漂流 ~六月六日~
八十年、あなたの
体内に広がった海は
ついにあなたを殺してしまった。
無数の塵が金粉のふりして舞う空気を
吸い込まないようにと肺まで
水に浸して
あなたのいないあなたを
あなたの欠けらをもつ人が囲んでいる
縋る熱で皮膚が溶け海水が溢れでるとき
鼓膜の内外で漣がきこえる
皺のうえの真珠は光沢を増す
八十年、あなたの
体内に広がった海が
どこかへ蒸発していくのを感じる
誰に呼び止められることなく、
漂う 生になる
わたしの海も広大な海へと育てよう
そしていつの日か海に殺され
あなたと共に漂い
あの人の海の一滴となろう。