上野の東京都美術館で開かれているデ・キリコ展に行ってきました。

開催期間は8月２９日までなので、まだの方はご覧ください。

なお、９月からは神戸に移動して開催されるとのことなので、関西の方はそちらでどうぞ。

デ・キリコの絵は子供のころから気になっていました。

あの木製人形のようなヘクトールとアンドロマケの絵を子供心に不思議に思っていました。

十数年前にやっと「イーリアス」を読んでヘクトールとアンドロマケの別離の場面で、あの絵はここだったのかとショックを受けました。

ただ、デ・キリコの絵は一つの様式だけではなく、いくつかのシリーズになっていて、私が好きなのは、陽光に照らされた貼り絵のような単調な色使いの、単純でいささか離人症のような感じのするトリノの街のシリーズです。

こうしたシリーズがあるので、デ・キリコは当然トリノの街に住んでいたことがあったのだろう勝手に思っていたのですが、今回の展覧会の説明で彼はトリノに住んだことはなく、短期間滞在したことがあるだけのことだと分かりました。

わたしの友人に、若い頃トリノに留学したことのある学者がいるのですが、彼とは一度もデ・キリコとトリノのことについて話したことがありませんでした。

トリノに住んでいた(と私が誤って思っていた)デ・キリコについて彼と話せば、とうとうとデ・キリコ論が展開されるのではないかと警戒していたのかもしれません。

今回デ・キリコとトリノの街の本当の関係が分かったので、その友人の学者に下の写メを添えてそのことについて報告をしました。

すると彼から返事が来たのですが、彼はデ・キリコがトリノに関係していることを知らなかったと言い、「・・・一番上の絵の右側、白いところは建物というより、建物から街路、したがって歩道部分に張り出しているポルティコ、柱廊です。これが主要街路に延々と続いていおり、雨の日でも濡れずに散歩できるというのがトリノ人の自慢の種です。・・・」などとコメントをくれました。

観る前は、展覧会の後は上野の居酒屋で一杯飲んで帰ろうと思っていたのですが、人通りの多い街中に出るのが面倒くさくなってしまい、美術館付属のレストランで、生ビール、瓶ビールと飲み継いで帰ってきました。

デ・キリコ展 トリノの街

デ・キリコ展　トリノの街