「見たぞぉ～～～～」

・・・・学校に行ったら　信吾　に声をかけられた。・・・・なんだか嬉しそうだ・笑。

信吾、ヤスケン、薮田・・・その他数人・・・・・いつも顔を揃えてるヤツらだ。・・・・学校の主流派ってわけじゃない。でも、世間的にはふつーーーーの高校生ってヤツらだ。

・・・・で、いつも窓際に陣取っている・笑。

そう、中学の時の「窓際族」と同じようなヤツらだった・笑。

学校で、質の悪いヤツらに「イジメ」られてはいた。けど、いたってふつーに接してくるヤツらも多い。

小学校、中学校のときは「イジメ」って方向性が決まってしまえば、みんなで徒党を組んで「イジメ」一辺倒になるもんだ。・・・・が、高校生・・・・高校２年生ともなれば、そう一枚岩で動くわけじゃない。

んなわけで、学校に行ったら行ったで、友達と呼べるヤツらもいた。

この「窓際族」のメンバー・・・・それから、麻雀の師匠筋の　牧田　・・・・オレと同じように半ば「イジメ」られてたような　直人。

あとは　進。

特に、進　からは、何かれなく慕われてるような感じすらあった。

「虐め」から・・・・・ってか、暴力教師に理不尽に殴られることから学校に行かなくなった。・・・・それが原因で、さらに「虐め」が悪化する・・・・んな悪循環に陥っていったけれど、

「行きたい時に学校に行き、帰りたい時に学校から帰る」

そう、腹を括ってしまえば気楽なもんだ。

で、それで、大騒ぎってこともなかった。

なんたって、オレには「赤点ナシ」って免罪符があった。

高校２年。

クラスの、ほぼ全員が赤点を取るってな教科もあって・・・・・ほぼ全員が赤点ってのは、教える教師に問題があるって思うけどな・笑。

そんなクラスの中で「赤点ナシ」ってのは、教師側からみれば「優等生」っていっていい。・・・・・比較の問題で、オレから言わせれば、周りが「低能」すぎるってことなんだが・・・・笑。

しかし、素行の悪い生徒が多い中、ふつーの学生服を着て、赤点すらないオレは、教師から見れば「手のかからない生徒」だったんだと思う。・・・・・そーゆー意味でも「優等生」だった。

