒 かざされ
Mera Mera 煩悩 満たされ
消費 浪費 濫費 行為
ぐるぐる世界が 廻されて
Super Charmingな
You は Hunting Star(All right)
いざ Hammer Caaaaaaaan!
Congratulations!^^b

イェン ダラ ポンド ユーロ
Money しゅきしゅき(あぁん)
ルピア リラ ウォン 元 ドン
(A Horny Money World)はぁ~い

ドラクマ ペセタ
レアル マルク ちゅちゅ(ちゅちゅ)
貝殻 米 金銀銅
(A Horny Money World)

お宝売って 入金あって
お船を買って ハッピッピー
出航して 嵐にあって
バッタンキュー
難破先で 鉱山みっけ
新たな硬貨 掘り当てちゃって
大発見!これを
マリーと命名するだっちゃ

(No.4)愛用チーク
(No.5)ランチのフォーク
(No.6)ヨダレスカーフ
(まだ足りない!)
(No.100)脱ぎたてブーツ
(No.1000)サービスサービス
(No.10000)わがままボディの魚拓

How Much?「はい!」(100万マリー!)
からの~?「はい!」(1億マリー!)
からの~?「はい!」(1兆マリー!)
もうひと超え

How Much?「はい!」(1000兆!)
からの~?「はい!」(2000兆!)
からの~?「はい!」(3000兆!)
ぶっ飛んで~?(5000兆!)

Vale Vale Baile
Pare Pare Pirates
売り出せや お宝
ドパドパドパッパ(あっは~ん)
強引? でもちゅきCoin 商人降臨
(なんてね)

Dollar Dollar 欲棒 かざされ
Ghoul Ghoul 身ぐるみ 剥がされ
どうも こうも なんもかも
朦朧 堪能 されされて
Super Charmingな
You は Hunting Star(All right)
いざ Hammer Caaaaaaaan!
Congratulations!^^b

イェン ダラ ポンド ユーロ
Money しゅきしゅき(あぁん)
ルピア リラ ウォン 元 ドン
(A Horny Money World) はぁ~い

ドラクマ ペセタ
レアル マルク ちゅちゅ(ちゅちゅ)
貝殻 米 金銀銅
(A Horny Money World)

「あァ~~ンまrrrrィーンの着るものナクナリーノさむいっちゅーのぉぉん
もうオークションなんて、コリーノゴリーノぉぉん………はぅん」




歌詞に隠されたヒミツ

まずは、歌詞の気になるフレーズからところどころ深掘りしつつ、歌全体に込められた大まかなストーリーを見ていきたい。

お金のないマリン船長は船を買うために、ドクロの旗やおんぼろパーカーや挙句の果てには使用済みのリップ、眼帯といった私物をオークションに出品。
今回のテーマは「お金」であり、出品物の入札額が跳ね上がると同時に、曲のボルテージも上がっていき、験担ぎのごとくお金を讃えるサビへ入る。


Vale Vale Baile Pare Pare Pirates


スペイン語で "vale"「オッケー」"baile" 「ダンス」という意味になり、直訳すると「オッケー オッケー ダンス」となる。語感の良さを重視してるので深い意味はなさそうだ。

"pare" は同じくスペイン語だと「止まれ」と訳せるが、これも海賊を意味する英単語の "pirates" と語感を踏むためとしての意味合いが強そうだ。

あるいは、勢い余って急騰するオークション品の入札額にストップ!ということなのかもしれない。


他の箇所にも主に英語といった外国語が入っているが、この重要なサビの部分でなぜスペイン語が採用されたのだろうか?



15世紀から17世紀にかけて、ヨーロッパ諸国が航路を開拓し、植民地支配を進めたことで世界規模の商業が確立された大航海時代の中心にいたのは、ポルトガルとスペインであり、"スペイン黄金世紀" とも呼ばれている。

スペインは新大陸や植民地の略奪、開発で大量の金銀を持ち帰ったため、貨幣の量は倍となり、ヨーロッパ中で大金持ちが生まれ、価格革命と呼ばれるほどの物価高騰が起きている。

現在の覇権国のアメリカはこの当時はスペインの植民地であり、イギリスですら産業革命前でまだスペイン、ポルトガルには及ばなかった。


また、この時代は17世紀の "海賊の黄金時代" とも被る。そもそも海賊は、交易や植民地を巡って競争していた当時のヨーロッパ諸国が、政府公認でライバル国の船からの略奪をさせていた存在である。

つまり、スペインはまさしく、大航海、金銀財宝、海賊時代のイメージで、海賊が歌うお金をテーマにした今回の楽曲のサビにぴったりなモチーフだったのではないだろうか。


歌の最後に、もうオークションなんて、コリーノゴリーノ というセリフが出てくるが、この「〇〇ーノ 〇〇ーノ」という表現は、男性名詞の多くが -o の音で終わるスペイン語をイメージしてのものなのかもしれない。



Dollar Dollar 欲棒 かざされ Mera Mera 煩悩 満たされ 消費 浪費 濫費 行為 ぐるぐる世界が 廻されて


まさしく、ザ・資本主義、ザ・拝金主義、ザ・享楽主義な歌詞である。

何かが欲しいという欲望が、労働を生み、お金を生み、消費を生み、欲は満たされる。消費されたお金は、また誰かの欲を満たすために、人と人との間を巡っていく。まさに「金は天下の回りもの」である。



資本主義社会の自由競争において、各々がそれぞれの利益を追求することによって、結果的に社会全体が豊かになっていくという、アダム・スミスの "神の見えざる手" という考え方が垣間見える歌詞でもある。



イェン ダラ ポンド ユーロ Money しゅきしゅき(あぁん) ルピア リラ ウォン 元 ドン

(中略)

ドラクマ ペセタ レアル マルク ちゅちゅ(ちゅちゅ)
貝殻 米 金銀銅


様々な国の通貨がここでは列挙されている。

それぞれ、円(日本)、ドル(アメリカ)、ポンド(イギリス)、ユーロ(EU)、ルピア(インドネシア)、リラ(旧イタリア、トルコ)、ウォン(韓国)、元(中国)、ドン(ベトナム)、ドラクマ(古代ギリシャ)、ペセタ(旧スペイン)、レアル(ブラジル)、マルク(旧ドイツ)となっている。

この部分は通貨の名前を挙げながらも明確なリズムを作り出していて、聴いていてとても心地よい。


貝殻は貝貨(ばいか)と言い、硬貨が流通する前の古代で世界中で貨幣として使われていた。

は、江戸時代に年貢が米で納められていたように、日本では古代から貨幣の代わりだった。

金銀銅は言わずもがな、硬貨として使われている。暗号通貨や電子マネーが発達した現代でも、価値が揺るがない資産として金の延べ棒を金庫に保管している人もいる。


余談であるが、日本に来た外国人観光客がお会計をする際に、「円」の日本人の発音が "Yen" (イェン) ではなく "En" (エン) であることに戸惑う人が多いらしい。