楽典詩人

楽典詩人

楽典に触発された詩、フィットネス、空手・武道、物見遊山、飲食

熊本県の滝の周辺で水遊びをした人たち多数が嘔吐、下痢、発熱などの健康異常が起きたと先日テレビで報道されました。

その放送のなかで、百人以上が「病院を受診した」と言っていました。

 

私はこの、「病院を受診する」という言い回しに以前から違和感を持っています。

10年以上前に勤務していた職場には、二人の看護師がいて、二人とも大きな病院の看護師長をしたことのある、大ベテランの看護師でした。

その二人は、出身地が愛知県と栃木県で、勤務していた病院は、東海地方と関東地方でした。

つまり、身についている方言や勤務地域は異なるのに、二人とも「病院を受診する」というのです。

 

受診するという言葉は、医師等資格や能力のある医療従事者による診察を受けることだろうと思います。つまり、「病院を受診する」という表現は、より正確に言えば、病院において医師等による診察を受けることを意味するのだと思います。

 

以前いた職場で、二人の看護師に対して「病院で受診する」という表現の方が正しくはないかときくと、ふたりともそんな言い方はないとにべもない返事でした。

 

私は、病院において医師による診察を受けることを「病院を受診する」というのなら、自宅において医師による診察を受けることは「自宅を受診する」といわなければならなくなると思うのです。やはり「病院で受診し、自宅で受診する」のではないでしょうか。もちろん、病院というのが、単なる建物や施設だけではなく病院という医療システム全体をさすのだという反論はあると思いますが。

 

二人の看護師と話したとき、類例として考えたのが「大学を受験する」という言い回しでした。

これは病院を受診するという表現の「病院という場所、施設(物、機関)」とは異なり、「大学という教育機構、教育システム」に学生として加入を許されることであり、場所としての大学とは異なるということにすぐに気づきました。つまり、大学において受験するということを意味しないのだと考えました。自分の具体例でいえば、私は専修大学を受験したことはないのですが、専修大学で受験したことはあります。種を明かせば、就職試験の第一次の記述試験の会場が専修大学の教室だったということです。

 

専修大学を受験するということをより正確に表現するなら、その試験会場の場所にかかわらず、専修大学が専修大学に入学を許可する学生を選抜するために行う試験を受けるということなのでしょう。

 

そろそろ結論としたいのですが、「病院を受診する」ではなく「病院で受診する」が正しい表現ではないかと思いますが、すでに新聞、放送等社会的には前者の表現が定着しているようなので、言語学者でもなく、国語の専門家でもないので断定できません。専門家の意見も聞いてみたいと思います。