「行きたい時に学校に行き、帰りたい時に学校から帰る」

この件で、教師から文句を言われたことはない。

・・・・いや、あった。担任から言われたことはある。

「英語教師の暴力があるので、足が竦んで来れません。やりすぎだと思います。何とかしてください」

そう、担任に直訴した。

担任は、困ったような薄ら笑いを浮かべるだけだった・笑。

それ以来、教師からは、なーーーーんも言われなくなった。

まぁ、・・・・・学校では、小・中学校みたいに朝の出席が取られることもなかった。来てるんだか、サボってるんだかの把握もしてなかったんじゃないかと思う・笑。

たぶんだけど・・・・

田舎のクソ高校だ。

この辺の田舎じゃあ、学校を「サボる」ヤツなんかいやしない。

「悪」の工業高校ですら、「サボる」なんて生徒はいない。・・・・じつは、サボるより、学校に来たほうが楽しいんだよな・笑。

学校に来れば、周りもバカばっかりだ。安心するんだろうよ・笑。

・・・ってことで、がっこーには「来てる」もんだって前提があったのか、出欠を取るってことがなかった。

・・・・その割には「雀荘カズ」に出入りするヤツには「サボリ」が多かったけど・笑。

けっきょく・・・・自立してるヤツ。

群れないヤツは、サボる・・・・・サボれるんだよな。

誰かと一緒じゃないと不安なヤツは、がっこーをサボったりしない。

ガッコーに行くことが安心の材料だ。

・・・・で、学校に行けば「窓際族」の連中と一緒にいた。

「見たぞぉ～～～～～」

と、ヤスケンが、さらに嬉しそうな顔で言う。

ヒョロっとした・・・・カマキリみたいな顔をしてる・笑。

何を見たのよ・・・・？？？？

「オマエが女と歩いてるのを見た」

え？？？見られてたの？？笑。

・・・・それも、とびきりの「可愛娘チャン」と。

しかも、県庁所在地の都会を、ふたりで仲良さそうに歩いてるのを見た。・・・・ってことだった。

みんなの顔がキラキラと輝いて見えた・笑。

なんだか、嬉しそうだ・笑。

・・・・なんだ？？？？どーした？？？何が聞きたい？？？何が言いたい？？？　　　笑。

「あの可愛娘チャンって、美海浜高校の子だろ・・？？？？」

薮田が言う。・・・・男前で背が高い・・・・んで気のいいヤツだ。

美海浜高校ってのは、県庁所在地のある街・・・・オレたち田舎の高校生が足を踏み入れるのすら躊躇する都会・・・・そこの高校だ。

・・・・え？？？なんで知ってるの？？？

「知ってるよ、すっげー有名な女の子じゃねーか・・・誰だって知ってるだろ？？」

「可愛いって話題沸騰の子やろーが！」

「転校生の美少女って、メチャンコ有名だろうが！」

窓際族全員が興味深々で瞳を輝かせて言い募る・笑。

・・・・・え？？？そーなの？？？・・・・・知らなかった・・・・オレは、今、初めて知った・・・・笑。

・・・・そうなのか・・・・そんな噂の美少女だったのか・・・・・笑。

話は今年の正月に遡る。

オレと、その美少女はバドミントンに興じていた。

美少女の名前は　麻衣子　だ。

長閑な田園風景の広場で、シャトルを打つ。

・・・・実は、今年に限ったことじゃない。ふたりの恒例行事だった。

正月の羽子板に代わってバドミントンをするってのが、ふたりの恒例行事になっていた。

「美海浜高校に決まったわ」

シャトルを打ちながら麻衣子が言う。

転校するって話は聞いていた。

・・・・・麻衣子の親父さんの「転勤」でだった。

麻衣子の父さんは、けっこー大手の工作機械メーカーに勤めていた。・・・・その転勤で、オレの住む隣の市・・・・県庁所在地へと引っ越すことが決まった。

「カァくん、いろいろ教えてよね」

「はいよ」

と、シャトルのラリーが続いた。

それ以来、また・・・・昔みたいな交流が始まった。

オレも、県庁所在地の方は、あんまり・・・・ってか、ほとんど何も知らない・笑。

県営の陸上競技場くらいしか知らないけど・笑。

んなわけで、麻衣子と二人で、観光案内ヨロシク出歩いた。・・・・そこを見られたってわけだ・笑。

「美海浜高校の　麻衣子　は可愛い」

んな、噂が立ってるのは、今、初めて聞いた・笑。

そっか・・・・そんな有名なのかよ・笑。

・・・・・確かに可愛かった・笑。

「美人」ってより・・・・やっぱり「可愛い」ってタイプだった。・・・・で、その雰囲気とはアンバランスなように背が高かった。

背がスラァ～～～～っと高く。・・・・オレより高い・・・・ってより、オレが低すぎなんだけどさ・笑。

・・・でも、何か部活に打ち込んで、そうなったってわけじゃない。

スポーツはやらない・笑。

・・・・そういう「熱血」みたいなのとは、全く無縁だった・笑。

どっか、ポワーーーンとしてて・・・・・常にお母さんの後ろに隠れて過ごしてるような感じだった。

小さい時からよく知ってる。

お母さんのスカートを掴んで、ついて回ってるような子供だった。

・・・・それが、高校生になる頃から・・・・

「どこの玉の輿に乗るんだろうねぇ・・・・・」

ウチのオカンを含めた大人たちが囁き合ってるのを聞いたことがある。

オレには、・・・・なんだかピンとこなかったけどな・・・・

ピンとこないってのは「玉の輿」って言葉にピンとこないだけで・・・・確かに可愛いとは思う。

・・・・そっか・・・そんなに有名なのかよ・・・・すげーな　麻衣子。

信吾、薮田、ヤスケン・・・その他みんなが目を輝かせてオレを見てる・笑。

「美海浜高校の　水上麻衣子　って言えば誰でも知ってる美少女だろうが・・・・なんでオマエと歩いてんだよ？？？？」

「そうだよ、なんでカズと歩いてんだ？？？」

「なんでだ？え？？水上！？？？」

そこまで言って、みんな、ハッと気づいたらしい・・・・笑。

「カズ・・・・水上・・・・・・水上麻衣子・・・・・・・

え？・・・・・えっえっえぇーーーーーーーーーー？？？？？？？」

そうだよ。

従妹だよ・笑。

毎年、正月は、ウチのオカンの実家に親戚一同が集まる。

オカンは、９人兄弟姉妹とかだ。・・・・昔は子だくさんだったんだよな・笑。

で、そんなわけで、とーぜんオレの「イトコ」も多い。・・・・数えたことないけど１０人は楽に超えてる・笑。

正月は、そこの「広場」で、麻衣子とバドミントンをやるってのが恒例になっていた。

麻衣子は、学年はイッコ上だけど、歳は同じだった。・・・・つまりは早生まれだ。

んなこともあって、幼いときから「姉弟」のように育った。

・・・・じっさい、「乳姉弟」だったらしい・笑。

オカンに叔母さん、手の空いた方が、オレ、麻衣子、両方に乳を与えてたって話だ。

「イトコ」は、いっぱいいるが、同じ歳の従弟は　麻衣子　だけだ。

それもあって仲が良かった。

正月とか・・・・親戚が集まれば「イトコ」どうしも集まる。

子供たちの「輪」もいくつかできる。

オレと麻衣子は二人で遊んでる事が多かった。・・・・バドミントンだの、トランプだの・・・・あとは深夜番組をふたりで観てたりとか・・・・

オレと麻衣子の寝床は、テレビの前のコタツって決まっていた・笑。

なーーーんだ・・・・・って「窓際族」の顔。

・・・・が、

決して、オレの「彼女」ってわけじゃないとわかったわけで・・・・・笑。

「彼氏いるのか？」

「紹介してくれ！！」

ガヤガヤと、さらに騒々しさが加速した・笑。

正月。

親戚たちの喧騒から離れて、ふたりでバドミントンで遊んだ。

毎年、会うのは正月だけじゃなかった。

夏休みに会えば、ふたりで釣りに行った。

毎年毎年・・・・年に数回は顔を合わせた。

・・・・ところが、ここんところは「ウチの夜逃げ騒動」もあって、なかなか会えなかった・・・・オレたちが実家から足が遠のいていたからだ。

久しぶりに会った。

シャトルのラリーが続く。

休憩して餅を食べ・・・・・話をして・・・・またバドミントンで遊ぶ。

みかんを食べて、ジュースを飲んで話す。

山に陽が暮れていく。

シャトルが見えなくなってきた・・・・それでもラリーを続けた。

見えないことを楽しみながら、ふたりで笑いながらラリーを続けた。

麻衣子と久しぶりに会った。

麻衣子が近くに住んでいる。

・・・・これからは、いつでも会える。

「美少女と見つかる」毎年会ってた。